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百村りか⑪

 ホームルームの最中、それは突然のことだった。



「それ、姉な」



 佐井君の彼女だとみんなが思っていた人は、お姉さんだった。


 佐井君はこんな嘘をつくような人ではない。


 それは私が一緒に放送委員会の仕事をしてきてよく知っている。


 それに佐井君は彼女がいるのなら、それを隠すような不純なことはしないと思う。



「とにかく俺に彼女はない」

 佐井君が言い切った。


 

 ドクン



 胸が鳴ったのがわかった。


 胸の中で一度諦めたあの気持ちが再び動き出した。


 なんだよ。彼女いなかったのかよ。


 体育祭、もっと楽しめばよかった。


 好きだけどあきらめなくちゃいけない人と二人で、みんなとは違うテントで待機していたあの地獄。


 本当は天国だったんじゃないか。



「ちょ、ちょっと、男子だけで盛り上がってないで話進めてよ」

 小川さんが勢いよく男子に言う。



 小川さんって佐井君のこと好きなのかな?


 好きっぽいよな。あからさまなアプローチがあるもんなぁ。


 でも私だって距離は近いと思っている。



「それじゃあペアの続きをします」

 学級委員の大沼さんが話を進める。

「ペアの希望はありますか?」



 そうだった。レクのペアを決めている最中だった。


 ってちょっと待って。


 え、希望? 希望言えるの?


 誰と組みたいか言っていいの?


 それは……もちろん……。


 ああ、でも言いにくいな。


 あ、小川さんが手を挙げている。


 そうだよね。挙げるよね。


 どうしよう。


 どうしたらいいんだろう。


 もういいや、どうにでなれ。


 勢いで手を挙げた。

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― 新着の感想 ―
[良い点] うわー。 なるほど、そういう経緯……! 心のひだというか、丁寧に揺れ動き変にがシリアスだったり、どっぷり恋に恋してるみたいな陶酔ではなく、軽妙に描写されるからこそ、臨場感があって、それで…
[良い点] 読み合い企画から参りました。 うわ、ここでりかちゃんのターンが終わるんですね。 斬新な構成にドキドキです。 [一言] 感情移入しやすくて、体育祭を後悔する気持ちがとてもよくわかりました。 …
[良い点] 百村さんが挙げたー!!! [一言] でも百村さん、佐井くんのこと意識しすぎてほとんど事務的な会話しかしてないよ! これでほかのライバルの子たちに勝てるのでしょうか。
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