坂浜恵美⑧
なにやらおかしな展開だ。
次のレクは男女ペアらしい。
そしてそれは希望をしていいらしい。
今このホームルー厶で決まってしまう。
まずい。まずいぞこれは。
佐井君と迷子の話を涼子にした次の日に、D組の小川さんが佐井君の事を下の名前で呼んで、自分のことも下の名前で呼ばせるという、あからさまなアプローチがあった。
さらにあの二人はメールをしているということも発覚した。
まずい。小川さんに佐井君を取られる。
あの子なら略奪もあり得る。
まずい。どうしよう。
運命のはずなのに、何でクラスが違うのか。不可抗力だけど、悔やまれる。
涼子が助けてくれないかな。
あ、そうだよ。涼子に助けてもらおう。
早速メールを入れる。
――今度のレクのペア決めしてる?
――うん、してるよ。男子が騒いで中断しているけど。
どこのクラスも男子は騒ぐんだな。落ち着けよ、もう高校生だぞ。ん? 高校生だから騒ぐのか?
――涼子が佐井君とペアになって!
――なんでよ!
返信早いな。理由くらいわかるだろう。
――佐井君彼女いないって。
私が返信を打っている途中に涼子から衝撃の発表があった。
――え!? どういうこと!?
――佐井君が男子たちの話の流れで言ってた。
なにそれなにそれ。
すっごい気になるけど、今は一刻を争うので、一度その話は置いておこう。
――じゃあそれは後で詳しく教えて。とにかく佐井君とペアになって。小川さんが狙ってるでしょ?
これで通じるだろう。
小川さんの暴走を止める必要がある。
それにもし本当に佐井君に彼女がいないのであれば略奪ではなくなる。普通の恋愛だ。余計に暴走する可能性がある。
――頼む。
――お願い。
――求める。
――乞う。
涼子から返信はないけど、お願いしまくる。
私の運命は涼子が握っているようなものだ。
――今度美味しいものおごってよ。
涼子からの返信。
これは、まじか、そういうことだよな。
本当にやってくれた。すごいやつだな、涼子。
絶対に大切にしようと思った。




