上田あん①
小さいからといってバカにしないでほしい。
五歳だからといって子ども扱いしないでほしい。
私にだってちゃんと考えはある。思いがある。
いつまでも大人たちに首輪をつけられていてはたまらない。
自分の意思で決定したいことだってあるのだ。
特に恋愛においては。
はっきり言うと、恋愛の事なんてよくわからない。
でも好きになるという気持ちはわかる。その人の前にいるとドキドキしたり、その人のことを考えるといても立ってもいられなくなるということだろう。
そして好きな人の前ではいい子ちゃんでいたくなる。
そう女は大人子供関係なく乙女なのだ。
好きな男の前では乙女になるのだ。
どんな種族であってもかわいい子猫ちゃんになりたいのだ。
小さいながらも周りの大人たちを見ていればそれくらいわかる。
佐井と呼ばれる彼は私の好きな人。
良太が「佐井には彼女がいる」とか言っていたけれど、私には関係ない。
小さいということを特権に甘えることができる。
それは佐井と呼ばれる男が私を恋愛対象で見ていないということではあるけれど、大きな隔たりがある時点で叶わないとわかっている。
だからこそ、甘えられるのだ。甘えたいのだ。
ちなみに良太は家の長男。高校一年生だ。
佐井と呼ばれる男が良太に会いに来るときにしか会えない。私から呼び出すことは出来ない。
いつも不意打ちで、私が油断している時にやってくる。
恥ずかしい格好の時もあったけれど、来てくれたことがうれしくて恥ずかしいという気持ちはすぐにどっかに行ってしまう。
次はいつ来てくれるだろうか。