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萩山多喜子③

 ただ予想外だったのは、気が付くのが遅れもう目の前までトラックが迫っていたことだ。


 プレーヤーをいじっていたせいでトラックのライトにも気が付かず、イヤホンをしていたせいで走行音も聞こえなかった。


 あちら側も私のプレーヤーが光っていたとはいえ、私は黒い傘に黒いコートの死神コーデ。それに雨も降っている。トラックの運転手に私が認識されなかったのだろう。


 ああ、これは無理だ。避けられない。


 そう思った刹那……。



 ドンッ



 予想通り私は宙を舞った。


 傘もプレーヤーも手から離れ同じよう飛んでいる。


 周りの景色がまるでスローモーション。


 数分間も浮いているかのよう。


 それでも重力は今日も働いている。


 身体は地面にたたきつけられる。


 すごい衝撃だ。


 トラックが止まり、運転手のおじさんが駆けつけてくる。


 よく聞こえないし、よく見えないけれど、心配してくれているのだろう。


 おじさんはきょろきょろ周りを確認している。


 助けを探してるのだろうか。


 しかし私の様子を見ると、車に戻りそのままどこかへ行ってしまった。



 あ、ひき逃げだ。


 これはまずいな。


 身体を動かそうにも動かせない。


 助けを呼ぼうにも声が出ない。


 とにかく全身が痛い。


 呼吸をすることすら苦しい。


 多分、肺にダメージを負っているのだろう。


 破裂したか、骨が突き刺さったかしているのだろうか。


 雨が頬を打つ。


 冷たい。


 しかし体中が熱い。


 

 ゴホッ




 咳が出た。


 ドロッとした何かも一緒に出たみたいだ。


 血だ。


 吐血している。


 もはや時間の問題だ。


 この感じだと発見までに時間がかかりそうだ。


 雨でびしょびしょだけど、多分涙も出ているんじゃないかな。


 感覚がなくなる。


 しびれているとかそういうことじゃない。


 意識が遠のく。


 夜だから暗いはずなのに、目の前は白い靄のようなものに包み込まれている。


 何か声が聞こえる。


 何か言っている。


 何にしても誰かが見つけてくれたんだ。


 助かるかな。


 よかった……。

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