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貫き通せ我が騎士道  作者: 神木ユウ
第2章 流水国アクア
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第67話 空色の剣

 右手のフィーを鎧に振り下ろす。それだけで簡単に両断できた。


「ずいぶん柔らかいな。鉄鎧に見えるのに」


『……魔法の気配』


「ああ、なるほど。見た目が鉄鎧なだけでただの魔法なのか」


 そう言っている間にもどんどん鎧が増えていく。そして向かってくる。

 両手を忙しく動かして処理していくが、生物ではないので完全に破壊しないと動きを止めない。フィーで両断したものは消えていくが、リィンで斬ったものはまだ動いて向かってくる。


「これは……短剣は相性が悪いな。リィン、しまうぞ」


『……むぅ』


 鎧の動きは遅い。リィンの感覚強化に頼らなくても問題ないので、フィーを両手持ちして戦うことにする。

 一振り毎に一体潰す。わらわらと湧き出てくる鎧は一向に止まる気配がない。


「このままじゃ押し寄せる鎧でスペースがなくなって押しつぶされそうだな。基点を潰しに行かないと……」


 さっきまで魔力の塊をリィンで感知していた。恐らく鎧が湧き出てくる壁の穴の先だろう。

 フィーで鎧を薙ぎ倒しながら壁に向かって駆け出す。


 そしてたどり着いた。鎧が湧き出てくる出口に駆け込む。

 その先は通路になっていた。鎧が詰まっている通路を、鎧を消し飛ばしながら突き進む。

 この鎧が魔法で助かった。もし実際に存在している鎧だったら、残骸が通路に詰まって進めなくなるところだ。


 通路を抜けた。通路の先は、巨大な部屋になっていた。その部屋には、先ほどの部屋と同様、壁に等間隔で出口が開いている。

 鎧がどんどんその出口に入っていく。先ほどの部屋と繋がっているのだろう。

 そして、その巨大な部屋の中央。圧倒的な存在感を放つそれ。


 そこにいたのは、部屋の天井に頭が擦りそうなほど巨大な、10メートルはありそうなとんでもないサイズの鎧だった。


「なんだこりゃあ……!」


『マスター! 小さい鎧が来てますよ!』


「おっと……」


 多くの鎧は、この部屋からどんどん出て行っているが、こちらを迎撃しにくるものもいるらしい。

 小さい方の鎧は簡単に両断できる。何体来ようと問題にはならないだろう。



  ギ ギ ギ ギ ギ ギ



「やっぱりこいつも動くよなぁ」


 中央の巨大鎧が腕を振り上げている。

 周囲の鎧を吹き飛ばしながら、全力で退避!



 大量の鎧を吹き飛ばし、叩き潰し、その拳は振り下ろされた。



「動きは遅いが、パワーはありそうだ。攻撃範囲も広い。この鎧共が邪魔するせいで、全力で回避せざるを得ないし、思ったより面倒だな……」


『そうですか? あの動きの鈍重さを考えると、後ろに回り込めば全く攻撃されないと思いますけど』


「……なるほど」


 確かに。あの巨大鎧が素早く振り向く姿は想像できない。


「あとはどれだけ硬いか、だな。まずは回り込もう」


 また巨大鎧が腕を振り上げ、振り下ろす。ちょうど良い。この隙に後ろに回るとしよう。

 動きが遅い巨大鎧は、一度拳を振り下ろすとしばらく次の攻撃に移れない。いくらでも自由に行動できる。

 小さい鎧を斬り飛ばし、後ろに回り込む。


「ん? 何だあれ?」


『スイッチ……ですかね……?』


 巨大鎧の背中にスイッチがある。押してくださいと言わんばかりだ。

 背中まで上らないと押せないし、まずはとりあえず目の前の足を斬ってみるか。

 本当は溜めたいところだが、流石にこの鎧がわらわらいるところで溜めている余裕はない。


「はぁっ!!」


 そのまま全力で斬る。切れ込みは入った。全く同じ箇所を何度か斬れば、足を落とすこともできそうだ。


「おっと」


 流石にそのまま斬られていてはくれないらしい。足を上げて踏み潰そうとしてくる。

 その動きも鈍重、回避は容易い。鎧たちだけが踏み潰される。

 ただ、いくら鎧を減らしてもどんどん追加されてしまう。追加しているのはやはり目の前の巨大鎧。巨大鎧の中からポロポロと新しく生まれた鎧が落ちてくる。


「この巨大鎧の中に魔法の基点があると思うんだよな。やっぱりあのスイッチ押してみるか」


『どうやって上ります?』


「跳ぶ」


『ええ……?』


 リィンを抜く。やったことはないが、やれないことはないはずだ。


 鎧の背後に回り込み、足に力をこめる。



「徒花・鏡花水月!」



 上に向かって跳びだした。

 流石に地を走るほどの速度は出ないが、それでもかなり跳び上がることができた。

 具体的には、7メートルくらい上にある鎧の肩に乗った。明らかに跳び過ぎだ。


「こんなに跳べるのか……」


『ええ……。本当に跳べちゃいましたよ……』


『……鎧の中にある』


 リィンを抜いてわかったが、やはり鎧の中に魔法の基点がある。

 だがこの鎧、中に入ることが出来ないようだ。魔法の基点を守る魔法ってことなんだろうな。


 跳び下りる。落ちていく視界の中でも、リィンのお陰でスイッチがはっきり見えた。


「よっ」


 落ちながら、リィンでスイッチを突く。そして着地。


 周囲の鎧が動きを止めている。巨大鎧も含めて、全てだ。

 そして、鎧たちが消えていく。全ての鎧が光に包まれて消えていった。


「スイッチがわざわざ用意されているあたり、いかにも試験って感じだな」


『ここまでの部屋も含めて、資格があるのか見定めてやろうって感じがにじみ出てましたね』


 元の部屋に戻ろう。先に進む扉が開いているはずだ。





 やはり扉が開いていた。これで最後だと良いんだが。

 扉を通ると、また部屋に出た。

 目の前に階段がある。それを上ったところに台座があるのが見えた。

 リィンの時と同じだ。階段を駆け上がる。



 そこにあったのは、台座に突き立った一本の剣だった。



 白銀の剣身の中央に走る血抜き溝が空色に塗られ、柄頭に空色に輝く宝石がはめられている。



 隣に立てかけられている鞘も空色。全体的に爽やかな印象を受ける。



 長さはフィーと同じくらい。片手で振れる長さの直剣だ。



 両刃のその剣身がキラリと光り、俺を歓迎してくれているようだ。



 手を伸ばす。グリップを握り、台座から引き抜いた。


「おおお、良いな……。爽やかな心地よさすら覚える……」


『初めまして! あたしは適応剣ヴァイラデント! よろしくね!』


 聞こえてきたのはとても明るい少女の声。ウキウキしたその声音は、こちらの気分まで盛り上げてくれそうな楽しさに満ちていた。


「俺はユーリだ、よろしくな!」


『うんうん、よろしくね!ご主人!』


「ヴァイラデント。ヴィラって呼んでも良いか?」


『オッケー! 自由に呼んで!』


「ヴィラはどんなことができるんだ?」


『ご主人をあらゆる環境に適応できるようにしてあげる! どんなに暑い場所でもどんなに寒い場所でも全然平気だよ!』


「ほう……。雪山に上ったときに欲しかったな……」


 まあこれからキツイ環境に苦しまなくて済むんだ。充分ありがたいな。


『わたしは収納剣フィニスレージ。フィーと呼んでください』


『……感覚剣リィンセスフォーン。……リィン』


『居合刀・暗夜月光(あんやのげっこう)でございます。アンとお呼びくださいませ』


『わお! いっぱいいるね! 楽しくなりそう!』


 さて、装備はどうしようか。とりあえず左腰のフィーを体内に格納してヴィラを差しておくか。リィンは今まで通り腰の後ろだ。


『ええー、交代ですか? どっちも似たような直剣なんですから使い慣れたわたしにしましょうよー』


「いや、環境適応の方が咄嗟に使いたい場合があるかと思って。咄嗟にフィーから何かを取り出したいことってあまりないしな」


『あたしの能力で適応できるのは1度に1種類だけだけど、効果は永続だよ! そんなに慌てなくても大丈夫!』


「え? 永続……? それって例えば、俺を暑さに適応させて、仲間に貸して、仲間も暑さに適応させてって全員が適応可能ってことか?」


『そういうこと! スゴイでしょ!!』


「ああ……。それはかなりスゴイな……」


 マジで凄い。今後一切環境を恐れる必要がなくなったと言って良い。旅をするにあたり、これほど頼りになる能力もそうない。


『じゃあじゃあ、腰に差しておくのはわたしでも良いですよね? ね?』


「まあそうだな。使い慣れているのはその通りだし、とりあえずは今まで通りで行くか。どこかで剣帯を買って右腰にヴィラを差そう。直剣2本使いたいこともあるだろうしな」


 リィンの能力が欲しいから基本的には直剣、短剣で戦ってきたが、俺的には両手に直剣の方が戦いやすい。

 リィンの能力が必要ない時って相手がそんなに強くない時だから、両手に直剣なんて使うことがあるのか? という疑問はあるが。


「さて、じゃあ戻るか」


 エイミーとクラリスが待っている。色々な試験を受けさせられたせいで結構時間がかかってしまった。待ちくたびれてなければ良いが。






 遺跡を出ようとしたら、道がないことに気がついた。そういえば割れた海は俺が通ったら元に戻ってしまったんだった。

 海は大荒れだ。泳いでいくことは出来ない。どうするか……。

 と思っていたら、また結界が道を作ってくれた。配慮が行き届いているな。たくさん試験を作っていたし、この遺跡を造った人はきっと物事を良く考えられる人だったんだろう。

 新たにできた道を通って、海を割った岩場に戻る。


 そこで俺を待っていたのは、



 這いつくばって頭を下げる男共と、それを見下ろすエイミーとクラリスの姿だった。

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