表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
憂鬱の民(短編集)  作者: 紀ノ貴 ユウア
5/28

4.懺悔(ざんげ)

 鬱です。お気をつけて。

 神よ、私は罪人です。死刑を待つ、大罪人です。

 罪を作りたくはなかったのですが…どうも背負ってしまったようです。

 処刑を待つ間だけ、私の罪をどうか聞いてくれませんか?



 私は、ごくごく普通の一般家庭に生まれました。両親ときょうだいがいて、家族仲も良好でした。

 何もかも平凡でした。ただ一つ、私を除いて。

 もちろん私も、昔は普通の子だったんですよ。遊ぶのが楽しくて、好きな子がいて、成りたいものも欲しい物もあって…。“これ”がいつからなんて、明確な時期は覚えていません。


 …ただ悲しい。ただただ苦しい。私の中がすっかり空っぽで、それでいて何か重いものに押しつぶされているようで辛い。

 この闇にいつまで浸っていれば(ゆる)されるのか、“その時”が待ち遠しくてたまらない。だけど、希望(のぞみ)を見つけるのも、落とし穴のようで手が伸ばせない。


 明るい時間が憎い。暗い時間が怖い。枯渇(こかつ)を抜け出そうと、かつて好きだったことを再び始めても満たされず、何かに夢中になろうと、心動かされるものに浸ろうとしても謎の焦燥感しょうそうかんばかりく。


 …疲れました。ええ、本当にどうでも良くって。他人の幸も不幸も、私には関係ない。


 安心できる誰かに、傍にいて欲しかったけど、そんな存在に会えなかったのは、全部…私が生まれた罰ですね。



 ああ、騒がしくなってきました。そろそろ時間のようです。それでは―――


 ―――さようなら、皆さん。次は間違っても生まれることがないように、どうか祈ってくださいな。

 罪人だから、(くるしみ)を受けるんでしょう?


 苦しいのはきっと、生まれた罪か生きている罪のせいなんだ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ