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間話【幼年期2】木登りと立ち○ョン

 私は5~6歳になった頃、3つ上の兄パリスに、木登りや岩登りを習い始めた。


 まだ小さいから危ないので、無理はするなと言い聞かされていて、挑戦する対象も兄が危険が少なそうなものを選んでくれている。

 しかし少し慣れてくると、手や足が届く場所なら、兄の真似をして、色々なところによじ登りはじめていた。


 兄は凹凸の少ない木には、木の周囲に縄を巻き付けたものを手がかりにして、器用に登り降りしていく。


『私もあれくらい身軽に登れればいいのにな』



 木登りが大切な理由は、森で大きな動物に遭遇した時に、逃げ出すための大きな手段だということだ。


 山の上の畑や家のそばの林に行く時は、子ども達は必ず2人以上で行く。

 両親も山や森の奥には1人では入らない。


 山に近づく時、兄は警報や応援要請の機能に切り替える事が可能な、縦笛を吹き鳴らし、わたしは獣よけの鈴をうち鳴らしていく。


 それで大抵の熊や鹿、猪に野豚といった大型の動物は退散してくれる。

 しかし、めったに出現しないものの、狼や大トカゲなどはお腹を空せていたりすると、容易に退散してくれない時があるという。


 そういう時は、手近な木によじ登ってやり過ごし、諦めて立ち去るまで待つか、警笛で家族や近くにいる人に知らせて応援を呼ぶしかない。 



 私は元々家の柱のよじ登りをほぼ制覇して、家族にドン引きされたくらいには身軽なほうだ。


 兄の指導もあり、割合すぐに家の近くの大抵の木には素早く登れるようになった。



 しかし、私には大きなハンデがあった。

兄たちに比べると、かなり身体が小さいのだ。


 母によると、母と同じで、身体の成長は人よりやや遅めなのではないかという。

 どちらにしても、身近に同い年の子どもがいないので、比較のしようがないのだが。


「心配しなくても、成長期になれば、母さんくらいには大きくなれるわよ」


 茶色の穏やかな瞳で、母さんは優しく笑うが、申しわけないけれど、母さんでは小さすぎる。

 狩りや漁をして暮らすためには、よく狩りに連れて行ってくれるガーズィーおじさんとまではいかなくても、せめて父さんくらいには背が伸びないと困る。



 もう一つ、私には大きな悩みがあった。

兄達みたいに上手に立ち○ョンが出来ないのだ。


 真似をして失敗し、パリスに怒られて大泣きしながら小川で服を洗ってもらって家に帰ったこともあった。


 山に行く時も立ち○ョンができれば便利だし、そもそも夜に怖い思いをしてトイレに行かなくても、家の側で済ますことができる。


 トイレは家の外にあり、ロボットとの一体構造になっていて、排泄物から肥料を作ったりしていた。


 何年かに1度は場所を移動する。

 もとあった土地をきれいに埋めて、湧水や川に影響が無い場所に新しく地面を掘って設置するのだ。

あまり家の側にトイレがあると、衛生的にもよくないらしく、玄関から2~3分かかる所にあった。


 夜中に起きて行くのは、灯りをつけても怖いし、誰かを起こして同行を頼むのも面倒だ。


 母は「部屋におまるを置いてもいいのよ」と設置してくれたが、私は赤ちゃんじゃない。

絶対使いたくない。

 そもそも、立ち○ョンができればすべては解決するのだ。


「ねえパリス兄さん、どうやったら上手に立ち○ョンができるか教えて!」


「お前、どうやったらそういう発想になるんだよ。

 頭腐ってるのか!? 毒の実でも食べたのか!? 

 なんだってそんな事を思いつくんだ。」 


「んー、できれば色々便利じゃない。」


「こないだもお漏らししたところじゃないか。

 もう、川で洗濯なんかしてやらないからな!」


 私はふくれた。

 ハウツーについてはかなりの情報を夢の国で探しあてて実践する事ができるのだが、立ち○ョンはなかなかヒットしない。

 つまり門外不出の極秘事項なので、自力で習得しろということなのだろう。


「意地悪言わずに、ねえ、教えて、お願い!!」


「む……む、む、む、無理だよ。」


「ねえ、どうして無理なの。」


「もうちょっと大きくなれば……

 多分父さん、いや母さんが……」


「大きくなればできるの? 

 ねえ、どうやったら大きくなる?」


「い、いや、そっちじゃなくて……」


 私に問いつめられて面倒くさくなった兄は、やけくそで「毎日逆立ちすれば大きくなる」と答えた。



 それからというものの、毎日、私は逆立ちの練習に励み、すぐに支えが無くてもできるようになった。


「ねえ、兄さん、見て見て! 

 こんなに上手く逆立ちできるようになったんだよ。

 ついでに、宙返りも完璧だと思うんだけど、どう?」


 私はきれいな側転やバック転を披露する。


 収拾のつかなくなったパリス兄さんは、何も言わずにそっと目をそらし、

『父さんと母さんはいつになったら教えるつもりなんだろう……』

と思うのだった。


どうでも良いのですが、「大きくなったら」の解釈について

コニー → 身体全体が成長して大きくなる

パリス → ご想像におまかせします

元ネタは、小学生の時の友人が低身長で悩んでいて、逆立ちをすれば身長が伸びるというデマを信じて、毎日、壁際倒立を頑張っていたという実話が元です。

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