閑話 ドーラの日常1
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(やる気が起きないわい・・・)
このお店は中心部から離れた場所にあり、隣り合う区画の隙間辺りにある。
寂れた感じの佇まいで、店頭にはピッケルやスコップなどの小物商品が並べられている。
そう、ここはドーラのお店である。
過去に区画整理のトラブルがあってから、鍛冶仲間からもすっかり除け者にされてしまったが、鍛冶の仕事が辞められずにそのままここに居座っていた。
ある日のこと、店のドアが開いた。
いつも贔屓にしてくれている冒険者かと思いきや、どうやら新顔らしい。
まだ幼い男の子が1人で入ってきた。その少年は冒険者に成り立てなのか、今からなろうとしているのか、どちらだろうか。店の中をひと通り眺めたあと、カウンターに向かって歩いてきて、ドーラに話しかけてきた。
「すみません、ここの商品を作ったのはどなたですか?」
「知らん。坊主、こんな寂れた店になんのようじゃ」
「ちょっと街中をぶらぶらしていたら気になったもので、ふらっと入っちゃいました。ここは素材持ち込みで防具を作ってもらえますか?」
「忙しいから他を当たってくれ」
あどけない感じの少年、彼は何者だろうか。冷やかしの客かもしれないし、そうじゃないかもしれない。気にはなるが考えても仕方がないと思い、ドーラは興味なさげな顔をしていた。
「はじめまして、スグルといいます。店員さんのお名前はなんですか?」
「儂か?ドーラじゃ。」
「ここの商品、品質がすごくいいですよね。私は冒険者をしていまして、新しい防具を探しているのですが、何かありませんか?」
「ここに置いてる分しかないな。欲しけりゃ鍛冶屋通りに行きな」
どうやら冒険者のようだ。どうせ冒険者ランクFとかだろう。まだお金も持ってないだろうし、鍛冶屋通りにあるバケツの投げ売り商品とかで経験を積むべきだろうな。高い武器を買ってもそれに固執してしまったら、成長の幅が狭まってしまう。そう思い、ドーラは素っ気ない態度をとっていた。
「ここの商品が少ないのは、何か理由があるんですか?」
「儂は知らん。買う気がないなら出ていけ」
「防具といえば鉱石でしょうけど、動きやすさでは皮のほうがいいですかね。魔物の皮で防具を作ってもらえますか?」
「んなもん知らん。ほら、帰った帰った」
「例えば、ドラゴンの素材があったとして加工できる人はどれくらいいるのでしょうか」
(ドラゴンじゃと?)
久しく触れていない素材の名前を聞いて、ドーラはついつい浮足立ってしまった。相手はまだ少年だ。そんな素材を持ってこられるはずがあるわけない。素材に飢えていたが、表には出さないように気をつけてながら返事をした。
「・・・知らん」
「そうなんですね。いろいろお話ありがとうございました。そろそろ帰りますね」
「おぅ、帰った帰った」
ようやくお帰りのようだ。話した感じでは、だだの冷やかしではなく普通の客のようだ。もちろん冒険者ランクは低いだろうが。そう思いながら、ドーラは帰れ帰れと手を降った。
「あ、ちょっとお尋ねですけど、ロドリゴ・ドンティって知ってますか?」
「そいつは昔、勇者の武器を作った鍛冶師の名前じゃねぇか」
「そうなんですね、どのくらい前の人なんですか?」
「儂がガキの頃にはすでに有名だったから、かなり前じゃろうな」
懐かしい名前を聞いた。ドーラの世代の鍛冶師は皆、ロドリゴ・ドンティに憧れて鍛冶師になったといっても過言ではない。なんたって、勇者の装備品を作った鍛冶師だからだ。
今でこそ鍛冶師たちはそれなりに強い装備品を作れるようになったが、当時はまだそこまでの技術が発展していなかった。
そんな時代にロドリゴ・ドンティは常に最先端の技術を披露していた。
例えば、武器に属性を付与する技術。これは当時、衝撃的な出来事だった。今でこそ『火柱の剣』など属性付きの装備品が売られているが、当時はそんなものなんてなく、装備品といえば素材の良し悪しがすべてだ。
そこに属性付与という技術が生まれ、素材が悪くても属性が付与できれば、それなりに強力な装備品へと生まれ変わったのだ。この新しい技術に憧れて、数多くの鍛冶師が誕生したのは、今となっては懐かしい思い出だ。
そんなことを考えているうちに、スグルは店を出ていった。




