粗相の悪い男
とある日の空港へ向かう連絡バス車内のこと
とても粗相の悪い男がいて
マスクもしていなければ
靴を脱いで前の座席の背もたれに足を上げ、35缶のチューハイらしい物を飲んでいた
30半ばくらいだろうか
だから彼の前の席には人がいなかったのだろう
偶然知らずに乗った私は通路を挟んで隣の席に座ってしまった
窓側なのが幸いだろうか
男は運転手が 曲がります だの
揺れますのでご注意ください だの言った度に
チッ と舌打ちをする
たまに大きなため息をつく
私にしか聞こえていないのかもしれないが
何をそんなに苛立っているのか
これから空港に友達を迎えに行くというのに
せっかくの楽しみが台無しだ
たまにするビニール袋の音
車内にお酒の匂いが充満する
運転手さんも前のバス停で注意してた
バスの背もたれに挟まっているパンフレットの中にも 車内は飲食禁止と書かれているものがあった
バスの車内は何分で換気されるんだったか
お酒を飲まない私は鼻が利いてしまう
お酒の匂いも嫌だ
こちらに伸びた足の先の靴下
あれは臭くないんだろうな?
と思いながらできる限り窓の近くにいる
関わらないのがいいだろう
と思っていたのに
お姉ちゃん可愛いね
なんて
は??(キモ)
可愛いね〜
酔っ払った顔で横から眺めて声をかけてくる
どうもありがとうございます
と形式めいて言ってみると
チッ と聞こえた
何回目だろうか
数えた限りでは私がバスに乗ってから1時間の間に20回は聞いただろうか
その舌打ちで私の堪忍袋の緒が切れた
舌打ち辞めて貰えます?
は?
うるさいんで
そういった時に周りがよく言った と言う雰囲気になったように感じられた
どこからか、くすっ と笑い声も聞こえた気がした
少し顔を赤らめたような粗相の悪い男は
とりあえずか
すみませんね 癖で と言った
バスは何事も無いように走り続ける
この乗客の中でも1番時間に追われているのは運転手だろう
それでなくても私が乗った時に10分の遅れが発生していた
そこまで正確でなくてもいいのに といつも思うが
この会社が出発時間と到着時間をも約束しているのだから仕方ない
安全運転をしてくれればそれでいい
命が乗っていることを 忘れないでくれれば
急ぐよりも重要なのはそこだろう