65話 調査員1
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飲み会から数日が過ぎ、私は辺境の街フロンダで依頼をこなしながら平和に過ごしていた。
『冒険者成りすまし事件』が異常なだけで、日常というものは、いたって平和なのである。
辺境の街フロンダにはじめて来たときから、ひと月以上の月日が流れた。今では馴染みのお店や顔見知りの人たちもそれなりに増えた。
日本にいた頃は情報化社会ということもあり、何かわからないことがあればネットで調べるのが当たり前で、人と話す機会などそうそうなかった。
それに比べて異世界はわからないことだらけの世界だ。調べようにも携帯もパソコンもない。かろうじて本があるが、それもすぐに限界がくる。
そんなとき私は知り合いに素直に尋ねることにした。もちろん、赤の他人には未だに声をかけづらいが、知り合いにはわりと話ができるようになった。
街の人たちはこちらが友好的に接していれば、同じように接してくれる。中には、ひねくれていたり、尖っていたりする人もちらほらいるけどね。
そんなわけで、今となってはここ辺境の街フロンダは私にとって過ごしやすい街となったのだ。
今日もいつもの日課である魔物の素材納品をこなし、私は冒険者ギルドを後にした。相変わらず大量の素材を納品したので、解体倉庫のおっちゃんが悲鳴を上げていたけど、仕事だから仕方がないよね。嬉しい悲鳴ってやつだね、きっと。
表通りの方へ向かっていると、前方から冒険者ギルドに向かって団体さんが歩いていた。真ん中に1台馬車があり、前方と後方にそれぞれ護衛の騎士が2人ずつ歩きながら付いてきていた。
見るからに高そうな馬車だ。辺境の街フロンダで見かけたことがない馬車だったから、最近到着したのだろう。
(これはもしかして・・・)
以前話に聞いていた調査員なのかもしれない。当時の話を思い出し、彼らに絡まれたらヤバいと思い、私はあまり見ないようにしながら不自然にならないように脇道へとそれていった。
「・・・風魔法《疾風》・・・」
ささやき声が聴こえたかと思ったら突然、私の真横に護衛の騎士が現れた。その騎士は腰にしまっていた剣を一瞬で抜き取り、上段から私に向かって振り下ろしてきた。
私は騎士の脇に前転して避けると同時に騎士の後ろを取ったが、目をつけられても嫌だったのであくまで滑ってころんだ風を装った。
「ここにある石につまずいてしまった、恥ずかしい」
辺りは一瞬の出来事に反応しきれず、静まり返っていた。大根役者とは言わないが、私の声だけが木霊してしまい、妙に恥ずかしい。
「「きゃああぁぁぁ!!」」
少し間を置いて我に返った周りの人たちが、騎士が持っている剣を見て悲鳴を上げた。それを皮切りに辺りは騒然となった。
警戒していたから避けれて良かったものの、こんな街中でいきなり襲ってくるとは思わなかった。危うく斬られていたところだ。
仮に、もし斬られていたらどうなっただろう。
無抵抗な一般人を殺してしまったとなれば、騎士業は廃業だろうな。後々私が『冒険者成りすまし事件』の重要参考人だとわかったときには、護衛を雇った調査員もろとも処罰されるんだろうな。
そんなことを考えながら騎士の顔を見上げてみると、一瞬驚いた顔をしたが、すぐに不敵な笑みを浮かべた。
「小僧、名前は?」
「・・・スグルです」
どうせすぐにバレるだろうから誤魔化さずにそう返事をした。辺りは悲鳴や話し声で騒がしくなっていたが、私達の周りだけは異質な空気をまとっていた。
「こらー!勝手な行動をしたらダメだといったじゃないか」
馬車から1人の男性が降りてきた。貴族風の服装を着ており、見た目は好青年といった感じだろうか。私の持っていた貴族のイメージとは違って、こっちは常識人のようだ。
「本当に申し訳ない!坊や、大丈夫だった?エリーナも謝って!」
「・・・ふん」
依頼主だからだろうか、上下関係があるからだろうか、エリーナは反発せずにつまらなそうな顔をして馬車の方に戻っていった。
後ろ姿を見るに、金属素材のプレートアーマーを着ているが、細身の体つきで髪は後ろでひとつ結びにしている。戦闘中でも邪魔にならないぐらいの長さだ。
そう、斬りかかってきた騎士は女性だったのだ。




