坂浜恵美①
運命だと思った。
神も仏も知らないし、私は宗教的な考えは持っていないけれど、何かそういうものを信じそうになるくらい、衝撃的だった。
もう会えないと思っていた人に会えたのだ。
顔を見た瞬間に分かった。サイコウスケだって。
入学式はクラス別に出席番号で席に着いた。
隣に座っていたのがサイコウスケだった。
サイコウスケは私は見えていないようだった。彼にとっては入学生の大勢の一人でしかないようだ。
まあ、あの時の事なんて私にとっての思い出でしかない。
これから関係を築けばいい。
気が気じゃないまま入学式は終わった。
校長先生の話は一つも覚えていない。
たぶん、元気に高校生活を過ごしなさいとか言っていたんじゃないかな? 知らないけど。
教室に戻り、担任の加藤先生から説明がある。
それはちゃんと聞いておいた。校長先生の話より大事だと思ったから。
今日は入学式だけなので、早めに帰宅できる。
周りは早速友達作りに励んでいる。私も作らなきゃな。
話しかけてくれた子にテキトーに合わせて連絡先の交換をする。
サイコウスケのことが気になるけれど、いきなり近づいたら怪しまれてしまうかもしれない。
本当は今すぐにでも話しかけたいくらいだけど、そんな無鉄砲なことはできない。
時機を見て仲良くなっていければいいな。
その時機はきっと来るはずだ。