第69話 妖精の暴威
駆け出す。俺が右から、エイミーが左から妖精に接近する。
それに対し妖精は炎を円状に発生させ、俺たちの進路を阻む。
「水弾!」
俺の前に水の玉が飛んできて消火された。そこから妖精に更に接近、剣の距離まで近づく。
そのまま勢いを乗せてフィーを振りぬいた。
「チッ! 身軽な……」
まるで木の葉を斬ろうとして失敗したかのように、ヒラリと避けられた。
振り切った隙は見逃さないと言わんばかりにこちらに魔法を放とうとしてくる。が、
「ふっ!」
その発動前にリィンで突く。これもヒラリと避けられるが、予想できている。
避けられた瞬間突きを止め、そこから薙ぎ払う。
「!?」
捉えた。が、何か膜の様なものに減衰させられた。完全に斬り裂くには至らない。
「せいやぁっ!」
斬られてバランスを崩したところにエイミーが駆け寄り短剣を振るう。
その瞬間、魔法の気配!
「下がれ!」
「マズッ!」
「絶界!」
「!!!!!」
妖精の体から大量の水が溢れ出て、俺とエイミーをまとめて押し流そうとしてくる。
間一髪、結界が俺たちを守ってくれた。水は結界に阻まれ、俺たちの周囲を流れていく。
その水は周囲の建物を根こそぎ押し流していく。危なかった。あんな激流に飲まれたらどうなるかわかったもんじゃない。
「厄介だな。広域魔法が多い。奴はただ自分の周り全てを魔法で薙ぎ払えば良い訳だ」
「でも妖精は魔法を使いすぎると消えるッスよね? ならこのまま魔法を使わせ続ければ勝ちじゃないッスか?」
「それはそうなんだけどな。クラリス、結界は大丈夫か?」
「ええ、無差別広域魔法なら破壊される心配はなさそうですわ」
「だったらもっと強力な結界で奴を閉じ込めればそれだけで勝てるんじゃないか?」
「そうですわね。やってみましょうか」
妖精から水の流出が止まった。俺たちから離れようとしているようだ。
「クラリス!」
「魔封壁・御式塔!!」
妖精を五点が囲い封印する。ドラゴの攻撃にすらある程度耐える結界だ。これで完全に無力化しただろう。
「さて、閉じ込めたは良いがこいつをどうするかな」
「結界を収縮させて押しつぶすこともできますわよ」
「さらっとエグイこと言うッスね……。とはいえこのまま放置する訳にもいかないッスし、処理しちゃった方が良いと思うッス」
「そうだな……。クラリス、やってくれるか」
「わかりましたわ」
クラリスが結界を収縮させ、妖精を押しつぶす。その直前、
「!!!!!!!」
「くっ! ううううぅぅぅぅ!!」
「クラリス!」
「マズイッス! 結界が軋んでるッス!」
妖精から今までとは比較にならない異常な威力の暴風が吹き荒れる。
恐らく妖精を構成している魔力まで使って底上げしている。放っておけば消えるはず。
だがそれより結界が壊れる方が早そうだ。結界が壊れたらあの暴風が開放される。そうしたら俺たちは全員空高く吹き飛ばされるだろう。
どうする……!
「クラリス! 15秒耐えろ! 15秒経ったら結界との繋がりを切れ!!」
「! やってやりますわあぁぁぁ!!」
リィンを鞘に収め、フィーを構える。
見つめるのは一点、結界の中の妖精のみ。
視界がその一点以外の情報をカットする。
力を溜める。全てを貫く一閃で以て、
結界ごと、妖精を消し飛ばす!!
「一輪穿通・空挿花!!!」
その一撃は結界を貫き破壊する。だがそれと同時に妖精を貫く。妖精のその先まで届き、残っていた建物を貫いた。
結界が封じ込めていた風が吹き荒れる。だが、それは余波だ。俺たちを吹き飛ばすほどの威力はない。
「うあぁ……」
相変わらずこの技を使うと目の前が真っ暗になる。思わず座り込む。
「兄さん、大丈夫ッスか?」
「ああ、何とかな……。しばらく休ませてくれ……」
「あの自爆技以外にも御式塔を破壊できる技があるんですのね……。私ももっと研鑽が必要ですわ」
全く、ただの成り行きで思わぬ強敵と戦わされたもんだ。
捕らわれていたという20人の女性は恐らく幻覚だろう。こんなに必死に戦う必要は本来はなかった。
なら何で戦ったのかと言えば逃げられそうにもなかったからだが、その余波で村が滅茶苦茶になってしまったな。
目を開けて辺りを確認して見れば、妖精の魔法で爆破されたり、押し流されたりした建物の残骸がそこかしこに見える。
俺が貫いてしまった建物もあるが、その程度の被害は許して欲しい。
というかそもそも、この村の住人は操られる前から悪人だったはず。申し訳なく思う必要もないか。
「お、終わったのか……?」
「助かった……」
「何が起きたんだ……」
そこらから男共が集まってくる。
まだ座り込んだままだが、状況確認をしておくか。
「お前ら、被害状況は?」
「あ? お前ら確か捕まえろって言わてた連中だよな?」
「捕獲に行った奴らは失敗したってことか?」
そういえば捕まえに来てた奴らは最初に爆破されてたな。
しかたない、状況を説明してやるか。
「と言う訳で、お前らは恐らく妖精に操られてた。幻覚か洗脳かその両方かでな」
「言われてみれば頭が何でリーダーなのか全然記憶にねぇな……」
「おい! 捕まえてた女共がいねぇ!」
「その女共もどうやって捕まえたのか全く覚えてねぇ……」
「で、村の状況は?」
「ここに集まってねぇ連中が全員死んだとするなら……25人くらい死んだな……」
「建物も半分くらい持ってかれてる……」
「マジかよ……。これからどうするか……」
幻覚とはいえ、こいつらは女性を捕らえることには何の疑問も持たなかった連中だ。後の世話までしてやる義理はない。
そろそろ回復してきた。こんな村はさっさと立ち去ろう。
「行こう、エイミー、クラリス」
「はいッス」
「そうですわね……。そもそもこうなったのも私たちのせいではありませんし……。ごきげんようですわ」
もう目的もないし、清風国ウィンドを目指しても良いかもな。そう考え、とりあえずウィンド方面、東へ歩き出す。
「待ってくれ!」
「……何だ」
「一応礼は言っておく! ありがとう!」
「は?」
何に対してだ? 村を滅茶苦茶にしたことか? 幻覚の見すぎで頭がおかしくなったか……。
「妖精を倒してくれただろ! 俺らを解放してくれてありがとう!」
「ああ……。まあ成り行きだ。ありがたく思っているなら少しはまっとうに生きるように心がけるんだな」
今度こそ立ち去る。あいつらが本当に改心したのか、今だけ表面上良い顔をしているのか。
わからんが、できれば前者だったら良いとは思う。
「!」と「?」の後ろにスペースを空ける修正を行いました。「…」を2個ずつ使う修正も完了したと思います。作者はこの作品で初めて真面目に文章を書いているので、色々間違いがあるかもしれません。より面白い作品をお届け出来るように努力はしていますので、温かい目で見ていただけると幸いです。
作者は罵詈雑言以外なら、誤字脱字や意見も素直に受け止められる心の持ち主だと自分では思っています。もし、何か気になるところがあれば、感想をくださいませ、という遠まわしな感想要求でした。




