5.番人
ホラーかな。
背中に大きな荷物を持った青年が、三匹の犬を連れて道を進む。
「やめたほうがいいよ、お前さん。ここから出た者はいないんだ。」
大きな門の前、小屋から顔をのぞかせた門兵。
青年はそうですかと返し、未だ門を見上げて動かない。
犬も、興味ありげに門の向こうの匂いに鼻を動かしている。
「まあ、もう暗い。うちに泊まっていけ。」
門兵は青年を小屋へ招いた。
青年は、食事の肴にと旅の話をした。
私を必要とする土地を探している、と。
朝日が差す頃、青年は礼を言って小屋を立ち去った。そして、犬を連れて、門の中へと足を踏み入れた。
門兵は眠っている。
その夜、久しぶりに門をくぐり外へ出た者がいた。
大きな一匹の犬を連れた剣士だ。
“今度こそ私が必要なところだと思ったのに”
剣士はがっくり肩を落としている。
“残っているのは必要のないものばかり”
門を見上げ、ため息をつく。
“ここへ来るのが遅すぎた”
剣士に向かって、犬がやかましく吠えた。
六つの瞳は月の光よりもキラキラと輝いている。
“次はどこに行きましょうか”
剣士は黒衣をはためかせた。
月に照らされるは、今はなき国の外門と盗賊の住処。
盗賊はこれからもずっと、眠ったまま。