第66話 海底の遺跡
海が割れてできた道を進む。進むにつれて、周囲の海が荒れ始めた。
どうやら陸から離れると荒れてくるらしい。物凄い荒れ様で、とても人間が渡れるような状態ではなさそうだ。
道は少しずつ下っていく。どうやら海の深いところに目的地はあるらしい。
そしてたどり着いたのは、海底に建つ遺跡だ。
砂漠の遺跡を思い出すな。扉の横にスイッチがあることまでそっくりだ。
「リィンの遺跡を造ったのと同じ人物が造った遺跡か?」
『どうですかね。そんなに特殊な形状じゃないですし、偶然似ることもありそうですけど』
『……少なくともわたしは知らない』
「まあ良いか。進もう」
中に入ると、リィンの遺跡とは全く違う。
リィンの遺跡は一本道だったが、この遺跡はいくつかの部屋に分かれているようだ。
迷っても仕方がない。とりあえず目についた部屋に入ってみる。
「これは……何だ……?」
部屋には何もないように見える。が、そう見えるだけで何かいる。気配を感じる。
近寄ってきて何かしようとしているので、とりあえず離れる。
「今、剣を振り下ろしたか?」
『……うん』
『敵です! やっちゃってください!』
見えない何かをフィーで斬る。疲労した腕での軽い斬撃なのにもかかわらず、避けられる気配もなく簡単に斬ることができた。
「何なんだ……?」
訳がわからない。何かテストでもしているのか?
『奥への道が開きましたよ!』
閉まっていた扉が開いている。合格ってことか?
「まあ……進むか……」
奥へ進む。するとまたいくつかの部屋に分かれている。
「どの部屋が正解とかあったら嫌だな……」
『ヒントも何もないですからねぇ』
特に理由もなく、1つの部屋に入ってみる。
その部屋は、中央に巨大な石像が置いてあった。
「今度はどうすれば良いんだ?」
その石像以外は何もない。石像に近づいてみる。
「うーん……。動き出したりもしないみたいだな」
『……斬る?』
『フィーさんに収納してみるのはいかがでしょう?』
『戻って別の部屋に行ってみませんか?』
「収納か。面白いな。やってみようか」
石像をフィーに収納してみる。あっさり収納することができた。
「部屋と一体化はしていなかったようだな」
奥の扉が開いた。これで合格らしい。
『石像を収納するのがクリア条件ですか?』
『……それだとフィーがいないとクリア不可能になる』
「多分斬ってもクリアだったんじゃないか? わからんが、石像をどうにかすれば良いんだと思う」
考えても答えは教えてもらえない。何でも良いだろう、先に進もう。
「で、またこれか」
いくつもの部屋に分かれている。ひたすら条件をクリアしていけば良いのか? あと何回やれば良いのやら。
何となくで1つの部屋に入る。
「あれを破壊するのか? なかなかキツイぞ……」
部屋に入って目についたのは、部屋を縦横無尽に高速で飛びまわる小さな球体だった。
その速度は目で追うのがやっとというほど。とても普通に追いかけてどうにかできる速度じゃない。
「鏡花水月で追いつけるか?」
『動きが完全にランダムに見えます。球体の行き先にこちらの移動がぴったり合えば追いつけると思いますけど……』
「……一度戻るか」
引き返す。そして別の部屋に入ってみる。
「スイッチが2つ……。どちらかが当たりか?」
部屋の左の壁と右の壁に1つずつスイッチがある。試しに1つ押してみるが何も起きない。
『まあ同時に押すんでしょうね』
『……無理』
「誰か一緒に来られれば行けたのにな」
『私を使えばどなたでも来ることが可能でございますよ』
「それは代償がヤバイだろうが……」
こいつは性格が悪い訳じゃないのにとにかく居合斬りさせようとしてくるからなぁ。
理想の居合のためならどんな犠牲も許容されるって考えが根幹にあるせいで、その一点だけは話が合わないんだよな。
『居合狂は置いておいて戻りませんか?』
「ああ、そうだな」
また引き返し、別の扉に入ってみる。
「!!」
部屋に入った瞬間、水中に放り出された。いや、この部屋自体が水で満たされているんだ。
そして水中を泳ぐ魚が3匹。一斉に襲い掛かってくる。
少しなら技も使えるくらいには回復してきたかな。大技はキツイが、これくらいなら……!
(花吹雪・三分裂き!)
右手のフィーで斬る。水中であるせいで勢いが乗らない。何とか軽く傷をつけて追い払ったが、部屋を泳ぎ回って再び襲い掛かってくる。
(どうするか……)
両手のフィーとリィンで魚を牽制しながら打開策を考える。
ここは出し惜しみせず、使っていくか。
懐から大きい石を取り出す。手のひらほどの大きさがある蒼く透き通る石。雪山でノールさんにもらった石だ。
これには10回分もの魔法を込めることが可能で、クラリスの結界を10回分込めてもらっている。
(絶界)
俺の周囲に結界が張られる。魚は結界を破ることが出来るほどの力はないようだ。
結界の中で集中。結界に攻撃を加えている魚に狙いを定め、
(生花・一輪刺し!)
結界の中から貫く。
俺にはよくわからないが、結界に条件付けすることが可能らしくて、中からは通すけど外からは通さないという設定にできるらしい。この石に込めてあるのは10回ともそういう設定にしてもらっている。
ただ、こうやって結界の中から剣を出すと、引き戻すことが出来なくなってしまうので注意が必要だ。今回は魚を1匹仕留めたら結界を消すつもりだったので関係ないが。
結界を3回分使って、3匹の魚を仕留めた。すると奥の扉が開いた。クリアしたようだ。
部屋を出ると水中から開放される。
「ぷはぁっ! なかなかの強敵だったな」
『水中ではなかなか斬れないですからねぇ』
今思えば、海を割ったときの結界、あれも条件付けなんだろうな。海を割るほどの剣を持つ人間は通す、他は通さないって感じか。
更に遺跡の奥へと進んでいく。
「で、また部屋を選ぶ訳だが」
『いい加減にして欲しいですね……』
入った部屋にあったのはゴーレムだ。見覚えがある。
「リィンの遺跡で番人をしてたゴーレムと同じに見えるな」
『高速の突進に注意ですよ!』
動き出すゴーレム。そして突進してくる。
しばらく回避に専念していると、急加速して突進してくる。
「ここだな」
ゴーレムの背に向けて、上段に構えて力を溜める。
5秒、振り向いて叩き潰そうとしてくるゴーレムに向かって振り抜く。
「大輪牡丹!」
両断。結果はあのときと同じだ。
奥の扉が開いた。先に進もう。
「お、ついに違う展開が来たぞ」
とても広い部屋に出た。奥にはやはり閉まっている扉が見える。
『何もありませんね?』
『……気配も感じない』
「まさか戻って全ての部屋をクリアして来いとか言わないよな……?」
その考えを否定するように、その広い部屋の壁が等間隔にいくつも開いていく。
その開いたところから、わらわらと鎧が入ってきた。
一箇所毎に何体も入ってくる。その侵入は全く治まる様子がない。
「何体来るんだ……!?」
『マスター! 早く片づけていかないと部屋が埋め尽くされます!』
「お、おお!」
俺はその鎧を片づけるべく、斬りかかった。




