表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
貫き通せ我が騎士道  作者: 神木ユウ
第2章 流水国アクア
67/208

第65話 開海

「ここから北に向かう」


「北ッスか?」


「ああ。聖女様にもらった本によると、北の海に剣がある可能性がある」


「海って……。確か海はどこも大荒れで超危険地帯だって聞いたことあるッスけど……」


「俺も聞いたことはあるが、実際に海を見たことはないからな。とりあえず行ってみないことには何とも言いがたい」


「それってもしかして海割りの伝説ですの?」


「お、知ってるのか」


「聞いたことがあるくらいですわ。詳しくはあまり……」




 海割りの伝説。流水国アクアに伝わる剣の話だ。

 ある男が死ぬ前に、自分の剣の腕がどれほどであるのかを証明するために海に向かって剣を振るい、海を割った。

 そして自身の剣を割れた海に封印し、言い残した。


「俺と同等以上の剣の腕を持つものに、俺の愛剣を継承する」


 つまり、海を割って剣を手にできた者を所有者にすると言ったのだ。

 当然海を割るほどの剣の腕を持つ者はそういない。誰も入手できなかった。


 ある日、ついに海を割ることに成功した者が現れた。

 その者は意気揚々と剣を取りに向かい、


 そして、何も持たずに帰ってきた。


 なぜ剣を取って来なかった? 口々に尋ねる人々に対し、その者は、


「取ることができなかった。海を割るだけでは不足だったのだ」


 そう言い残し、去って行った。


 それから誰も海を割ることはできず、今でもその剣は海中にて担い手を待っている。




「この剣があるというのが、大陸の北端、つまりここから北に向かったところの海だって話だ」


「兄さんなら海くらい割れそうッスね」


「確かに。あっさり入手できるかもしれませんわね」


「海を割るだけでは不足だって言っただろ? 海が割れるかもわからんが、一体何が必要なのか。行ってみないとわからないな」


 まずはアクア北端の村に向かおう。首都から10日ほど北に行けばあるはずだ。






 道中、それぞれの出来ることを再確認したり、クラリスの想いを聞いたりしながら進むこと10日。村が見えてきた。


「寂れてるなー」


「アクアは基本的に首都のみで全てが動いていますわ。首都以外で生活しているのは、モンスターの領域の近くに常駐して見張るための街か、追い出されたはみ出し者が集まった村かくらいですわね」


「つまりこの村ははみ出し者の集まった村ってことッスか? 治安悪そうッスね……」


「この村がどういう人が集まってできたのかによりますわね。犯罪者が追い出されたのか、罪を犯した訳ではなくとも首都にいづらくなったのか」


「どちらにしてもあまり長居するべきじゃないな。ここに宿を取ろうかと思ったが、さっさと目的を果たしに行くか」


 村を素通りして更に北上、海岸に出る。


「お……? 聞こえるな」


『元気ですねー』


『……仲良く出来なさそう』


(そんなにか?)


『わたしはそこまでですけどね。リィンは静かですから』


『新たな仲間でございますね。喜ばしいことです』


『本当にそう思ってます……?』


『? ええ、もちろん。主様もとても喜んでおいでではありませんか』


『そ、そうですか……』


 まあフィーの気持ちもわからなくはないが、アンは別に性格が悪い訳じゃない。これは素直な気持ちだと思って良いだろう。


「えーと……。北端の海岸から異様に飛び出したその岩場。海岸から20メートルも突き出したその岩場にて剣を振り下ろし海を割った、か」


 周囲を見渡してみる。この辺りの海岸は全体的に岩場で、どこもゴツゴツしている。確かに波はあるが、そこまで荒れているようには見えない。泳ぐことさえ可能に見える。


「あ、あれじゃないッスか?」


「ん? おお、本当にあそこだけ異様に突き出しているな。行ってみよう」


 本に書いてある通りの突き出した岩場だ。20メートルもあるかはわからないが、恐らくここのことだろう。


「さて、まずは普通に振ってみるか。すぅ……ふっ!」


 フィーを両手持ちして、全力で振り下ろす。やや海面が波打ったが、それだけだ。


「流石にな」


「それで海が割れるんだったら、もう誰かが持って行ってそうッスね」


「やはり15秒溜めないとだな」


「15秒溜めるとしばらく剣が振れなくなるのですわよね? 海を割った先にも何かあるらしいですし、ちょっと怖いですわね……」


『私の出番ですか?』


『すっこんでてください!』


(流石に腕を折りたくはないな……。まあ15秒で良いだろ)


 フィーを上段に構える。そのまま力を溜める。



「堅牢壊花・大輪牡丹!!」



 振り抜く。何も斬らずに振り下ろしたその一撃は、全てが衝撃となって拡散する。


 岩場が崩れた。周辺の海が荒れ、驚いた魚が飛び出している。



 そして、目の前の海が割れた。



 真っ直ぐに、目の前で割れた海が道を作っている。


「これは……おかしいな。こんなにキレイに真っ直ぐ衝撃を飛ばせるほどコントロールは利かないはずだが……」


「結界が張られていますわ。道を形作るように海が結界で割られています」


「え、どういうことッスか?」


「そういう仕掛けがあったってことだろうな。一定の剣技なのか威力なのかはわからんが、それを感知すると海が割れる」


 海が割れてできた道に足を踏み入れる。なかなか遠くまで割れているな。


「ひゃっ!」「きゃっ!」


 後ろから悲鳴が聞こえたので振り返ってみると、エイミーとクラリスがしりもちをついている。


「どうした?」


「道に足を踏み出そうとしたら弾かれたッス」


「結界が阻んで通れないようになっているようですわ。海を割った本人しか行けないみたいですわね」


「そうなのか。なら1人で行ってくる。2人は待っていてくれ。ここでも良いし、村に行っても良いからな」


「ここで待ってるッスよ」


「私も待っていますわ」


「じゃあ行ってくる」


 道を進んでいくと、背後で割れていた海が戻っていく。どうやら帰り道がなくなってしまったらしい。

 どうやって帰れば良いんだろうか。仕方がないので進むが。








「海が戻って行くッス」


「ユーリさん帰ってこられるのかしら……」


 兄さんが通った後、海が戻っていく。流石に別の道があるんだと信じたい。


「さて、流石に何もせず待ってるのは暇ッスし、釣りでもするッスかね」


「え? 海に来たことがないのに釣りができるんですの? というか釣竿なんて持ってますの?」


「やったことはないッス。聞いたことがあるんで試しにやってみようかと。釣竿はあるッスよ。ガイアの王都で買ったッス」


「なぜ……?」


 押し売りされて思わず買ってしまった、とは言いづらい。何て返そうか……。



「お、いたいた。おい! お前ら、こっちだ!」



「ん?」「へ?」


 何やら男たちがわらわらと集まってくる。


「へっへっへっ。お嬢ちゃんたち、大人しくしててくれよ」


「ヒョー! 上玉だぜ!」


「2人ともまだガキだが、こっちの嬢ちゃんは良い体してるぜ」


「え、俺はこっちの子が可愛いと思うな……。ふへへへ……」


 ざっと15人といったところか。会話を聞く限り、どうやらあたしたちの体目当ての悪党共らしい。


「ずいぶんわかりやすい輩ッスね……」


「品がないですわ。顔と話し方と歩き方と性格と体型を改善してから出直してきてくださる?」


 あたしはこんな連中いくらでも見てきたから怯えたりすることはないけれど、クラリスはなぜこんなに落ち着いているのだろうか。

 まあ、ビビッておたおたしているクラリスなんて想像できないのは確かだけれど。


「それは良いところがないってことッスよね?」


「当たり前ですわ。このような輩に良いところなどあるはずがありませんわ」


「わかるッス。兄さんのカッコ良さの10分の1もないッス。あ、こんなやつらと兄さんを比べてしまったッス……。謝りたい……」


「おいおいおいおい! 言いたい放題言ってくれるじゃねぇか……! 一緒にいた男はいねぇみたいだし、今のうちに謝った方が良いぜ?」


「ああ、なるほど。わかりましたわ。あなたたち、村の住人ですわね。村を通った私たちを見て獲物が来たと思い込んでいる哀れな輩ですわ」


「ご名答。頭がよろしいようで何よりだぜ、お嬢様? 謝る気になったかよ。この後村まで連れてって、村中の男共の相手してもらうんだ。少しは良い印象を与えておいた方が良いと思うぜ?」




「お前らみたいな雑魚、兄さんがいなくても余裕だって言ってるッス。わからないッスか?」




「実力差が理解できない残念な頭のようですわね。その髪色からして魔力は乏しい。その体つきからしてほとんど鍛えていない。その立ち振る舞いからして技術もない。何一つ負ける要素がないですわ」




 相手が強敵1人のとき、もしくは相手がたくさんでも自分の方が明確に強い場合、煽る。

 強敵1人なら煽って冷静さをなくさせた方が良い。強敵たくさんの場合は逃げるべき。

 自分の方が明確に強いなら相手を怒らせて単調な突撃しかしないようにする。そうすればただのカモ。

 実践したのは初めてだけど、迷宮にいた頃にそんな話を聞いたことがあった。


 目の前の明らかに頭に血が上っている連中の様子を見るに、嘘ではなさそうだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ