ギリギリの朝で始まる第1話!?
お昼前なのでギリギリの朝です。
私の名前は三楓有沙。今日から高校2年生。
始業式も午前で終わって今は1人で家に帰るところ。
……別にぼっちとかじゃないよ? 今日は偶然、偶然ね。
帰る途中、狭い道の真ん中にうつ伏せになっている人を見かけた。
ま、まあ春だからね、そんな人もいるよね……。
ちょっと遠回りだけど向こうの道から帰りましょうか。はい。
いやいやいやいや! 助けないと!
さすがの私でも第1話から行き倒れを見捨てるほど性格終わってないからね!
Believe for me 読者様。
私は倒れている男の人に駆け寄って肩を揺すった。
「あのー。だ、大丈夫ですか?」
お金持ちさんだったらいいなあ……。
お礼に1億円をポンってくれて、いやいや冗談です冗談。
警察から感謝状をもらえれば私はそれで満足なのです。
「う……。ここは……」
男の人は肩を震わせながら顔を上げてこちらを向いた。
黒髪に緑色の瞳、顔立ちはシュッとしたイケメンタイプ、そしてスーツ姿。(お金持ちではなさそう)
ええっと、イケメンなんだけど……なんていうんだろう。めちゃくちゃアンバランス。
男の人はか細い声で言葉を発する。
「よ、良かった。人間か」
人間かって何? ブタだと思ったの?(言ってない)
いやまさかそんな。自慢じゃないけど私BMⅠ18だよ?(だから言ってないって)
私はいろいろとこらえて声掛けを続ける。
「大丈夫ですか?」
「た……助けてくれないか」
「わかりました! 今救急車呼びます!」
私はカバンからスマホを取り出そうとしてそもそもスマホをまだ持ってないことに気づいた。
仕送りは全て生活費に消えていく日々です……。バイトしよ。
「人間の医者では無理だ。君の……」
この瞬間、彼の口から出た言葉は信じられないものだった。
「君の汗を舐めさせてくれないか?」
「汗ね。あーはいはい……ってええええええ!!??!?!???!!?!?! 汗ェ!?」
どういうことなの(汗)
・変態
・不審者
・変質者
3つの言葉がぐーるぐる。
私の頭でぐーるぐる。
ちゅうちゅうかまぼこ。
「き、君が嫌なら汗でなくともいい。唾液でも涙でも腸液でもなんでもいいんだ」
「ま、まあ腸液くらいなら……ってなるかああああああ!」
なんなのもう!
作者の性癖に振り回されっぱなしだよ~。
「頼む……」
彼は力を振り絞って身体を起こすといきなり私の腕を掴んだ。
そして綺麗な瞳でまっすぐに私を見つめる。
「君にしか頼めないことなんだ」
「わわわ……私なんかでよければぜひ!」
ごめんなさい私チョロインです。
「感謝する」
彼のしなやかな手が私の指先を彼の口元へ優しく導く。
そしてゆっくりと口を開く。歯並びもお綺麗。
「はむ……ちゅぷぷ……」
「おおおお、お手柔らかに……」
と言いかけたけど多分今の彼の耳には届かない。
やばい私本当にこの人に指を舐められちゃってるんだ……。
いつの間にかそれは人差し指の付け根まで進出する。
指先は彼の口腔の奥へと吸い込まれ、舌のちょっと固みのあるところが熱く熱く絡みつく。
今私は何かいけない扉を開いてるんじゃ。
「ひ、ひゃんっ」
思わず声を漏らしてしまった。
彼は人差し指から口を離すと、
「すごい手汗だな」
と無造作に言い放ち、
私にお構いなしに手のひらを広げさせる。
そして手の1本1本の皺に沿って舌先で優しく私の手汗を舐めあげていく。
手のひらがくすぐったいのと恥ずかしいのと母性なのかなんなのかよく分からない新しい感覚でその右手と共に私の何もかもがその唾液で溶かされていくようなこれを至福と言っていいのかは全然分からないけどもし天国というものがあるならそれはきっと今感じてるようなフワフワとした世界につつまれて(文字数)
「ぎゃああああああ! 変態カップルぅぅぅぅ!」
犬の散歩で通りかかったおばさんの声で我に返った。
なにしてんの私!
彼は私の手から唇を離す。
「失礼。つい夢中になってしまった」
待って冷静に考えたらなんなのこの状況。
いや冷静に考えなくてもおかしいよ! おかしいおかしい!
なんで私初対面の男の人にお手手ベロベロさせてんの!?
「おまわりさーん! おまわりさーん! 巡回中のおまわりさーん!!」
おばさんが大声で避けぶ。
待ってこれって私も補導!?
前科!? 退学!? 晒し者!?
借金漬けになって[自主規制]で骨をうずめるの!?
そんなのやだやだどうしよう!
「まあ慌てるな。おかげで少し力も回復した」
彼はそう言いながら普通に立ち上がった。
えっ? まさか仮病?
「次は私が君を助ける番だな」
私は彼に抱きかかえられる。
指舐めのお次はお姫様抱っこ!?
ああもう、こうなったらいけるとこまでいっちゃえー!!
はい、気が付いたら私は彼に抱かれたままお空を飛んでました。
なにこれまるで薬物中毒者の見てる世界。ダメ、絶対。
目の前には彼の顔。額には緑色の丸い宝石。
いつの間にかスーツじゃなくて白い布を纏ってた。
「気が付いたか。安心しろ。先ほどのご婦人の記憶は消しておいた」
さらっと人智を超越なさりますがこの人。
私は彼に疑問をぶつけた。
「あ、あなたいったい何者ですか?」
「君には教えておこう。私はそう……神だ」
「かかかかかかかかか!?」
さも当然な感じで答えるから思わず太鼓のようなリアクションをとっちゃった。
神様!? こんな変態さんが!?
「光の神マスト。それが私の名」
「わ、私はあさ……三楓有沙って言います」
私も頼まれてもないのに自己紹介。
なんていうか、名乗らずにはいられない雰囲気でした。
「アサ……いい名だ」
えへへ。褒められた。
「アサ。頼みがある。聞いてくれないか?」
神様は再び真剣な表情を取る。
「わっ、私なんかでよければ何でもおっしゃってください!」
「ありがとう。もう一度君の手を舐めさせてもらえないだろうか」
「もういいって!!!!!!!!!!!」
今日は人生で1番叫んだ日になった。
有沙で始まるギリギリの第1話でした。