第61話 閑話:クラリスの両親
閑話4話一気に投稿します。まずは1話目。
旅立つ前に家に寄りたい。そう言われて、クラリスの家に来た。
考えてみれば当たり前のこと。勝手に娘を旅に連れて行く訳にもいかないし、事情の説明は必要だろう。
「ただいま帰りましたわ」
「クラリス? どうしたの、急に。あら、お客様?」
出迎えてくれたのは水色の髪の30歳ほどに見える女性。恐らく母親だと思うが、若いな。
「お父様はいらっしゃいますか?」
「まだ仕事に出てるけど……」
「ユーリさん、エイミーさん、すいませんが、父が帰るまで待ってくださいますか?」
「ああ、大丈夫だ」
「問題ないッスよ」
直接話した方が良いだろうしな。別に急いでいる訳でもない。のんびり待たせてもらおう。
「クラリス、こちらの方たちは?」
「ガイアの英雄ですわ。そしてこの国のために戦ってくれた恩人でもあります」
「ああ、じゃあこの方がユーリさんなのね。神殿発行の新聞に書いてあったわ」
新聞に載ったのか。どんな書き方がされていたのか少し気になるな……。
「娘がお世話になってます。わたし、母のエリスです。よろしくお願いしますね」
「ユーリです。こっちは妹のエイミー。こちらこそよろしくお願いします」
「よろしくッス」
「それで? どうしてこの人たちを連れてきたの?」
「お父様にも一緒に話したいんですけど……」
「良いじゃない、聞かせてよ。何か頼みごとならわたしも一緒にお父さんに頼んであげるから」
とてもクラリスの母親とは思えないフランクな人だな。この家も特別大きい訳でもないし。
そういえばこの国は家名を名乗る人がいない。聖女も世襲ではないし、貴族とかいないのか。
「とりあえず上がってくださいまし」
「あら、ごめんなさいね、玄関で。どうぞ上がってください」
リビングと思われる部屋に通される。椅子に座ると、お茶を出された。
「ありがとうございます。いただきます」
「で? で?」
「もう、わかりましたから落ち着いてくださいな」
事情を説明、クラリスが旅に出たいということを伝えた。
「旅に、ねぇ……。大丈夫なの?」
「娘さんはとても強い子ですから、心配はいらないと思いますよ。わたしも全力で守らせていただきます」
「ああ、いえ。そういうことではなくてですね……。この子、生活能力が皆無なものですから……」
「お母様!?」
生活能力? それは
「料理や洗濯といったことでしょうか?」
「ええ。この子今まで料理も洗濯も掃除も、体を洗うことすらほとんど自分でやったことがないものですから」
「お母様ーー!!??」
それはまた……。なかなか筋金入りだな……。
「エイミー」
「仕方ないッスねぇ。できるだけ教えるッスよ」
「うう……お願いします……」
料理はともかく洗濯は俺がやらない方が良いだろうし、体を洗うなんてできる訳もない。エイミーに丸投げするしかないな……。
「良かったわねぇ、クラリス。優しい方で」
「お母様は優しくないですわ……」
「何言ってるのよ。あなたが自分じゃお願いできないかなーっと思って代わりに頼んであげてるんじゃない」
「それはどうもありがとうございますわ!!」
半ギレで叫ぶクラリス。黙っててもそのうちわかることだし母親の言うことも間違ってないぞ。
「でもこの話をお父さんにもするのよね? うーん、認めてくれるかしら?」
「え、お父様は反対しそうですか?」
「だって男の人と一緒に旅だなんて……。絶対反対するわよ、あの人」
「大丈夫ッス。別にクラリスは嫁に来る訳じゃないッスからね」
「も、もちろんですわ! 嫁だなんてそんな……そういうのはまだちょっと早いといいますか……」
「まだじゃなくて一生来なくて良いッスよ」
「ほほぅ? ブラコンもほどほどにしておきませんと、お兄様も気を使いますわよ?」
「ウチの兄妹関係は特別なんでそういうのはないッス。大丈夫ッスよ」
「特別?」
「ま、簡単に言えば本当の兄妹じゃないってことッス」
「エイミー、その辺の話は初対面ですることじゃなくないか?」
「いえ、ぜひ聞かせていただきたいですわ! お父様が帰ってくるまでまだ時間がありますし、詳しく!」
「いや、お前じゃなくて……」
「わたしも聞きたいわー。もしかしたら将来息子になるかもしれないし?」
「ならないッスよ」
まあ、別に隠すことでもないし、良いか。
これまでの旅について、一通り語る。ガイアでの事件についてクラリスにも詳しく話しておくべきなのは確かだろうしな。
「苦労してきたのですわね……」
「スゴイのねぇ。まだ若いのに」
「そういう訳で、剣を探しながら、魔王軍とも戦いながら、旅してるって訳だな」
思ったより時間がかかった。そろそろ父親も帰ってくるんじゃないか?
「ただいま」
「あ、帰ってきたわね」
「お客さんか?」
「ええ、こちらユーリさんとエイミーさん。ほら、今朝新聞に載ってたでしょ?」
「おお、この国の恩人って人たちか。どうも、ラングです」
やはり30歳ほどに見える男性だ。髪は水色。
「何でそんな人たちがウチに? クラリスも帰ってきてるし」
「私からお話しますわ」
母親にしたのと同様の説明をするクラリス。
「旅ぃ? お前がか? いや絶対無理だろ……」
「生活の仕方は教えてもらいますわ!」
「うーん、どこの馬の骨とも知れねぇ、とは言えないが、男と一緒に旅なぁ……」
思ったより反対されないな。俺の肩書きのお陰で一応の信用はあるみたいだ。
「ユーリさんは無理矢理何かしてくるような方ではありませんわ! 大丈夫です!」
「ま、それはそうッスね。もしそんなことする人ならあたしもとっくに手を出されてるはずッス」
「え……いや、エイミーさんはまだ小さいのですからそうとも言い切れないのでは……?」
「同意してあげてるのに何てこと言うッスか!? あたしは15ッス!!」
「え!?」
「親子そろってビックリしてんじゃないッス!!」
「ちなみに俺は17」
「思ったより若い……」
3人声を揃えてまったく同じ反応をされる。親子だなぁ。息ぴったりだ。
「え、というかエイミーさん年上ですか!? 私14ですわよ!?」
「そっちは年齢の割りに発育が良いようでなによりッスね……!」
たしかに、クラリスは14にしてはなかなか発育が良い。
「どこ見てますの……」
「ああ、悪い……」
「きぃー! 胸なんて飾りッス! あたしだってきっとまだ大きくなるッスー!」
物凄い勢いで話が脱線していく。ここらで一度戻そう。
「こほん。話を戻しましょう。クラリスの旅についてですが」
「あ、ああ。俺としては反対したい。したいんだが……」
そこでラングさんはちらっとクラリスを見る。
「この子がこんなやる気に満ちているのも初めて見るんだよな。気持ちでは反対したいが、親として背中を押してあげたくもある……。ぐぬぬぬ……」
「良いじゃないの。言うとおり、この子がこんなにやる気で自分から頼んでくることなんてなかなかないのよ?」
「お願いしますわ、お父様……!」
「うむむむむ……。わかった! 行ってこい。ただし! 必ず無事に帰ってくること! わかったな!」
「はい! ありがとうございます、お父様!」
「ユーリ君。娘を頼む」
「はい。必ず守ります」
良い両親だ。クラリスがまっすぐ育つのも良くわかる。
必ずこの家に無事にクラリスを帰さないといけない。また守るものが増えたな。
それで良い。守るべきもののためにこそ、強くなれる。
「ユーリさん、エイミーさん。これからよろしくお願いいたしますわ!」
「ああ、よろしく」
「よろしくッス!」




