第68話 悪性の村
何をやっているんだ……? まさかそういう趣味があったのか……? 付き合い方を考えるべきだろうか……。
「そんな愕然とした顔をしないでいただきたいですわ!」
「違うッス! こいつらが襲ってきたッスよ!」
「なんだと……?」
一瞬で意識が切り替わった。こいつら、斬っておくべきか……。
「ちょ、兄さん、怖い怖い! 急に人殺しの目になるのやめて欲しいッス!」
「一応とっちめておきましたわ。反省の色は見えますけど……」
這いつくばる男共を見る。
「へ、へい! この通りでさぁ! 反省してやす!」
「ホントかぁ? 正直こんな連中が反省してますって言っても全く信用できないんだが。放っておいたら別の人を襲うだけなんじゃないのか?」
「兄貴! そりゃあねぇですぜ! この通りでさぁ!!」
更に深く頭を地につける男共。
「誰が兄貴か」
「そうッス! 兄さんの兄妹はあたしだけッス!」
そこじゃない。
「そもそもあなたたちはこの15人で全員ですの?」
「いえ、村にまだ30人ほどいやす。姐さんたちを襲うように指示したリーダーも村にいやすぜ」
「そいつもどうにかしておかないとダメッスね」
「村人は全員があなたたちのような輩ですの?」
「えっ……と……」
急に口ごもる。さては襲って連れ去った女性がいるな?
「こいつらの村、まとめて潰すか……」
「あ、兄貴! どうかお許しを!」
「誰が兄貴か」
合計45人もの男共の相手をさせられ続けているんだ。一刻も早く助け出すべきだろう。
「で、何人だ」
「うっ……。に、20人です……」
「いつから捕らえている」
「1ヶ月前くらいです……」
1ヶ月か。幸いとは言いたくないが、まだ心は生きているか。何年も経っていなくてまだマシだったな。
「こんなところに20人も女性が通りかかることがあるでしょうか……?」
「確かに。おい、その女性たちはどうやって村まで来た」
「へ、へい! 確か……あれ? どうやってきたんだっけ……?」
「ごまかしてんじゃねぇぞ!」
「い、いえ! とんでもない! 本当に覚えがねぇんでさぁ!」
「こんな人通りが少ないところに20人も女性が来たんだぞ? 覚えていないなんてあり得るのか……?」
何かおかしいな。一度行ってみるか。
「エイミーとクラリスはここで」
「一緒に行くッス」「一緒に行きますわ」
「……はいよ。気をつけろよ? 何かおかしい」
「了解ッス!」
「承知していますわ!」
「案内しろ。まずはそのリーダーのところだ」
「へ、へい……」
村に戻る。通り過ぎたときは特におかしい点は見当たらなかったが、少し気をつけて観察するとしよう。
村まで戻ってきた。やはり特におかしいところはなさそうだが……。
「ん? 兄さん、これ何の気配ッスか?」
「何かあるのか?」
「何か魔力の塊っぽいんスけど、ちょっと違うような……」
リィンを抜いてみる。これは……
「何だこれ。今までなかった気配だな」
『……これは多分妖精』
「妖精?」
『……自然の魔力から生み出される生き物。……ほとんど魔力の塊だけど意志があるの』
そんな生き物がいるのか。何か魔法が強そうだな。
『……強力な魔法は使えるけど使わない』
『妖精の体は魔力でできていますからねー。使えるには使えますけど、あまり魔力を使うと消えちゃうんですよ。イタズラ好きで、簡単な魔法で人間にちょっかいかけるのが趣味みたいな種族です』
『昔はたくさんいたよね、妖精。今は知らない人がいるほど少ないんだ』
「エイミー、妖精の気配だってさ。そういう魔力から生まれる種族がいるらしい」
「へぇ。聞いたことないッスね」
「私も初めて聞きましたわ。悪性魔力から生まれるモンスターとは違うのでしょうか」
「簡単な魔法で人間にイタズラするのが趣味らしい」
「ずいぶん嫌な趣味の種族ですわね……」
妖精についてを話して共有しているうちに、リーダーの家に着いた。この家に限らず、この村の建物は簡単な木造の小屋みたいなものばかりだ。
「頭ぁ! 帰りやした!」
「おう、帰ったか! どうだ、あの女共は捕まえたか?」
「いえ……それが……」
小屋にいたのは、薄い水色の髪の大男だ。デカイな……。2メートルは軽く超えていそうだ。こんな人間がいるのか……。
「あ? 何で自由にしたまま連れてきてんだ。ちゃんと縛っとけよ」
「お前がリーダーか?」
「男に用はねぇよ。てめぇら何で男まで連れてきてんだ。殺しとけよ」
「間違いなさそうだな」
リィンを抜く。よし、とりあえず、
「ぶん殴る!!」
徒花・鏡花水月!
「ぶほぁっ!」
2メートル超えの巨体が吹き飛び、そして、
消えた
「は……?」
いや、リィンを抜いた瞬間殴りかかったから理解が遅れたが、今の気配。
こいつ……魔法だ!
「え……? 頭!? な、何が……何が起きた!?」
「今のは魔法でできた幻影か何かだ! お前ら心当たりは!?」
「げ、幻影……? いや、そんなの全く……」
「リーダーは優れた魔法使いだとかないのか!?」
「いや、そもそもリーダーは……リーダーは……? 何であの人がリーダーなんだっけ……?」
そこからか!? まさかこいつら、ずっと何かに操られているのか!?
「兄さん! 妖精の気配が近づいて来るッス!」
「このタイミングで妖精? こいつら妖精に操られているのか?」
「イタズラというレベルを超えている気がしますわね」
近づいていた妖精がこの建物の外で止まった。そして……!
「急いでこの小屋から出ろ!!」
クラリスを抱え、小屋の壁をぶち抜いて脱出。エイミーはついてきている。
脱出と同時、小屋が爆発した。
「ちょ、全力で殺しに来てるッス! イタズラが趣味なんじゃなかったんスか!?」
「わからんが、まずはあの妖精をどうにかしないとな……」
妖精は身長30センチあるかといった小柄な少女の姿をしていた。
俺の目くらいの高さをふよふよ浮遊している。
その背から黒い透明な薄い翅が2対4枚生えている。
髪色は紫。迷宮都市のザグルドのような状態か? この辺りに悪性魔力が湧き出る場所があるのだろうか。
『妖精は体が魔力でできているので悪性魔力の影響を受けやすいんです!』
「悪性魔力の影響を受けるとどうなる?」
『場合によりますけど……あの妖精は明らかに攻撃的になってます!』
「あの妖精、悪性魔力の影響を受けてるッスか?モンスター化したみたいな感じッスかね……」
「なぜ俺らだけ攻撃されるんだ?」
「あの妖精が幻覚を見せて度を超えたイタズラをしていたのだとすれば、私たちはそれを邪魔したことになりますわ。恐らく怒っているのでしょう」
その言が正しいと言っているかのように、妖精が魔法で攻撃してくる。
風の刃が何枚も襲ってきた。
「封」
クラリスが結界を張る。簡単な封印結界で妖精を囲み、魔法が弾かれた。
「そこまで強力な魔法ではありませんわ。このまま封じ込めておけば……」
妖精は結界の中で火の玉や氷針など様々な魔法を放ち結界を壊そうとするが、できないようだ。
これで終わりか。あっさりだったな。そう思ったら、
「!!!」
妖精を中心に風が渦を巻き、暴れ狂う。
そして、クラリスの結界をいとも容易く破壊した。
「妖精は強力な魔法を使わないはずじゃ……」
「存在が消えるかもしれないなんてどうでも良いと言わんばかりですわね……」
「来るぞ!」
俺はリィンとフィーを抜き、構えた。




