表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
37/72

小川麻衣①

 好きな人が好き。


 好きになるのに理由なんてない。


 いや、挙げようと思えば挙げられるけど、そんなのに意味なんてあるの? って思ってしまう。


 確かに、彼氏には私の好きなところを言ってもらいたい。


 でも、なんていうか……。そういうのって、本能じゃん?


 私はその本能に正直でいたい。


 だから相手に彼女がいようがいまいが関係ない。


 好きな人にはアピールあるのみ。


 それが私の恋愛戦術。


 これでいくつもの恋愛を勝ち取ってきたのだ。


 私の好きな人を誰かに取られるなんて、絶対にさせない。




  □◇■◆




 最初は幸助に対しては何も感情は持っていなかった。


 ただのクラスメイトの一人。


 幸助って言うより、佐井君って感じ。


 いつだか、男子が馬鹿みたいに大きな声で話すから、私にまでその内容が聞こえてしまった。



「佐井って彼女いるっぽいよ」



 たしか上田君が言い出したことだったと思う。


 よく覚えていないけど、まあそこら辺の男子が言い出したことだ。


 信憑性があるのかないのかわからない、ただのうわさだと思ったけれど、幸助の余裕のある感じとか、身振り手振り、外見、そういうのを考えたら本当かもって思えた。


 あ、そのときはまだ、幸助じゃなくて佐井君って呼んでいたけれど。


 とにかく、そのうわさのせいで、彼に対する見方が変わったのは事実。


 いい男なのかもって思ってしまったのだ。


 彼女のいる男子ってそれだけで惹かれる時がある。


 ただ、実際にいい男なのかどうなのかわからなかったので、とりあえず近づいてみようと思った。


 まずはセオリー通りに、連絡先の交換から。


 幸助に対して誰か他の女子がアプローチしているようでもなかったので、ここは問題もないはず。


 そういう人がいても関係ないけど、争いはない方がいいに決まっている。


 タイミングを見計らって幸助に話しかけた。


 ここはあえてみんなの前ではなく、二人になった時に。



「佐井君、連絡先交換しよ?」



 今思い出すと少し恥ずかしい。


 佐井君って言っていたことが今は小恥ずかしい。


 その時幸助は一瞬不思議そうな顔をしたけれどすぐに笑顔になって、いいよと言ってケータイを出してくれた。


 うん、あの笑顔は素敵だった。ドキッとしたのは事実。


 恋だとか好きだとか、そういうのじゃない。


 なんていうか……青春? 


 男子とのやり取りってやっぱいいよね。


 女子との戯れも嫌いじゃないけど、男子とのやり取には独特の何かがある。


 それを感じた。


 連絡先の交換をしたけれど、今まで話していたわけではないので、何を話題にしたらいいかすごく悩んだ。


 今思えば、悩んでいる時点で私の頭は幸助でいっぱいだったのかもしれない。


 悩みながらもメールの応酬が続いた。


 特別なことなんて何もない。


 ただのやり取り。


 今日の夕飯は何だった、とか。明日までの宿題の答え教えて、とか。


 でも大事なのはつながっていること。


 たとえ彼女がいても関係ない。


 幸助のメールはなんだか優しくて、きれいだった。


 こういう人にはちゃんとした彼女がいるのだろうと思った。


 だけど、本当に彼女がいるのかと疑いたくなるほど返信が早かった。


 うん、多分いい男だ。


 私がちゃんとした彼女になればいい。


 そろそろ次の段階に行く時が来たかもしれない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ