85話 修行お疲れ様会1
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https://kakuyomu.jp/works/16817330657707263822
新たに獲得した攻撃系スキル6つをひと通り使用できるようにするのに、あれからさらに数日を要した。
自ら身につけたスキルではなく、スキルポイントを使ってシステム的に獲得したスキルなので、体の動かし方などで戸惑いがあったからだろう。
ただ、奥義スキルはまだ体に負荷がかかるようで使いこなせるようになるには時間がかかりそうだ。
エリーナの修行を開始してから10日ぐらいが経過していた。エリーナのサバイバル力も向上し、今では自分で料理を作れるようになった。もちろん味付けは塩のみとなることが多いけどね。
「エリーナ。ひと通り強くなれただろうから、いったん辺境の街フロンダに戻ろうか」
「了解した。ただ、修行のまとめとして魔物ランクAの魔物と戦ってみたいのだが・・・」
忘れていた。
エリーナは戦闘狂だった。
魔物ランクAを倒せれば冒険者ランクS相当に値する。当初のエリーナは冒険者ランクA相当と言われていたから、成長の印としてはいいのかもしれない。ただ、レベルがまだ低いので心配ではあるけど・・・
「エリーナのレベルはまだ低いからまた今度にしない?レベル上げてから挑もうよ」
「師匠がそういうなら、そうしよう」
エリーナは渋々といった感じだったが、最終的には納得して小屋の荷物を片付け、帰り支度をした。
「準備できたぞ」
「忘れ物はないかい?」
エリーナはここに来たときと同様にリュックを背負っていた。修行開始当初は体の2倍ぐらい大きなリュックだったが、それよりは多少なりとも小さくなった・・・のかな?
極力気にしないようにして、私たちは辺境の街フロンダに《テレポート》した。
時刻は夕方。エリーナの修行中、私は宿泊のためにフロンダにちょくちょく帰っていたので久しぶり感は全く無いのだが、エリーナは約10日ぶりだろうか。
エリーナの元上司で『冒険者なりすまし事件』の調査にきていたロイさんは、すでに調査を終えて王都へと帰還していた。エリーナのことを私に託したのだろうが、いつかは王都へ送り届けてあげよう。
「じゃあ宿を取って身支度整えたら『修行お疲れ様会』をしようか。まずは宿でお風呂に入って疲れを癒やしてきなよ」
「久しぶりに飯屋で食事が出来ると言うわけだな。了解した」
エリーナは自炊しなくてすむということで、嬉しそうな表情をしていた。そんなエリーナを見送り、私もいつもの宿屋へ戻り、身支度を整えた。辺境の森での戦闘で体についた汗や血生臭ささを取り除くために大浴場で体を洗った。
お風呂は体が癒やされるな。
準備を整え、宿の外に出るとすでにエリーナが待っていた。どうやら私は長風呂だったらしい。元日本人だから仕方ないかな。いや、逆にエリーナが短すぎる可能性もある。うん、きっとそうだ。
「ごめん、待たせちゃったかな?」
「今来たところだ。早く行こう」
なんか恋人のような会話になってしまったが、断じて違う。私たちは師匠と弟子の関係なのだ。
場所を移動して着いたのは小洒落たお食事処だった。ここのお店に決めた理由は、以前お店の前を通ったとき、美味しそうな匂いがしていたからだ。1人では入る勇気はないけれど、誰かと一緒だったら入ってみたいなと思っていたお店だ。もちろんお値段は私でも手が届くレベルだ。
さっそく中に入ると、四角テーブルに椅子が4つセットになった客席が12個ほどあり、半分以上の席がすでに埋まっていた。
「いらっしゃいませ~、2名様ですか〜?」
このお店はカウンター席もあるようだが、今回はがっつり食事をするので、テーブル席にしよう。
「そうです。テーブル席いいですか?」
「はーい、お好きな席にどうぞ〜」
入口付近は人の出入りで落ち着かないだろうから、奥にしようかな。私たちは奥にあるテーブル席に座ることにした。
席につくと、メニュー表を見て、お互い飲みたいドリンクと食べたい料理をそれぞれ頼んだ。
エリーナは私よりも年上の19歳なのでお酒のエールを頼んでいた。私はまだ13歳なので当然ジュースだ。見た目もまだまだ子供っぽいしね。
注文したものを店員が運んできた。飲み物と料理がある程度揃ったので乾杯するとしよう。
「エリーナ、修行お疲れ様。今日は私のおごりだから好きなだけ飲み食いしていいからね」
「師匠は冒険者ランクDだから、無理しなくてもいいぞ」
エリーナが冗談めかしてニヤリとしていたが、実際、冒険者ランクDと言えば、ようやく稼げるようになってきた頃合いだ。装備品の買い替えで何かとお金がかかるランク帯だ。
ただ私の場合は魔物の素材納品で、他の人よりもかなりの額を稼いでいる(と思われる)ので、普通の冒険者ランクDよりは裕福だと思っている。もちろん貴族護衛をこなしていたエリーナよりはお金持っていないんだろうけどね。
「背伸びしやがって。見栄はるなよな」
「「ぷぷっ」」
私たちのやり取りを聞いていた近くのテーブル席の若者たちが小声で野次を飛ばしていた。男2人、女1人の3人組で、年は20歳前後だろうか。その場のノリで会話しそうな人たちだ。
「師匠・・・ちょっと行ってきていいか?」
「いやいや、気にしなくていいよ。それより乾杯しよう!それじゃあ乾杯!」
お店の中でトラブルを起こしたら他のお客さんにも迷惑がかかってしまう。エリーナを無理やりなだめて乾杯した。うん、お風呂上がりのジュースは美味しいね。
「おい、あれジュースじゃね?師匠とか呼ばれちゃってて、ウケる〜」
「「ぷぷっ」」
『ドン!!』
エリーナがグラスを勢いよくテーブルに叩きつけた。グラスにはヒビが入り、中の飲み物が隙間からちょろちょろと漏れ出していた。そしてテーブルはグラスの形に合わせてヘコんでしまったようだ。
それなりの広さがある店内だが、私たちのやりとりが聞こえていたのか、店内は静まりかえっていた。
人物紹介
【スグル】
主人公。早川傑35歳が異世界転生した。冒険者ランクD。
【エリーナ=ロンダルタント】
王都調査員の護衛騎士だったが、スグルに弟子入りを希望。冒険者ランクA相当の実力があるが、冒険者支援制度(師弟関係)を利用するために冒険者ランクFとして登録した。




