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押立さくら③

 りかが佐井君の事を好きなのは一目瞭然だった。


 りかはいつも佐井君を目で追っているし、木曜日の朝、二人で教室の入ってくるときの雰囲気はいつもと全然違う。


 佐井君はいつでもどこでもだれとでも、あまり変化はないけれど。


 他の人がりかのそんな気持ちに気が付いているかどうかはわからないけれど、いつも近くにいる私にはわかる。


 痛いくらいによくわかる。


 思いが伝わっていないこともわかっているし、伝えられないのも、伝えたくないのも、伝えるのが怖いのも十分わかっている。


 だからといって私から、佐井君の事が好きなんでしょ? なんてことは聞かない。聞くわけがない。


 りかがそう言ってくれるまで確信にはならない。


 それは大事なこと。


 りか自身が、胸に秘めているのであれば、それは周りが何と言おうと真実ではない。


 一目瞭然だとしても、これは予想の域を出ない。


 ただ、予想だとしても、佐井君のどんくささが引き起こす行動にりかが傷ついているのは見過ごせない。


 小川さんの行動もそうだけど、やっぱり佐井君がいけない。


 佐井君は小川さんに、嫌だったら嫌だって言うべきだ。


 そうじゃないなら、付き合ってしまえばいい。


 いや違う。佐井君には彼女がいるんだから、やめてって言うべきだ。うん、そうだ。絶対そうだ。


 浮かれているのだろうか。かわいい小川さんにちやほやされて浮かれているのだろうか。


 だけど、そうには見えないんだよな。


 小川さんに言い寄られても、りかといるときと何ら変わりがない。


 逆に小川さんがかわいそうなくらい。


 うん、佐井君が悪い。これは佐井君が悪い。


 女の子の気持ちを持て遊ぶ、佐井君が一番悪い。


 こんなことを考えていたら、体育祭も最後のプログラムだ。


 大繩飛び。


 これ、誰が考えたんだろう。すごい企画だと思う。


 一致団結が重要だし、見に来る保護者達も飛ぶ回数が増えるほど緊張感が増してくる。


 やるのは嫌いだけど、見るのは好き。


 三年生たちのクラスの団結力を見せてもらいたい、ところだけれど、やっぱりりかが気になる。


 放送委員のテントでは、何やら忙しそうに佐井君が体育委員の日吉さんとやりとりをしている。



「ただ今、次の競技の準備をしております。もう少しお待ちください」



 何やらトラブルだろうか。


 佐井君は合図を出したり、機械をいじったりしている。


 りかは相変わらず、椅子に座ってじっとしている。


 早くりかのところへ行きたい。


 でもなかなか競技が始まらない。


 これが終われば昼休みになるのに。



「お待たせしました。午後の最後の競技、大繩飛びです。選手入場」



 やっとはじまる。


 普段だったら、何回飛べるか楽しみに数を数えるのに、今はすぐにでも終わってほしい。


 早く足を引っかけて終わってくれないかな。


 りかのところへ駆け付けてあげたい。


 おいおい、先輩たち、団結力高過ぎじゃない?


 何回飛ぶんだよ。


 早く終わってくれないかな。

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