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間話【幼年期1】夢の国の秘密

今回は、コニーの幼年期のお話になります。

 私が小さい頃の、家族の私に対する印象は「とにかく良く眠る子」だった。


 もちろん眠っている時は大人しくしていて手がかからないので、好きなだけ眠らせてくれた。


 物心がついた頃には、寝ている間に夢の国を探検することを覚えた。


 両親や兄たちが出てくる普通の夢は、白黒で印象もぼんやりしているけれど、夢の国にははっきり色がついている。

 そして、まるでその場にいるように、物を触ったり、匂いを嗅いだり、音を感じたり、物を食べて味を感じたりするのだ。



 夢の国では、私は老若男女様々な人になることができた。

 ただ、何を考えて行動しているのかは良く分からない。

 精々、回りの雰囲気によって、今は楽しそうだなとか、真面目な雰囲気だなとか感じる程度だった。


 それに、「こうしたい」とか、「ああしたい」とか思っても、全然思うようには動く事ができない。

 興味のない事ややりたくない事を始めた時には、すぐその人物から離れるようにしていた。


 また、周囲と話したり文字を読んだりする時の言葉も様々で、何となく分かることもあるが、理解出来ないことのほうが多かった。


 私のお気に入りは、もちろん食べることだ。

 濃厚なクリームがたくさん乗っているフワフワのケーキ、もちもちした甘いお菓子、とろけるような食感のソフトクリーム。

 何の素材かは分からないけど、食べたことがないような柔らかくて香ばしいお肉に、新鮮で身がプリプリしたお魚、不思議な形をしているけれど食べたら美味しい生き物達……


 麺類や米を調理した料理や、パンもたくさん種類があった。


 夢の中でいくら食べたとしても、実際お腹がいっぱいになるわけではなく、むしろよけいにお腹が空く事が多いのだけれど、毎日食べるご飯よりは格段に味が良いものが多くて、美味しいものを食べる人にくっついて行くのはとても素敵だった。


 特に「タベアルキ」は最高だった。

美味しいものを、色んな種類次々食べる事ができるのだ。


 逆に「ノミアルキ」は最悪だ。

苦みがあったり、変な刺激があったりして、美味しいとも思えない飲み物をたくさん飲み、身体や頭がフワフワしたり、ひどい時は気持ちが悪くなって吐きそうになることもある。

 不味そうな液体を飲んでばかりいる人からは、すぐに逃げ出すことにしていた。



 運が良ければ、食べる事以外に、色々な場所で遊ぶ時もある。


 沢山の人がきれいな建物のある大きな広場に集まって、みんなニコニコ楽しそうで、可愛いぬいぐるみを着た人達が踊ったり、抱っこしてくれたりするのだ。


 小さな乗り物に乗って、飛行車よりもすごいスピードで走りまわったり、空中をグルグル飛び回る事もあった。


 時には、暗くなった夜空に火花が散って、美しい模様を描くこともあったけれど、私は家の前の開けた庭で、満天の星空の中、父さんや兄さん達が時々やらせてくれる「花火」のほうがはるかに楽しかった。



 他にも、見たこともない不思議な動物や魚が色々集まって檻やケースの中に入って生活している場所や、不思議な機械や玩具が沢山置いてあって自由に遊ぶことができる場所もあった。


 湖よりも広くて波の高い、青い青い水面を泳いだり、大きな船に乗って周囲を眺めたり、真っ白な雪の上を大きさが様々な板に乗って、周囲の風の激しい疾風を感じながら滑り下りる遊びもあった。



「ねえ、母さん。昨日はこんな所に行って遊んだの。 とても楽しかったよ。」


「昨日はすごく美味しいケーキを食べたの。

 どうして持って帰れないのかなあ……」


 小さな頃は拙い言葉で、夢の国の素晴らしさを一生懸命家族に伝えようとしていたのだが、いつもはとても優しい両親はそれを聞くと、とたんに機嫌が悪くなるのだった。


「コニー、そういう事は安易に人に話すものではありません」


「夢の国には、もう行かないようにしなさい。

 お菓子は町に行った時に買ってきているし、お兄ちゃん達もよく遊んでくれているでしょう。」


「どうして、行っちゃいけないの?

 色んな事ができてすごく楽しいのに……」


「……それは……知らない人がその話を聞いたら、コニーがおかしな子だと思われるかもしれないでしょう。

 検査や実験のために、他所へ連れて行かれるかもしれないわ。」 


『え、そんなの、イヤイヤ…』


「コニーの夢の国は、コニーの身体にすごく悪いかもしれないのだよ。

 あまりそこに行き過ぎると、もしかすると、こっちの世界に帰ってこれなくなるかもしれない。」 


 そういう両親はとても不安そうで、私はいつの間にか家族に夢の国の話をする事はなくなった。



 少なくとも、「普通の感覚(両親や兄弟たち)」では夢の国とやらに行くことはできず、それができるということは異常なことなのだそうだ。


 そして、この世界は「普通と違う人」に対してとても苛烈で冷たい。

「普通と違うこと」はできるだけ隠していかないと、酷い目にあって長生きができないというのだ。



 両親から深刻に言い聞かされた私は反省して、しばらくは夢の国に行くのを自制しようとしたけれど、何せ夢の世界なのだ。

 最大の楽しみを無意識の中で諦めきることは難しく、気がつくと我知らずフラフラと探検しに行っていた。

 仕方がないので、家族にも内緒にして、私の秘かな秘密の楽しみとなっていった。


 両親はうすうす感付いているところもあるのか、

「最近、夢の国には行っているのかな…? 」

と、それとなく探りを入れてくることがある。


 でも、私は幼いながらも本能的に、正直に答えたら不味い結果になるかもしれないという危機意識を感じていた。


「パリス兄さんがいっぱい遊んでくれるから、最近は行ってないよ」

と、後ろめたい言い訳で何となく誤魔化してみる。


 父さん、母さん、本当にごめんなさい!


 とりあえず、両親にとっては家族以外に情報が漏洩していないことが最重要だったようで、何となく怪しいとは感じているようだか、私が余計なことを話さない限り、深く追及される事は無かった。



 夢自体には当たりや外れがあり、外れを引く事も多々あった。

 何が楽しいのか私には意味が分からないことを延々やっていたり、逆に辛い思いをしてすぐに逃げ出したりするようなことも多い。

 五感の同調感度も、憑依する人によって様々だった。

 思うように夢の国になかなか行けない日や、対象者に上手に憑依できない時も多かった。



 しかし、山の中の狭い世界しか知らない私にとっては、夢の国で様々な物を見聞することで無尽蔵の広い世界を知り、私は私なりの成長と、価値観を養っていったのだった。


ネタをばらしてしまいますと、コニーのいうところの夢の国とは、転生前の記憶などではなく、失われた旧文明のデータの一部に、コニーがアクセスしている状態です。


 五感で体験する記憶を記録データ化したものといったところでしょうか。

 SNS に流すような、プライベートな写真や動画の五感バージョンが意識の中に流れこんでくるような感じです。


 一応、旧文明にも検閲はあったので、内容は18禁の常識的な物だけですよ。

 感情の記録は、洗脳に使われたり、発狂する人が出たので、あえてできないような設定になっています。


「夢の国」は作者の理想です。

美味しいご飯を写真だけじゃなくて、味覚でも再現できたら最高だと思いませんか?

あー、誰か開発してくれないかな……

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