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第6話 幼女、人助けす

 昨晩は酷い目にあった。しっかり寝たと言うのに、あまり寝た気がしない。体の内側にぐつぐつと煮え滾るものを感じる。

 いかん……いかんぞ。体を動かして発散しなければ。

 動きやすい膝丈のズボンとシャツを着込み、背中に愛剣を背負う。

 部屋を出て階下へ降りると、女将殿が他の客人と話をしていた。



「あ、レビアンちゃん、おはよう。お出掛け?」

「おはよう、女将殿。少々鍛錬にな。どうやら俺は、まだまだ未熟者のようだ」

「そう……あ、そうだ。今、外には行かない方がいいらしいわよ」

「ふむ?」



 はて。この辺には危険な魔物はいないはずだが。

 首を傾げると、客の婦人が口に手を添えてひそひそと話しかけてきた。



「なんでも今朝方、森の奥で死体がたくさん見つかったみたよ。見るも無惨な死に方だって聞いたわ。今、町の憲兵隊が調べてるって……お嬢ちゃんも、気をつけてね」



 …………。



「うむ、気をつけるのだっ」



 女将殿と婦人に手を振り、宿を出る。

 しまった、死体の処理のことを考えていなかった。いつも通り斬り捨てただけなのだが……仕方ない。しばし大人しくしていよう。

 となると、どこへ向かうべきか。体を動かしたいところなのだが、町中で大胆なことはできぬからなぁ。


 オコロの町並みを横目に、大通り沿いを歩く。

 相変わらず、活気のある町だ。魔物もいないから、これだけ平和なのだろう。平和ボケはまずいが、活気があることは良いことだな。



「……む?」



 あのご老人、杖をつきながら大量の荷物を抱えておるな。周りは見て見ぬふり、と……やれやれ。最近の若いもんは。

 ご老人に近づき、担いでいた荷物に触れて少し持ち上げる。



「御老公、手伝いましょう」

「おぉ? 悪いねぇ、お嬢ちゃん。助かるよ」

「お気になさらず。あなたは先の大戦を生き延びた英雄。無下にすることはできません」



 荷物を担ぎ、ご老人に手を差し伸べる。

 ご老人は俺の手を取り、にこりと微笑んだ。



「お嬢ちゃん、50年前の大戦のことを知っているんだね」

「参加していましたから。俺も見かけ程、若くはありません」

「おや、男性かい。これは、とんだご無礼を」



 ご老人と共にベンチに座ると、今なお活気ある町に目を向ける。



「儂も当時、尖兵として参加しておったよ」

「50年前の人魔大戦は、若い男は全て戦争に駆り出されましたからな」



 50年前。俺がまだ15の時に起こった、魔物と魔族を相手にした人魔大戦。数年にも及ぶ大戦は、多くのものを失い、多くの街が焼かれた。

 地獄に次ぐ地獄。血と消炎に塗れた大地と町が、こんなにも復興し栄えるとは、当時は思ってもみなかった。



「しかし、尖兵とはご謙遜を。見たところ、相当の手練のご様子」

「なぁに、遊び程度に剣をちょこっとな」



 遊び程度、か。それにしては、良い身のこなしだ。今は年老いてしまっているが、恐らく、剣豪の類いだろう。

 その時。少女が蹴った球が、俺たちの方へ転がってきた。

 球を取り、少女へと手渡す。が、俺とご老人を交互に見て恥ずかしくなったのか、無言で頭を下げて行ってしまった。



「やれやれ。最近の者は、年寄りへの尊敬が足りませんな」

「ほっほっほ。良いではないか。我々の苦労の末、この未来を勝ち取ったのだから」

「……違いありません」



 ご老人の言う通りだ。今、平和であればいい。あの様な大戦は、二度と起こしてはならん。

 再びご老人と歩く。と、遠くの方にお婆さんが心配そうな顔で辺りを見回していた。

 視線がこっちを向くと、安堵した顔で微笑んだ。なるほど、この方の婦人か。



「おぉーい、婆さんやーい」

「お帰りなさい、お爺さん。遅かったから心配したのですよ」

「すまんすまん。この方と話をしていてのぅ。荷物を運ぶのを手伝ってくれたんじゃ」

「そうでしたか。ありがとうね、お嬢ちゃん」



 お婆さんが、嬉しそうに俺に頭を下げてきた。



「いえ、お気になさらず。当然のことをしたまでです」

「まあ、なんと出来た子なのでしょう。どうです? お茶でもいかが?」

「お誘い頂きありがとうございます。ですが、お気持ちだけ受け取っておきましょう」



 荷物を家の中に置き、2人に頭を下げその場を去ろうとすると、ご老人に「もし」と声を掛けられた。



「そういえば、まだ名前を聞いていなかったのぅ。儂はレオルドと申す。そなたは?」

「レビアンと申します。それでは、レオルド殿。失礼します」



 再度頭を下げ、2人と別れる。

 レオルド殿、か。名のある剣豪であれば聞いたことあると思うが、知らんな……もしや偽名か?

 なかなか、隙のない御仁であったな。

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