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憂鬱の民(短編集)  作者: 紀ノ貴 ユウア
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9.ツイン

 闇か狂気。

 とうとう伝えてしまった。あふれる想いを抑えきれなくて。

 本当は伝えず、消えようと思っていた。だけどあの子は気付いてしまった。俺を追いかけ、いかないでと引き留めてくれた。

 それどころか、この想いをあの子は受け入れてくれた。奇妙(おかしく)()も仕方ない、他人(だれ)に何と言われようともその気持ちは嬉しいと。


 小さい頃から一緒にいたけど、隣にいることが当たり前だと思っていたあの頃は、こんな気持ちなんて知らなかった。

 いつの間にか存在していたこの感情は、気付かぬふりをするにはどうも難しく面倒で。


 分かってる。俺が狂ってること、あの子が優しいこと。

 この恋は決して祝福されない。きっと……正しくない。


 俺は、俺の片割れに―――




 危なかった。あの子は私を置いていってしまうところだった。やっと想いが報われるところだったのに。

 実は私が気付いていたこと、あの子はきっと知らないでしょう。だってあの子は、何も覚えていない。

 だけど、まさかあんな行動に出るなんて、思いもしなかった。ハッピーエンドは待っているだけじゃダメだってこと、私は全く学んでないな。


 嬉しい。本当に嬉しい。また一つになるその時を、ずっとずっと待っていたから。他人(自分以外)なんて知らない。ただ私は、もう一人の私に愛されたかったの。

 想いを閉じ込めてしまうのは、もうお終い。純粋一途なこの気持ちをあの子に捧げよう。


 分かってる。私が狂ってること、あの子が優しいこと。

 この恋を決して誰にも否定させない。たとえ間違いかもしれなくても…。


 私は、私の片割れに―――




 これは必然の恋。前世(むかし)の僕が、今世(いま)の私たちにかけた(のろ)いだから。

 孤独な人間は、強く、己の死を願った。だけど時間はただただ過ぎていくばかりで、いつまでたっても死ねなかった。孤独な人間は、やがて年を取り、病を得た。自分がずっと救済を望んでいたことを自覚した頃、全てから解放される期限ときを悟り、よろこんだ。

 苦に支配され続けた人間は、死の間際に後悔した。


 せめて自分だけは…自分を愛してやれば良かった、と。



 ある子供は、ある時、自分が一人ではないことを知って喜んだ。もう一人の自分は何も覚えていないようだったが、かつてのように孤独におびえる素振りを見せた。

 片割れに安らぎを与え、子供はわらう。


 今度こそ…自分たちは孤独ではない、と。

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