表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
剣聖、奇病『TS獣人化』で感情がダダ漏れになった件  作者: 赤金武蔵


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

19/30

第19話 幼女、甘えさせる

   ◆◆◆



「ぜひゅー……ぜひゅー……」



 暗い、暗い洞窟の奥底。ウゼーは膝をつき、乱れる精神と呼吸を落ち着かせていた。

 全身から吹き出る汗が地面に水溜まりを作っても、まだ呼吸が整わない。死を眼前にして全身が震え、胃がひっくり返りそうな感覚を覚えていた。


 まだ汗が引かない中、洞窟のさらに奥から、人の気配と足音が聞こえてくる。

 ズチャリ……。ウゼーの目の前で立ち止まったローブ姿の人影は、彼を見下ろして鈴の音を鳴らすような声を発した。



「あらまあ、結局バレちゃったんですね。あれだけ自分は大丈夫と啖呵を切っておきながら……情けないったらありゃしない♪」

「あ、あなたは、あの化け物たちを間近で見ていないからそんなことが言えるのでェす……!」



 人影に向かって必死に食い下がるが、自分でも負け惜しみだとわかっている。

 彼女にも伝わっているらしく、けたけたと軽快な笑い声が洞窟に響いた。



「まあまあ、そんなに噛みつかないでくださいよ。例のムカデは失いましたが、それ以上の収穫はちゃんとありました。上出来です。今は存分にお休みなさいな」



 女は鼻歌を口ずさみながら、洞窟の奥に戻っていく。

 と、彼女の近くにあった緑色の球体が、僅かに胎動して光った。

 光りの中に浮かぶ異形の影が動き、今にも球体を破ろうとしている。



「おー、よしよし。かわい子ちゃんですねぇ〜。でも、まだまだ外には出ちゃ行けませんよ〜」



 そんな球体に抱きつき、愛でるように撫でる女。

 それに呼応するように、隣の球体が……また隣の球体も、同じく光りだす。

 洞窟の左右に無数に並んだ球体が発光し、中に浮き出る異形の影が動く。

 壮大で、美しく、気持ち悪い。そんな光景が洞窟内に広がっていた。



「もう少し。もう少しですよ。まだまだいーっぱい、力を蓄えないと……ね♡」



   ◆◆◆



 ひとまず俺とセリカは、兵士たちを連れてオコロの町の憲兵隊舎へと戻ってきた。裏切り者が奴だけとは限らないし、尋問して情報を聞き出さないとならないからな。

 今は兵士たちを尋問官へ引渡し、ウゼー殿の部屋と班長室は別の兵士に調べさせている。


 セリカは意気消沈しているのか、隊舎の応接室を立ち入り禁止にして、ソファに体を投げ出していた。

 総隊長にあるまじき姿だ。誰にも見られたくはないのだろう。



「まさか部下に裏切り者がいるとは……なんたる失態。不覚も不覚だ……」

「まあまあ。組織なんて大きくなればなるほど、一枚岩でいるのは難しいものだ。セリカが気に病むことではない」



 セリカの対面に座り、熱いお茶をすすってほっと息を吐く。

 セリカは気にしいだが、膿を出せたと思えば悪くないだろう。むしろ、アレがこれからもずっと憲兵隊にいたと考えた方が、害悪だ。

 悪いことばかりではなく、良いことにも目を向けねばな。



「お師匠様はそう言ってくれますが、やはり責任は感じますよ」

「生真面目だなぁ、セリカは。それが良いところでもあるが、少しは肩の力を抜け。いざという時に倒れたら元も子もないぞ」

「……肩の力を……」



 む? どうしたのだ、じっと俺の方を見て……顔に何か付いているのか?

 頬を触り、首を傾げる。

 セリカは何かを言おうと口を開き、閉じ、また開く。



「何か言いにくいことでもあるのか?」

「い、いえ。そういうわけでは……」

「安心せい、何を言おうと誰にも言わん。俺はお前の師だぞ。弟子の言葉を受け入れる器量くらいある」

「そっ……それでは、お言葉に甘えまして」



 起き上がったセリカは、周囲に人がいないのを確認し、軽く咳払いをして口を開いた。



「えっと、その……だだだっ、抱き締めてもらっても、いいですか……!?」

「…………ん?」



 え、何? 抱き締めて……ん?

 言っている意味がわからず無言になると、彼女は指をもじもじさせて俯いた。



「その……肩の力を抜くために、甘えたいと言いますか……わ、私がこんなこと言えるの、お師匠様しかいないと言いますか……」



 なるほど、そういうことか。



「良いぞ。好きなだけ甘えさせてやろう」

「いいのですか……!?」

「普段頑張ってる、愛弟子への褒美だ。まあ、この程度で褒美になるかは疑問だがな」



 ソファから立ち上がり、セリカに近づく。

 座っているセリカの横に膝をつくと、彼女の頭をそっと抱き寄せた。



「よしよし。いつも頑張ってて偉いぞ、セリカ。お前の頑張りは、ちゃんと俺が見ているからな」

「……ぅ……ぅぅぅっ」



 俺の体に抱きつき、胸に顔を埋めるセリカ。埋めるほど胸なんてないが。

 よほど辛いのか、肩を震わせて泣きだしてしまった。大変なのだろうなぁ、総隊長というのも。

 今だけは、こうして甘えさせてやろう。師として、弟子の精神面のケアも重要だからな。



「オギャ、ばぶ……ママぁ」

「誰がママだ」

続きが気になる方、【評価】と【ブクマ】と【いいね】をどうかお願いします!


下部の星マークで評価出来ますので!


☆☆☆☆☆→★★★★★


こうして頂くと泣いて喜びます!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ