日吉瑞希⑧
ホームルームの時間。
夏休み後のレクについての時間だ。
男女ペアを作るらしい。
ドキドキする企画じゃん。何かあるかもしれない。
私にも何かあってほしい。
「おい、佐井は最後でいいだろ?」
南君が騒ぎ出す。
「え、なんでよ」
「だってお前彼女いるんだろ?」
なるほど、譲れってことか。
「いないよ?」
え、いないの?
クラス中がはてなマークになっているのがわかる。
「とにかく俺に彼女はいない」
おっとまじかー。
みんなすごいシーンとしている。
何か空気が変わった気がする。
うん、これはすごいぞ。
私もなんか胸がざわざわする。
「ちょ、ちょっと、男子だけで盛り上がってないで話進めてよ」
麻衣が動き出す。
さすが麻衣だ。これはチャンスだもんな。
「それじゃあペアの続きをします。ペアの希望はありますか?」
大沼さんが軌道修正をする。
くじとかじゃないんだ。希望でいいんだ。
え、どうしよう。私も希望言っちゃおうかな。
麻衣が手を挙げている。
うん。わかる。麻衣はそうだろう。
え、待って、香苗も手上げてるじゃん。
さっきまで表紙の気持ち悪いブロックみたいに厚い本を読んでなかった?
それに佐井君の彼女のうわさが流れたとき、恋愛について興味ないみたいなこと言っていたのに。
なにそれ、色めきだっちゃって。
私も何かしなくちゃ。
うん、ここは私も流れに任せていっちゃおう。
遊び半分本気半分で、手を挙げた。




