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貫き通せ我が騎士道  作者: 神木ユウ
第2章 流水国アクア
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第74話 密林の異常

 翌日、早速密林へ向かう。と、思ったら。


「あ、君たち。今密林はタカが大量発生してる。危ないよ」


 街を出るところで、見張りをしている人にそう声をかけられた。


「タカが大量発生ですか。他に何か異常はありますか?」


「いや、特には聞いてないな。でもタカだよ? ただでさえ飛ぶモンスターは厄介なのに、大量発生ってことはきっとボスがいる。危険だから密林に挑戦するにしても今は止めておいた方が良いよ」


「密林が通常の状態に戻るのにどれくらいかかるかわかりますか?」


「うーん、どうだろう。他のモンスターがタカのボスを倒してくれれば治まるとは思うんだけど……」


 どれくらいかかるかわからないということか。1、2週間くらいなら待つのも悪くないが、流石に何ヶ月単位で待たされるのは困る。もしかしたら魔王軍の襲撃に間に合うかもしれないんだから。


「目的がある旅なので行きますね。危なそうなら戻ります。ありがとうございます」


 忠告がありがたいのは確かだが、それで密林に入るのを止めるかというとそんなことはない。どうしても無理そうなら仕方がないが、先ずは挑戦してみないことには始まらない。

 心配する見張りの声を背に、密林へ向かい出発した。





「じゃああたしは木の上から行くッス」


「ああ、何か来たら教えてくれ」


 リィンを抜く。スウェルで装備を整え、左腰にヴィラ、右腰にフィー、後ろにリィンを差している。

 環境適応は使わなくて良いだろう。早くその能力を試してみたいんだがな。機会がない。


「予想はしてましたけど、足場が悪いですわね」


「かなり歩きにくいな。あと既に靴が泥だらけだ。クラリスは服装そのままで良いのか?」


 俺やエイミーは普段から汚れても問題ない普通の服を着ているが、クラリスの服装は普段から学院の制服だ。汚れたら大変そうだが。

 エイミーはいろんな街で買った服を普段から着られないのが不満だと言っていた。夜寝る前のテントや街の宿屋などでちょくちょくファッションショーに付き合わされる。


「この服は特殊な結界縫製で汚れを弾くのですわ。泥だらけになったとしても、軽く水で流せば汚れが落ちる優れものですのよ」


「マジでか。羨ましいな……」


「ユーリさんも着ます? きっとお似合いですわ」


「お前は何を言ってるんだ……」


 俺がこの白と青がまぶしい制服を着る? スカートなんて穿ける訳もないし、こんな可愛らしい服装が似合う訳もない。


「きっと似合いますのに……」


「止めろ止めろ! そんなのエイミーに言えよ。きっと似合うだろ」


「サイズが合いませんわ」


「俺だって合わんわ!」


 クラリスの身長は150より少し高いくらいだ。エイミーは145くらい。身長だけで言うならエイミーがクラリスの服を着るのは不可能ではないと思う。ただとある一点に残酷なまでの差があるだけだ。

 ちなみに俺は170を少し超えたくらい。もちろんクラリスの服なんて着られる訳がない。


「タカが来るッス!」


「わかった!」


 エイミーから合図が来た。早速タカか。普段の状態を知らないからなんとも言えないが、大量発生のせいなんだろうか。

 こっちに来てるな。上空から急降下してくる。ヴィラを抜く。


「ふっ!」


 爪を構えて襲ってきたタカを斬りに行く。が、爪を剣に当てて流された。砂漠でワシとやりあった時を思い出すな。だが、


「せいやぁっ!」


 俺に弾かれたタカの上からエイミーが短剣を突き立てる。今は俺1人じゃない。弾かれてバランスを崩してる姿を晒した相手なんて簡単に仕留めてくれる。


「1羽ならこんなもんだが、こいつが大量発生してるんだよな。群れに襲ってこられたら結構危ないかもな」


「危なかったら私が結界で守りますわ。エイミーさんも危なかったら戻ってきてくださいな」


「索敵よりお前の安全の方が大事だからな。ヤバそうならちゃんと戻って来いよ」


「わかってるッスよ。じゃあまた木の上に戻るッス」


 そう言って2本の木を蹴って上に跳んでいく。


「本当に身軽だな。あんなこと俺には絶対できない」


「もちろん私にも無理ですわ。まあ戦闘以外で活躍しても、戦闘で役に立てなかったら不満なのでしょうけど」


「訓練はどうなったんだ? 何か掴めたのか?」


「わかりませんわ。もう魔法は教えてくれなくて良いとは言っていましたが」


「何か成果が出たなら俺にも見せて欲しいな」


「あなたも大概シスコンの気がありますわねぇ」


「そうか……?」


 わからん。家族になった経緯がそれなりだから、普通の家族よりも大切に想う気持ちは強いかもしれないが、それがシスコンかと言われるとどうなんだろうな。


(でも、一番ユーリさんの心の中心にいるのはきっとリリエル王女なんでしょうね……)


「クラリス、そっちの沼地からワニが狙ってる」


 水中に潜んでいるため見えないが、跳びかかれるくらいに近づいたら一気に来るはずだ。


「倒します?」


「近づかなければ良いだけだし、スルーで良いだろ。わざわざ水気が多い方へ行く意味もない」


「わかりましたわ」


 更に密林の奥へと進んでいく。地図で見る限り、きっと抜けるのに50日くらいかかる。なかなか大変な道のりになりそうだ。






「エイミー戻って来い! クラリス!」


「はいっ!」


 エイミーが戻ってきたのを確認して結界が張られる。その直後、タカが10羽群がってくる。

 その爪を結界に突きたてたり、羽ばたいて火の玉を飛ばしてきたり、何とか結界を破壊しようとしているが、それほどの力はないようだ。ここからどうするか。


「私がやりますわ! 封!」


 10羽全てを封印結界が同時に包み込む。凄いな、俺たちを守る結界を維持したまま、更に10箇所ピンポイントに結界を張るとは。


「縮!」


 そして結界が収縮し、タカを押しつぶす。かなりエグイ戦い方だが、守りと攻撃を両立した有効な戦術だ。


「うひー、クラリスの魔法はやっぱり怖いッス……」


「仕方がないでしょう? 私は結界魔法以外は簡単な魔法しか使えないんですから。それに結界が一番慣れているから魔力消費も少ないんですのよ?」


「それはわかるがエグイのは確かだよな……。絶対敵に回したくない……」


 密林に入ってから10日、やはりタカが多い。

 ワニは水場に近づかなければ襲ってこないし、ゴリラも敵対しなければ襲ってこないようだが、タカはどんどん空から突撃してくる。

 よりにもよってそのタカが大量発生しているっていうんだから勘弁して欲しいものだ。


「もう! あんまり言うと守ってあげませんわよ!」


「いやいや、助かってるって! あのタカ、魔法まで使ってくるからな。実際クラリスがいなかったらどうやって進むか悩むくらいには助かってる」


 タカの羽ばたきから火の玉が飛んで来るのを初めて見た時は驚いたもんだ。魔法の予兆を感知できなかったら間違いなく当たってただろうな。


「一体どれだけのタカがいるッスかね? ボスがいるだろうって話だったッスけど」


「どうだろうな。この大量発生がなぜ起きたのかによるんじゃないか」


「人の仕業だと考えているんですの?」


「その可能性もゼロじゃないってだけだ。こんなところでタカを大量発生させたからって何の得もないと思うし、きっと自然発生だと思うけどな」


 レッジの奴が狼の群れを作っていたのは、王都から戦力を引き出すためだった。だが、こんな国の端でモンスターを大量発生させても同じ効果は狙えないだろう。

 そして、これだけの群れを形成しようと思ったら、相当な量の悪性魔力が必要になるはず。魔王軍ならともかく、人間にできることとは思えない。

 だからこのタカの大量発生は自然によるものと考えるべきだ。


「自然発生だとしたら、どれだけの規模なのか全く読めないんだよな。他に自然発生した群れを見たことないし、あったとしても同じ要因で発生しているのかわからないし……」


「例えばどんな要因が考えられるッスか?」


「例えば……。実は今まではゴリラもワニもボスがいたけど、それが何らかの要因で死んでタカが勢力を増している、とか?」


「あり得ないとは言いませんけど、なかなか無理がありそうですわね。まだタカのエサが豊富になった、とかの方があり得そうですわ」


「考えててもしょうがない。先に進もう」


 このまま進んだら原因もわかるかもしれないしな。






 更に10日、もうすぐ国境を越えるかな。まあ何か目印がある訳でもないし、明確にはわからないんだが。


「兄さん! 何かヤバそうな木があるッス!」


 木の上に上って偵察していたエイミーが戻ってきた。


「ヤバそうな木? どうヤバいんだ?」


「めっちゃデカイッス! 50メートルくらいありそうッスよ!」


「はぁ!?」


 周囲の木は大体10メートルかそれより少し高いかといったところだ。その中に50メートルの大木? そりゃあ確かにヤバそうだな。


「まだ結構遠いッスけど、木の上でならここからでもはっきり見えるッス。実はもっと遠くから見えてたッスけど、大きすぎてどれくらい大きいのかわからなかったッス」


『スッゴイね! 見に行こうよ! 面白そう!』


『危険じゃないですか? きっと何か異常なものですよ! もしかしたらその木自体がモンスターなんてことも……』


「ユーリさん、どうしましょう? 迂回することも不可能じゃないと思いますわ」


 この密林は広大だ。わざわざ危なそうな巨木に近づかなくても、迂回して抜けることは可能だろう。

 だが、


「いや、見に行こう。気になることがある」


「気になること?」


 興味があるのも確かだが、別に興味本位で危険に近づこうとしている訳じゃない。

 周囲の木が10メートル程度の中、50メートルもの木は異常だ。何か原因があるはず。

 もしかしたら魔王軍が清風剣ウィンディルを狙って仕掛けた何らかの作戦かもしれない。

 もしそうなら絶対に潰しておかなければならない。違うなら違うで良い。後から、あれが魔王軍の作戦だったんだと後悔することになるよりよほどマシだ。


『なるほど……。それなら確かに確認しておくべきかもしれませんね』


『後悔先に立たず、でございますね。素晴らしい心がけです』


『レッツゴー!』


『……うるさい』


 賑やかな剣たちの声を聞きながら、異常な巨木へ向けて歩き出した。

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