エピローグ
「幸助は誰がいいの?」
麻衣が俺に詰め寄ってくる。
麻衣の後ろには数人の女子。その皆様が俺なんぞを指名なさっていらっしゃるようで……。
俺と俺を希望した五人の女子は黒板の前に立たされていた。
これは完全に見世物だ。
上田と南に視線を送り、救助要請を出すも、助け船は出港されず、二人はただぽかんとこちらを見ているだけだった。
「いや、誰がいいって言われても……。そんな、ねぇ、選べないでしょ」
「私、男子の友達が佐井君しかいないから」
百村さんが俯き加減で言う。
「私はほら、趣味が一緒じゃん? だから佐井君だったらいいなって思っただけだけど」
頭をぽりぽり掻きながら平尾さんが言う。
「先生どうしたらいいですか?」
大沼さんが、先生に助けを求める。
ありがとう大沼さん、と目で訴えると、大沼さんは気まずそうに視線をそらしてしまった。
「それじゃあ、くじで決めましょうか」
佐藤先生がプリントをはさみで切り、くじを五枚用意する。そのうち一枚の裏に二重丸を書いた。
それを二回折りし、角二封筒に入れ、かしゃかしゃとまぜた。
「誰からでもいいですよ。引いてください」
佐藤先生が封筒を持って言う。
女性陣は顔をきょろきょろとして、誰から行く? みたいな無言のやりとりをしている。
「私は最後がいい。残り物には福があるって言うから」
日吉さんがそう言うと、麻衣が反応する。
「この場合の残り物って意味合い的に結婚できないって感じがするわよ」
なかなか辛辣なことを言うもんだ。
この二人仲良かったんじゃなかったか?
「じゃあ私が最初に引きます」
長峰さんが封筒に手を入れる。
「まだ見ないでね。一斉に確認しよう」
麻衣が制するように言う。
俺にとって恥ずかしいイベントの演出は麻衣が担当しているようだ。
「じゃあ次は私が」
そう言って百村さんがくじをを引く。
その次は麻衣、その次は平尾さん、そして最後に日吉さんが引いた。
「それじゃあ結果発表ね」
麻衣が言う。
「誰になるんだ!?」
「佐井! お前すげぇな」
上田と南が、騒ぎだす。
「ちょっとほんとやめて」
それしか言えない。もう恥ずかしい。
結果発表は気持ち的になんか直視できない。
女子五人に背を向けて結果を聞くことにした。
「いくわよ。せーの」
麻衣の合図とともに、後ろからパラパラと紙を開く音がする。
「ああ、何も書いてないや」
「うそ私じゃない」
「えー違った」
「うーん、だめだったか」
「やった! 私だ!」
四人の落胆する声の中に、一人嬉しそうな声が聞こえた。
お読みいただきありがとうございました。
楽しんでいただけたでしょうか。
続編もございます。
タイトルは『花火を見ようと思っていた』です。
また『脳内整理のさらけ出し』にて自作解説的なライナーノーツみたいなものを書いております。
よろしければぜひお楽しみください。