第77話 閑話:楽しい魔法開発
閑話を4話一気に投稿します。まずは1話目。
「エイミーさん、急に強くなりましたわね」
「そうッスか? 結局攻撃力不足なのは同じッス。確かに強くなったとは思うッスけど、そこまで劇的に強くなれた気はしないッスね」
「いえ、恐らく殲滅力という意味では私たちの中で最高になりましたわ。明確な役割ができたのですから、かなりの成長だと思います」
あのタカのボスを倒した技はかなり強力だが、エイミーさんのメインの成長はそこじゃない。
高速移動からの攻撃、それを連続して行うことで瞬く間に周囲の敵を殲滅して見せた。あの動きが出来るようになったのが何より大きい。
敵が反応すら出来ない速度で急所に一撃。エイミーさんの短剣が通る相手なら、全て1人で殲滅して見せるだろう。
「殲滅力ッスか。兄さんが攻撃力でクラリスが防御力ッスかね? それぞれ役割があってバランスが良くなったッスね」
そう言って嬉しそうにしているエイミーさん。確かに一見バランスが取れて、全員が平等に見える。だが、
(この2人に結界による防御が必要になる場面はほとんどないと言って良い。とすると私の果たす役割がなくなりそうですわね……)
別にエイミーさんのように、役に立てないなどと思い悩んだりはしない。役には立っている。その自覚はある。
ただ、結界が必要になるのは敵が強大な時だけ。普段はあまり必要ない。
(もう少し、攻撃魔法の練習をした方が良いですわね……)
遠距離攻撃が出来るようになれば普段から使いやすくなるだろう。正確には、超長距離か広域殲滅か、どちらか。
自分が身体能力で劣っているのは自覚している。身体能力お化けの兄妹についていくのは不可能。
だから身につけるべきは、動かなくてもその場で攻撃できる魔法。
簡単な属性魔法だけではなく、そろそろオリジナルの使いやすい攻撃魔法を作っておくべきだろう。
「ユーリさん、ちょっと見ていてくださいな」
「ん?」
完成した魔法をお披露目してみる。
「押し流す激流、巻き上げる暴風、万象飲み込み遍く流せ」
「え? お、おい……」
「轟々烈波・嵐海嘯!!!」
「うおおぉぉぉ!!?」
「え? きゃあああぁぁぁ!!?」
私を中心に大量の水が流れ出し、荒れ狂う海のように周囲を押し流していく。
更に竜巻を生成、水を巻き上げながら吹き荒れ、あらゆるものを吹き飛ばす。
「いかがです? 新しく作ってみましたの。広域殲滅魔法ですわ」
「いかがです? じゃねーよ!!」
「死ぬかと思った……。死ぬかと思ったッス……」
ちゃんと結界で守っていたのに何故か怒られてしまった。
「不思議そうな顔すんな……。そもそもこんな魔法どこで使う気だ?」
「え? モンスターがいっぱい来たら使えそうですわよ?」
「そうじゃなくて……。周り見てみろよ」
周りを見渡してみる。葉が飛んで丸裸になった木々と、水浸しで泥が飛び散った地面が見える。地面は濡れた上に風で荒らしたせいでぐちゃぐちゃだ。
「結構荒れましたわねぇ」
「のんきだな……。ここはモンスターの領域だからまだ良いが、人が通るところで絶対使うなよ」
「街中でこんな魔法放つほど馬鹿ではありませんわよ?」
「街中だけじゃなくて! 水流で荒らした上に竜巻でかき回すなんて、地面を荒らすために作ったのかってくらい荒れるだろうが。人の活動圏内では使うなってことだよ」
怒られてしまった。せっかく作ったのに。まあ大した威力はないから強敵には使えないし、あまり使う機会もないかもしれない。もっと別の魔法を考えてみよう。
「ユーリさん、ちょっと見ていてくださいな」
「……おう」
また完成した魔法をお披露目してみる。
「望遠、生成、凝縮、回転、貫く意志を我が下に、撃ち出す力を我が前に」
目の前に遠くを見るためのレンズを作る。そして、右手を前に人差し指を突き出す。
水を生み出し、小さく指先に集め、回す。狙いを定め、高速で、
撃ち出す!
「螺穿流・遥断!!」
撃ち出された水は、直線軌道で突き進み、狙った木を貫通。そのまま3本目の木を貫こうとしたところで水がなくなった。
「おおー! 良いな、かなり遠くまで貫通してるぞ」
「これなら周りが荒れることもありませんし、使い勝手も良いですわ」
「貫通し過ぎには気をつけろよ。例えば今貫いた木の向こうに人がいたら大惨事だ」
「確かに……。使い勝手が良いと思いましたけど、意外と使いづらいものですわね……」
でもこの魔法は使いどころが多いと思う。良い魔法ができた。もっと色々考えてみよう。
学院にいた頃は結界さえできれば良かった。他の魔法は一般常識程度に学ぶだけで、魔法の授業と言えば結界だった。
でもこの旅では色々な魔法を使う機会がある。手札を増やせば増やしただけ力になる。
楽しい。魔法を使うのが。こんな感覚は忘れて久しい。初めて魔法を使った頃の感覚。
もっと出来るはず。まだまだ魔法開発を楽しめそう。
世界最高の結界魔法使い、その枠を超えて、世界最高の魔法使いを目指そう。
隣にいる彼はきっと、世界最高の剣士になるはずだから。
嵐海嘯は恐らく二度と使われないので、覚えなくて良いです。




