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貫き通せ我が騎士道  作者: 神木ユウ
第2章 流水国アクア
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第50話 行く手を阻む城

 目の前で床に空いた穴が閉じた。そこに穴があったことさえわからないほどピッタリと。


「くっ!」


 穴が開いていた場所にフィーを振り下ろす。だが、弾かれた。何かに防御されているかのように通りが悪い。


 俺のせいだ。危険なことはわかっていた。それなのに軽く考えていた。

 なぜエイミーだけが狙われた? 下の階への階段を探さなくては。

 ここの穴をどうにかしてこじ開けられないか? 技を使えば……。

 思考がまとまらない。




 また俺は、自分のせいで、家族を殺すのか……?




 両親の姿が思い出される。俺を宝物だと言ってくれた、厳しい環境で俺を育ててくれた、優しい両親。

 俺のせいで死んだ。俺が黒髪でさえなければ両親もずっと幸せに暮らせていたのに。



 そして今度は、ただの油断で、俺は家族を殺したんだ……。



 目の前が真っ暗になっていく。俺は何をしているんだ。何のために鍛えてきたんだ。

 何も、意味なんて……。




『マスター!!』




「っっっ!!!」


 頭に響く声で意識を取り戻す。


『マスター! しっかりしてください! エイミーちゃんの気配は感じ取れているはずです!』


『……多分、地下1階』


『死んでいません! ちゃんと生きている! 助けるために行動しなきゃ、それこそ無意味です!!』


「……ああ。そうだ。できることをやらなくちゃ」


 言われてやっと気づいた。エイミーの気配はしっかり感じる。まだ、助けることができる。

 ただ2階分落ちて行っただけで命に関わるほどエイミーはやわじゃない。どうも思考が悪い方へ流される。この場に溜まる悪性魔力の影響だろうか。


「まずは下に向かう階段を探そう」


『はい!』


 入ってきた扉を振り返る。

 消えている。扉がない。


「これは……どういうことだ……?」


『相手は床に穴を開けてエイミーちゃんを連れ去っていきました。もしかしたら、城そのものを自由に操れるのかも……』


「それだとどうやっても下に行けないことになる。やはりこの床をぶち抜くしかないか……」


 さっき斬りつけたとき、全く傷が付いていなかった。この床を抜こうと思ったら、恐らく15秒完全に溜めきった大輪牡丹でないと駄目だ。


『それをやると少しの間剣を振れなくなっちゃいますけど……』


 繚乱落花や空挿花ほどではないが、完全に溜めきるとやはり負担がかかる。


「でもやるしかないだろ」


『……待って。……気配は地下1階。……ここは2階』


「そうか。2回床を抜かないといけないのか……」


『短時間に完全に溜めた大輪牡丹を2回も使ったら、その日は本当に剣を握ることすらできなくなっちゃいますよ!』


 一度なら少し時間が経てば剣が振れる程度には回復するが、二度目はかなりキツイ。

 エイミーを連れ去った何者かと戦わないといけない。剣を振れなくなるのは望ましくない。


「仕方ない、床を抜くのは最終手段だ。どこかに下りられる場所はないか探すぞ」


 廊下を駆け出す。どこかに下りられる階段があるはずだ。そう信じて駆け抜ける。




 5分ほど走り続けると、流石に異常に気が付く。


「この廊下……どこまで続いてるんだ……?」


『さっきから同じ景色ばかりなのでわかりにくいですが、恐らく延びています』


「クソッ! 進んですらいないってのか!」


『……進んではいる。……気配でわかる』


「……そうか、多少進んではいる。恐らく廊下を延ばすのにも限界があるんだ」


 だったら、


「どこまでだって駆け抜ける!!」


 走り出す。全力で駆け抜ける。俺の全力疾走は5時間続く。流石にそんなに時間はかけたくないが、どこまで延びるかわからない以上、それなりの時間は覚悟すべきだろうな。




 1時間走り続けて、ようやく景色が変わった。変わったと言っても、目的の下り階段を見つけた訳じゃない。

 むしろ逆。上り階段を見つけた。


「どうするか……」


『上る意味はないですよ?』


「いや、そうとも限らない」


『どういう意味ですか?』


「この城を操る何者かは俺を下に行かせたくないと思っているはずだ。逆に言えば上には行っても良いと思っているはず」


『……上の剣を取りに行く?』


「それもありかもな。要するに上に打開策を求めるってことだ。その剣の能力が役に立つかもしれないし、回り道があるかもしれない」


『なるほど……。もしかしたらこの先に下り階段がない可能性もありますし、良いかもしれないですね!』


「行くか」


 階段を上る。外から見た限り、この城は5階まである。どこかに回り道があると良いんだが。




 上階に入ると、パッと見廊下は普通だった。どこまでも続いていたりしない。振り返るとちゃんと下への階段がある。


「ここで、下への階段を消さないのか? 城を自由に操れるならこれ幸いとばかりに消してくるかと思ったが」


『階段は消せないのか、もしくは人が操っている訳ではないのかもしれないですね』


「明らかにエイミーを狙い撃ちしてきたんだから、だれか操作しているもんかと思ったんだが」


『……ここは悪性魔力の城』


「そうか。ここの悪性魔力は恐らく現状維持する性質があるはず。現状を打破する可能性がある人間を悪性魔力が湧き出る地下に行かせたくないのか」


『地下に行かせないだけで、こちらの動きに柔軟に対応してきたりはしないのかもしれないですね』


「なぜエイミーを地下に迎え入れたのかがわからないが……」


『それは今は良いじゃないですか。ほら、もう上への階段がありましたよ』


「そうだな。上に行くか」




 4階に上がってすぐ、更に上がる階段を発見。上に向かう。

 5階、恐らく最上階。廊下には特に変化はないが、剣の気配を強く感じる。近いな。


「そういえばこの城内にモンスターがいないのはどういうことなんだろう」


『確かに……。わからないことだらけですねぇ』


 1つの部屋の前にたどり着く。ここだな。

 部屋に入ると、目の前に階段。上っていく。その階段を上りきったところに、それはあった。



 剣置きに横にして飾られているのは、とても細く薄い剣だ。



 特徴的な波打つ模様が入った反りのある剣身は、限りなく鋭く、銀に輝いている。



 銀色の丸い鍔。握りやすいように黒い紐が巻かれたグリップ。紐の奥には木の白が見え、柄頭は鍔に合わせた銀。



 隣に飾られた鞘は黒く輝いている。



 それは惹きこまれるような妖しい美しさを持つ、鋭い剣だった。



 手に取ってみる。


『うふふふ……。初めまして、主様。私は居合刀(いあいとう)闇夜月光(あんやのげっこう)でございます』


「あ、ああ、初めまして。俺はユーリだ」


『一日千秋の思いでお待ちしておりました。さあ、私を鞘に収め、腰に吊るしてくださいまし』


 なんだかしっとりというかねっとりというか、確かに意味もなく冷や汗が出てきそうな感覚だ。

 この鋭さを追求したかのような剣は、魔剣だろうという話だったが……。


「お前はどんな能力がある?」


『能力などと、そのような大それたものではございません。ただ、理想の居合を。それのみを追求して作られただけでございますゆえ』


「居合か……」


 居合。鞘に収めた状態の剣を抜き放つと同時に斬る技術。不意打ち等に咄嗟に対応する技術であり、極めれば鞘に収めている次の瞬間には斬っている、というほどの速度になる。

 だがこの技術、俺はあまり習得できていない。多少の練習はしたが、そもそもフィーは居合向きの形状をしていない。

 俺のような重要でもない人物が不意打ちされるようなことがあるかという疑問もあり、結局しっかりと練習は行わないまま修行を終えた。


『はい。私は主様に理想の居合をお教えいたします。それは何者をも置き去りにする一太刀。何者をも斬り裂く一太刀。かならずや主様のお力になりましょう』


『マスター! 騙されちゃ駄目です! その教えるというのは体に無理矢理ということです!』


『……腕が壊れる』


「なに……?」


『恐らくその刀はマスターの体を勝手に動かして人の域を超えた理想の居合斬りを放ちます! その動きにマスターの腕はついていけない!』


『あらあら、人聞きが悪いことを仰いますね。何者をも屠る一太刀、それを修練もなしに使うことができる、と申し上げていますのに。そのように悪と断じるようなことを』


『黙りなさい、この妖刀が!! マスターを傷つけるようなことは許しませんよ!』


「落ち着け、フィー。使ってみないことにはわからん」


『マスター! 使ったら腕が壊れちゃうんですってば!』


「暗夜月光。んー、アンで良いか?」


『はい。ご自由にお呼びくださいませ』


「ではアン。何者をも斬り裂くという言葉に偽りはないな?」


『もちろんでございます。必ずや主様の前に立ちふさがる障害を排除いたしましょう』


「それがわかれば良い。どうにかして1階に向かうぞ」


 フィーには一度体内に入っていてもらって、アンを左腰に吊るす。


『まさかその刀で床を斬るつもりですか!? それなら大輪牡丹で斬った方がマシです!!』


「片腕が潰れても剣は振れる。すぐに戦闘になることを考慮するならアンで斬った方が良い」


 戦闘があるとは限らないが、最悪は想定すべきだ。それに片腕が潰れている状態が辛いなら、いざとなれば姫様の魔法がある。3回しか使えないのでできれば使いたくはないが、エイミーの危険にそんなことは言っていられないだろう。


『それは! ……そうかもしれないですけど、でも!』


『……フィー、落ち着いて。……もう覚悟が決まっちゃってる』


『っ!』


「ごめんな。いつも心配してくれてありがとう。でも、大切な家族が待ってるんだ」


 フィーは無茶する俺をいつも心配してくれる。仕方ないことだ。もう10年以上も2人で過ごした。フィーだって大切な家族なんだ。

 リィンは心配はしてくれつつも、俺の背中を押してくれる。まだ1年も一緒にいないけど、もう家族みたいなもんだ。



 そして、エイミー。こいつらと同じくらい大切な家族。やっと自由に生きられるようになったんだ。必ず助ける。



 たとえ、腕がへし折れようとも。

 現在第3章を執筆中なんですが、だんだんハーレムっぽい展開が増えてきました。もともとそんなにハーレムにするつもりじゃなかったんですが、いつの間にかそんな風になってしまったので、キーワードを追加します。

 ハーレムじゃないと思ったから読んでたのに、という読者様には申し訳ありません。

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