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貫き通せ我が騎士道  作者: 神木ユウ
第3章 清風国ウィンド
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第84話 空白地帯を目指して

 1日自由時間を挟んで、出発の日だ。ラフィールを出て、予定通り南東に向かう。

 明確な目的地はない。一先ず30日ほど南東に進んでみようと思う。どこかで剣の気配を感じたら良し。なければ南下して伝説の場所を目指そう。


「明確な目的地なしで出発するのは初めてだな」


「ん? 話を聞く限り、砂漠は目的地なしで突撃したんじゃないッスか?」


「ああー、確かに。そういえばあの時は、砂漠とかいかにも何かありそうだって何の根拠もない予想で突撃したんだっけ」


「それで本当に剣を発見してしまうのですから、大概剣に愛されていますわね」


「今回向かう地図の空白地帯ももしかしたら本当に何かあるかもしれないッスね」


 剣に愛されている、か。そういえばフィーを発見したとき



(ようこそいらっしゃいました、剣のいとし子よ)



 そう言われたっけ。あれは何か意味があったんだろうか。


(なぁフィー。初めて会った時のことなんだが……)


『マスター』


(ん?)


『その内、話すときが来ると思います』


(……そうか)


 まあ相棒がそう言うんだ。今は良いだろう。






 深い森の中を進む。ラフィールを出て10日、道なき道をひたすら進んでいる。


「地図の空白地帯ってことは当然街とかない訳で、道なんてある訳がないんだよな」


「もう森を歩くのも慣れたもんッスね」


「あの密林に比べれば、足元もぬかるんでいないし湿度も高くないし、何て心地良い森なんでしょうってなもんですわね」


 実際こういう森は何となく空気が美味しい気がする。人の生活圏から離れると、静かな清浄さに満ちている気がするというか。


『間違ってないよ。こういう自然が深いところは自然の魔力が多いからね。それが心地よさに繋がるんだ』


『逆にモンスターの領域は湧き出す悪性魔力で常に何となく嫌な感じがするはずですよ。体調に影響するほどではないでしょうけど』


(へぇ、自然の魔力が多いってことはこういう所で妖精が生まれるのか?)


『本来はね。今は多分ほとんどいないかなー』


(そういえば昔はたくさんいたとか言ってたな。今は妖精は生まれないのか?)


『前に妖精がいたでしょ。生まれないってことはないよ。多分ね』


『……生まれにくいだけ』


(何で生まれにくくなったんだ?)


『魔王が現れてから、世界に悪性魔力が増えたからねー。妖精には生き辛いよ』


 なるほど。剣たちが言う昔ってのは魔王が現れるより昔のことなのか。

 ん? こいつら500年以上も前から存在しているのか?


「ユーリさん。剣と話すのも結構ですけど、黙って何か考え込まれると不機嫌なのかと思いますわよ」


「ん? ああ、悪い。昔は妖精が多かったらしくてな。魔王が現れてから悪性魔力が増えて妖精は生き辛くなったんだとさ」


「魔王というのは封印されていても世界的に影響を与えるほどなんですか。何と言う……」


『封印されても、というよりは封印される前に世界に与えた影響かな』


『魔王の出現により世界に悪性魔力が湧き出る場所が出来たんですよ。それ以前は悪性魔力なんてほとんど存在すらしなかったんです』


『主様、その頃の悪性魔力と言う物は、奇妙な儀式によって体に宿す呪術的な危険物でございます。その儀式を行った者は大罪人として処刑されておりました』


 現在の世界は大きく魔王の影響を受けているんだな……。剣たちの話の内容をクラリスとエイミーにも共有する。


「……魔王ってのは思ってたより相当ヤバイ奴みたいッスね」


「ええ。昔の方々が討伐ではなく封印を選んだのも頷けるというものですわ」


「以前見た妖精が悪性魔力の影響を受けていたのも、世界的に悪性魔力濃度が高いからなんだな……」


『その妖精はきっと悪性魔力が湧き出る場所に近づいたんだと思うけどね。流石にどこにいても影響を受けるって程弱くはないはずだよ』


「ならこれから先、正気の妖精を見ることができる可能性もある訳だ。一度会ってみたいな」


「……兄さん、まさか」


「あんな小さい女の子がお好きなんですの……?」


 なんかめっちゃ悲しそうな目で見られている。物凄い不名誉な誤解を受けているようだ。


「いやいやいや、純粋な興味だって! そんな目するなよ!」


「そうッスよね。あたしくらいの大きさは必要ッスよね」


「エイミーさんではまだ小さいですわ。私くらいの大きさは必要ですわね」


「……そこで胸を張るってことは喧嘩売ってるッスね?」


「あら? 何やら誤解しているようですわね。私の方がエイミーさんより身長も高いというのに、一体何の話だと思っているのやら」


「"も"って言ったッス!」


「口が滑りましたわ」


「ぐぬぬぬぬ……!」


 賑やかだなー。


『で? どっちが好きなんです?』


(胸の大きさで女性の価値は決まらないんだよ)


『……つまらない』


『じゃあ何で女性の価値は決まるの?』


(……なんだろうな)


 騒ぎながらも先に進んでいく。







 更に15日、最寄りの街からもかなり離れた。何かあるとすればこの辺りだろう。


「あと3日くらい南東に進んで、そのあと南下するか」


「もっと北側とか、空白地帯を歩き回って色々探さなくて良いんですの?」


「この辺りに何かある確証がある訳じゃないんだ。別に良い。伝説の場所に行けばきっと剣が見つかるはずだしな」


 それにしてもこの辺りは森が深いな。いつまで経っても木、木、木で本当に進んでいるのか不安になる。

 街がないにしてもずっと森だとは。谷とか山とか湖とか川とか、何もない。本当にずっと森。


 そんな漠然とした不安を抱えながらも進んでいくと、


「ん?」


 感じた。剣の気配。


『あれ? これ、既にかなり近そうですが……』


『近いね。ただ……なんだろう……』


『……マスター、抜いて』


「え? ああ、わかった」


 リィンを抜く。その瞬間、



「な!?」



『……目の前』



 目の前の木。これは木じゃない。入り口だ。

 触れてみる。木に触れているのに、石のような感触。


「エイミー、クラリス、この木だ」


「木? この木がどうかしたッスか?」


「触ってみな」


 エイミーたちにも触れるように促す。触ればわかるはずだ。


「え!? 石の感触ッス!?」


「どうなってるんですの!?」


 エイミーですらこの気配に気づけない。それほどに完璧な偽装。

 俺も疑っていなければリィンを抜いたところで気づけなかっただろう。

 木から石の気配がするなんて、わざわざ気にしない。なぜならどちらもここにあっておかしくない物だからだ。

 例えばこの木から鉄の気配がしたら流石に違和感があるだろう。だが、石の気配なら地面の石ころを勘違いしたかと思い、気にも留めない。



 脳が目の前の偽装の理解を拒む。だってこの木におかしいところなんて全くないんだから。



 その木のような物を手で撫でて形状を確認する。ただの石柱のようだが……。


「これか?」


 スイッチのような物を見つけた。押してみる。

 すると、地面が開いた。地下への階段が現れる。


「やっと気配と視界が一致したな」


「感じてるものと見えてるものが違う違和感って結構気持ち悪いッスね……」


「私には急に地面に穴が開いて階段が現れたようにしか見えませんわ」


「気配を感じても半信半疑になるほど完璧な偽装だからな……。この遺跡? なのか? ここを攻略するのはかなり大変そうだ」


 階段を降りていく。一体どんな障害があるのか、想像も出来ないな……。

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