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第3話の受難に見返りあるさ

みかえであさ

 私、三楓有沙。

 さっき道で倒れていた変態さんを助けたらなんか光の神様で、しかも私のことが気に入っちゃったみたい。

 いったい私これからどうなっちゃうの~!?



 というわけで光の神マスト様を現在私の住んでいるアパートの部屋に上げました。

 相手が神様とはいえ、よく考えなくてもこれって一人暮らしの若い女の子が大の男の人を家に連れ込んでる構図!?

 私これからどうなっちゃうの~!?(2回目)


 マスト様にお茶でも出そうと思ったけどこの家にお茶なんてなかった。これが本当のお茶目さん。

 代わりといっては難だけど水道水を出そう。(本当に難)


「ま、マスト様。お冷でよかったですか?」


「そう固苦しくするな。今の私は力も失っているんだ。敬語なんていらないし呼び捨てで構わない」


 でもいきなりタメ口もなんか違うよね。


「うん。マスト……さん」


 結局さん付けに。距離感あるし仕方ないよね。

 多分ずっと敬語だと思う。


「アサ。水道水は煮沸消毒してくれないか?」


「えええ? それくらい自分でやってよ。そのまま出すね」


 おっとと。つい敬語が崩れちゃった。

 初志貫徹は苦手なのです。

 距離感なんて第1話でなくなったようなもんだし多分大丈夫。


「はははは。それでいい。そうそう、言うまでもないが神の存在は世間には秘密だ」


 えっ、週刊○春にリークしたかったのに。

 ……ウソです☆


「うん。誰にも言いませんから」


 さて、マストさんのところにお水のコップを運んでいたそのとき!

 足が電気コードに引っかかってスッテンバシャリ!

 盛大にマストさんにお水がかかってしまいました。


「いったー。だ、大丈夫ですか!」


 慌てて顔を上げると、あららご自慢の白い衣装が水びたし。


「……大丈夫だ。人間はこう言うのだろう。水もしたたるいい男と」


「でも」


「気にするな。このまま飲む」


「ふぇっ?」


 そういうとマストさんの服がどんどん乾いていったんだけど……。えっなにこれ。肌から水飲んでるの? なんか普通に気持ち悪い……。


 私が割とあれな表情でその様子を眺めていると、マストさんはいきなり話を切り出してきたのです。


「さっそくで悪いが君に頼みがある」


「あっ。指ならもうダメですよ」


 まあちょっとならいいけど。


「いいや真面目な話だ。アサ、君にしか頼めない」


 真面目に頼んでもダメだってば。

 ……ちょっとならいいけど。


「単刀直入に言おう。世界を救うから手伝ってくれ」


「そこまで言うならちょっとだけですよ……ってはいぃ!?」


 世界を救うって何!?


「世界を救うって何!?」


 世界を救うって何!?


「いきなり話しても混乱するだけか。では長くなるが聞いてくれ」


 マストさんが真剣なまなざしに。

 これはふざけてる場合じゃなさそう。


「かつてこの世界に純粋な光と闇しか存在しなかった頃……」


 あっこれ本当に長くなるやつだ。

 マストさんのお話が学校の授業のような子守歌効果を発揮してzzz……



「というわけだ。分かったかい?」


「むにゃむにゃ……もう食べられないよ……きょしょくしょーなの……」


「話をまったく聞いていなかったようだな」


「はっ! Who is here? Where is me? えっ!? もう夕方の5時!? ママったらなんで起こしてくれなかったの! 遅刻決定だよー!!」


「アサ。いつまで寝ぼけているんだ」


「あっ、へんた……マストさん! そっか、私話の途中で寝ちゃったんだ」


 ふざけてる場合じゃなかったのに……。

 初志貫徹は苦手なのです。


「もう一度説明したら聞くか?」


 あっ、眉がヒクヒクしてる。

 顔はニコニコしてるけど。

 多分すっごい怒ってるやつだ。


「寝ちゃってすみませんでした。できれば要点だけ話してもらえると助かります」


 マストさんはため息を一つついた。


「……では手短に言おう。闇の神が世界を闇につつもうとしている。私が力を失った今、止められるのは心に光を宿したアサだけだ。世界を救ってくれ」


 なんだ3行いらないじゃん。

 この5時間はなんだったの。


 っていうか結構壮大な話だったんだ。

 世界の命運が私にかかってるってこと……?


「でも……。私は具体的に何をすればいいんですか?」


「闇の神は人間の心の闇につけこみ眷属を作り出す。君は内なる光の力で闇の眷属を浄化してもらいたい」


「それって危ないんですか? 怪我とか……」


「ああ。闇の眷属は強敵だ。油断すれば命を落としかねない」


 え?


「し、死ぬってことですか!? 私が!?」


「それは最悪の場合の話だ。私の今の力でも3回程度なら生き返らせられる。安心しろ」


 なーんだそれなら安心……ってなるかあああ!!


「嫌です! 死にたくないもん!! 他を当たってくださいよ!!」


 思わず激昂しかける私の手をマストさんがギュッと握った。


「代わりなんていない。君以上の光を宿す者などいないんだ」


 またそうやってイケメンムーブするー。

 でもちょっと心揺れる私がいる。

 初志貫徹、初志貫徹……。


「な、なんで私だけって言い切れるんですか……」


「私は闇の神との戦いの末に心身共にダメージを受けた。そして最後の力を振り絞って最も光あふれる人間を探した。私が転移先で最初に出会った美しい人間。アサ、君のことだ。この出会いは宿命。私には君だけだ」


 君だけ……。決心が揺らぐ揺らぐ。


「そ、それで、その戦いっていつ終わるんですか?」


「私の力が完全に戻るまで。……1000年ほど」


 私の寿命が先に尽きるじゃん!!


「やっぱりムリです!」


「しかし君が戦わなかったら世界は滅びる。つまり君も死ぬことになる」


 えっ!? 私どっちみち死ぬの!?


「だったら私はみんなと一緒に死にます!」


「君は対価なしに他人に手を差し伸べられる人間ではないか。私を助けてくれたように」


 いやあの時煩悩バリバリだったよ。

 っていうか第1話でキャラもまだ定まってない時の話されても困る。


「その悪い神と戦ってることを世間に公表できるんですか!? 世界中の人たちから感謝されるんですか!? なんのメリットもなくただ世界のために命を懸け続けられるほど私はできた人間じゃないですから!!」


「そうか。君ほど光あふれる人間でも見返りを求めるものか……」


 当たり前じゃない?

 こういう認識の人が神様やってるからブラック企業がはびこってるんじゃないかな。


「せめて……10億円です!」


 10億資産! SR級秘書!

 スーパーカー! 星5オフィスビル!


 ……いや違う違う。


「10億円もらえたら考えます!」


「悪いが通貨を偽造するのは犯罪だ。私が正規の手段で大金を用意する手段もない」


 まあなんてゆーずーの利かない神様。

 犯罪とか言い出したら第1話のあれはどうなるんですか。

 キャラが定まってないのは言い訳になりませんから。


「だったら何ができるんですか!」


「米を……10俵でどうだ? 今の私に出せる限界だ」


「私パン派です!!」


 交渉決裂。

 とっとと追い出しちゃおう。

 神様に塩って効くかな?


「……解った。私も覚悟を決めよう」


 ポツリとつぶやく神様。


「不本意だが報酬は私の肉体(からだ)で支払おう。どうだ?」


「もう出てってーーー!!!」


 私は神様に塩を袋ごと投げつけた。

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