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百村りか⑧

 駐輪場から校舎へ向かう。特に会話はない。


 ここ小平中央高校は住宅街に建てられているので、こじんまりとしている。


 左には校庭。右にはテニスコート、体育館、体育教官室と部室の別館が並んでいる。


 ちなみにこの別館の屋上がプール。マレーシアからインスピレーションを受けたのだろうか。それともマレーシアが小平中央高校にインスピレーションを与えたのだろうか。あるいはマレーシアも小平中央高校も同じものに影響されてこのような構造になったのだろうか。または非因果的連関の原理、いわゆるシンクロニシティだろうか。ま、どうでもいいんだけど。


 そのどうでもいい建物の間が駐輪場のある裏門から校舎に向かう道だ。たぶん結構変わった造りなんじゃないかな。


 校舎の一階には生徒のロッカーが並んでいる。佐井君とロッカーの列が違ったので、一回分かれて靴から上履きに履き替える。佐井君の方が早く終わっていたようで、階段の前で待っていてくれた。小走りで合流。


 ほんの少しし分かれていないのに、むしろこれを分かれたと表現してもいいかわからないくらいの出来事なのに、合流するだけで気持ちがあったかくなる。



「ごめん」


「何が?」


「待たせて」


「全然大丈夫」


「よかった」



 階段を上る。


 いつもよりスカートが短いから少しそわそわする。気が付いているのかな? 思っているほど大きな変化ではないから気が付かないかもしれないな。


 四階の放送室に到着する。ドアが開かない。先輩たちより早かったようだ。職員室に行って鍵をもらってこなくては。


 二階に降りて職員室で山田先生に声をかける。



「おはよう、早いね」


「おはようございます。初日なので、一応遅れないようと思いまして」



 佐井君が先生と話をしている。



「そっか。いい心がけだね。はいこれ鍵。入っててもいいけど、先輩たちが来るまで機械はいじらないようにね」


「わかりました。ありがとうございます」


「あ、ありがとうございます」



 佐井君に続けてお礼を言う。



「失礼いたしました」


「失礼いたしました」



 職員室を出る。



「ありがとうね」


「何が?」


「いや、先生とのやりとり」


「ああ、別に気にしないでいいよ」



 佐井君が笑顔で言ってくれるので、気が楽になる。



「うん、ありがとう」



 再び階段を上り四階の放送室へ。放送委員会はダイエットになるかもしれない。


 佐井君が鍵を使って放送室の戸を開ける。部屋には机と椅子があり、二つずつ向かい合わせになっている。周りは配線やコードの束、アンプやマイクが置かれたラック。奥にもう一つ部屋があって、ガラス越しに中が見えた。


 その奥の部屋がいわゆる放送をする部屋だ。変な言い方だとは思う。だけどこんな部屋に入るのは初めてだから、表現のしようがない。



「あの部屋でアナウンスしたり曲を流したりするんだね」



 佐井君が奥の部屋を指さし言う。



「そうみたいだね」


「今日は見学かな」


「そうじゃない? いきなりは難しいよ」


「そうだよね」


「もしかしてやりたかった?」


「いや、逆。できればずっとやりたくない」


「うん、確かに」

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