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百村りか⑨

 突然戸が開けられた。



「おっはよー。気合入ってるね、一年生」



 二年生の高橋先輩。



「おはよう。りかちゃん、佐井君」



 三年生の吉田先輩。


 メールで先輩の名前を佐井君に教えてもらっておいてよかった。


 どちらも女子バレーボール部で仲が良く、それで同じ委員会で同じ曜日にしたらしい。


 佐井君はいつのまに仕入れたんだろうか、そんな情報。



「「おはようございます」」



 それにしても先輩が入ってくるだけで緊張感が増す。こういう空気、苦手だな。


 先輩たちは鞄を机に置くと、手慣れた様子で放送の準備に入った。



「じゃあ見ててね」


「「はい」」



 多分見ていたところでよくわからない。機械いじりは得意ではない。後で佐井君に聞こう。


 高橋先輩が奥の部屋に入り、吉田先輩がこちらの部屋に残った。ガラス越しに合図を出して放送が始まった。


 音楽とともに、高橋先輩がマイクに向かい朝の挨拶をする。何度もやっているからだろうか、高橋先輩は何も読まずにスラスラと言葉が続いていく。そしてとてもいい声をしている。


 うん、この役割は佐井君に任せよう。私はガラス越しに合図を出す方でお願いしよう。うん、それがいい。


 放送を終えた高橋先輩が戻ってきた。



「おつかれさまです」



 佐井君が声をかける。ちゃんとしていると思う。ちゃんとしているということは大事だ。



「ありがとう。ま、こんな感じかな」


「多分わからないよね。また来週も教えるから」


「「わかりました」」


「じゃあまあ今日はこれまでだね」


「はい。ありがとうございました」



 四人は荷物をまとめる。


「あ、鍵は俺が返しておきますよ」



 佐井君が鍵を手に取る。



「いいよ、私が持っていくよ」



 吉田先輩が佐井君から鍵を受け取る。



「ありがとうございます」



 部屋を出ると吉田先輩がカギをかける。



「じゃあ、また来週ね」


「はい、また来週お願いします」



 吉田先輩は二階へ、高橋先輩は三階へ降りていく。


 仕事を終えた先輩たちの背中はかっこよく見えた。私もあんなふうになれるのかな。あ、でも別になれなくても問題はない。だから特に目指しはしない。



「教室に行こう」


「うん」



 佐井君が先を歩くので、小走りで追いかける。隣を歩く。なんかいい。うん、なんかいい。


 教室に到着してしまった。これで今日の二人の秘密の共有は終わり。実際は秘密でも何でもないんだけど、そう思うとワクワクが増す。


 それからいつもと変わらない学校生活が送られるだけ。


 でも木曜日の朝という楽しみができたのはこの学校生活において大きなウェイトを占めることなるだろう。

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