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萩山多喜子①

 私はいつも一人だ。一人ぼっちだ。


 もう私には友達がいなくなってしまった。


 影が薄いとかそういうことじゃない。私の事なんて誰も見えていないのだ。


 今日も小平中央高校の学友たちは私になんか気にも留めず、そそくさと私の横を通り過ぎ学校へ向かう。楽しそうに友達とおしゃべりをしながら。


 もちろん生徒全員が私の知り合いではないので、考えすぎだと思わなくもないが、私はそれなりに学校では有名人であると思っている。チラ見くらいあってもいいのではないか。


 有名になりたくてなったわけではなかったけれど、ちょっとした出来事があって……まあちょっとしたではないんだけれど……きっかけがあって、私の名前が知れわたった。


 ある意味それが原因でみんなからの視線が無くなったのだけれど……。


 私にも数は多くなかったけれど、同じ趣味を持つ友達が何人かいて、一緒に登下校もしていた。休みの日には遊びにも出かけていた。


 でも今はそんなことはできない。


 それは不本意であり、私の望まないことだったが、受け入れる他なかった。


 悲しくて泣きたくても泣けない。悔しくて叫びたいけど叫べない。


 親にも誰にもこの気持ちを打ち明けられずに時間だけが過ぎていった。


 そんな中、佐井君だけは私を見てくれた。ちゃんと私に挨拶してくれる唯一の人。


 佐井君とは学年が違うから私の事なんて知らなかったと思う。あの出来事があってからも時が経っていたし、どこかで知ったのだろう。その上で挨拶をしてくれている。


 私は佐井君に何もできない。佐井君もそれをわかっていながら、気を使ってくれているのだと思う。


 学校のある日の朝と夕方の時の登下校中だけが顔を合わせる瞬間だ。私はこの時だけが唯一の楽しみとなっている。むしろこれしか楽しみがない。


 あの出来事さえなければ……。いや、あの出来事があったから、学年の違う佐井君とのつながりができたとも言える。でもやっぱりあんなことが起きなければ私は佐井君と堂々と街を並んで歩けたかもしれない。


 そう、あの出来事さえなければ……。

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