表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
60/72

押立さくら②

「りか、大丈夫?」



 体育祭の放送委員のテントの中、りかがパイプ椅子にぐったり座っている。


 体育祭が始まったばかりなのに。


 開会式の時、クラスの列から元気のないりかが見えた。


 第一プログラムの百メートル走に私は出ない。


 だからすぐにりかの元にやってきたのだ。



「うん。何でもないの。気にしないで」



 りかはそう言うけれど、気にしないことなんてできない。


 明らかに調子が悪い。


 だからといって、しつこくするのも違うと思う。



「わかった。何でも言ってね」



 一度離れて、自動販売機のところへ。


 スポーツドリンクを買って、りかの元に戻る。



「飲み物買ってきたよ。飲む?」


「ありがとう」



 百メートル走が終わったようだ。


 選手たちが続々と帰っていく。



「幸助! 私の走り見てた?」


「あ、麻衣か。いや、見てないよ。放送委員で忙しくて」


「えーひどい! 見てって昨日メールしたじゃん」


「見れないかもしれないってメールしたじゃん」


「そうだけどさぁ」



 小川さんが佐井君に話しかけている。


 りかは俯いている。


 私は何も言わずに、りかの隣に座る。


 ペットボトルのキャップを開け、りかに渡す。


 静かにゆっくり飲んでいる。


 それでいい。


 だけど時間は過ぎていく。


 私の出番はもうすぐだ。



「一度戻るね。辛かったら保健室行った方がいいよ」



 私はそう伝えると、クラスの集合場所に戻った。


 クラスの集合場所はりかのいるテントの向かいだ。ここからなら様子が見える。


 佐井君がてきぱきと仕事をしている。


 調子の悪いりかの分まで働いている。ううん。佐井君には働いてもらわないと。


 私はわかっている。りかの調子がなぜ悪いか。


 佐井君は気が付いていないようだけど。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ