第4話 砂漠に舞う花吹雪
修行中、フィーに言われたことを思い出す。
『マスターは剣に関しては人並みです。ただ明らかに異常な才能があります』
「異常な才能? 剣を振ってばかりなのに剣以外の何がわかるんだ?」
『体力ですよ! 最初の頃は流石にすぐ疲れてましたけど、今ではほぼ一日中剣を振れるじゃないですか!』
「そうなのか? 他人と比べたことがないからわからないな……」
『わたしが理想の動きを教えます! マスターはそれをひたすら反復練習! 習得速度は人並みでも練習密度が高いですから、きっと強くなれますよ!』
砂漠を歩き始めて1時間。日差しが強い。
「フィー、水くれ」
『はいな!』
フィーから水が飛び出してくるのを直接口で受け止める。水がなくなる心配をしなくて良いのはありがたい。
と、少し先に針が生えた俺と同じくらいの身長の植物が歩いているのが見える。あれが針を飛ばしてくるサボテンだな。
「さあ、モンスターとの初戦闘だ。フィー、やるぞ!」
『はい!』
全力で駆け出す。一気に距離をつめるが流石に剣の間合いに入る前に気づかれた。
「ふっ!」
針を最小限の動きで避けその勢いのままフィーを振るう。勢いを乗せて放った一撃は狙い通りサボテンを頭から両断した。
「ふぅ。よし、問題なさそうだな」
『ヒュー、さっすがマスター!』
フィーがおどけて褒めてくるが、恐らく最初から問題ないことはわかっていただろう。これくらいでやられるような腕で修行完了を告げるほど、フィーはいい加減ではない。
「行くか」
砂漠の旅はまだ始まったばかりだ。
サボテンやネズミ、クモを狩りながら先へ進む。
「フィーで斬れる相手なら大丈夫そうかな。問題は例のサソリか」
その発言を待っていたかのように目の前に俺の腰くらいの高さがあるサソリが現れた。それも2匹。
「おっと。いきなり2匹か……」
『大丈夫です! ゴーゴーですぅ!』
まずは手近な1匹に斬りかかる。とりあえず速度重視で一撃。
「くっ!」
甲殻に流されたかっ! 反撃がくるっ!
「ふっ!」
尻尾を突き刺しに来たので弾く。振るった剣を引き戻す時間がある程度の速度。これならっ!
「はあっ!」
速度を落とし力を込めた一撃はサソリを両断した。しかし既に横からもう1匹が尻尾を突き刺しに来ている。
「っ!」
1匹目を両断した剣を地面を削りながら横へ。もう1匹を尻尾ごと上下に断ち斬った。
「ふぅ、危なかったな」
『様子見なんてするからですよ! 最初からぶった斬るつもりでいかなきゃ!』
「もし相手が予想より速かったらどうするんだよ」
『相手の速さなんて剣を振る前に確認してください!』
「ああ、確かに。そりゃそうだ」
『まだまだ経験不足ですねぇ』
今まで修行は長いことやってきたが、モンスターとの戦闘はなかったからな。サソリも大丈夫なようだし、戦闘経験を積みながらそれっぽい遺跡を探そう。
警戒していたサソリも倒せた俺は忘れていた。服屋の店員がサソリより強いモンスターがいると言っていたことを。
それに気づくことができたのは偶然だった。特に意味もなく、しいて言うなら強い日差しが気に障って上を見上げた。
音もなく飛来している鳥が目に入った。
「うおおあぁっ!?」
飛びのいて避ける。地面に爪をたてたそいつは、俺をやれなかったのを把握すると再び空へ舞い上がった。
そこでやっと敵をしっかりと視界に捉える。
ワシだ。かなりでかい。片翼だけで俺の身長くらいの長さがある。その爪は鋭く輝いている。
『マスター!』
「ああ、わかってる。相当強い」
さっきのは不意打ちだったが恐らく正面から戦ってもかなりの強敵。なめてやれる相手じゃない。
再びワシが急降下してくる。その速度は正面から見ているのになんとか追えるというほどに速い。
だが、今度は最初から構えている。その爪ごとぶった斬る!
「はあっ!」
『なっ!? 斬るどころか爪を落とすことすらできないなんて!!』
ぶった切ってやるつもりで放った一撃は奴の爪にわずかな傷をつけるにとどまる。
「今、受け流されたか? こいつ頭も良いようだな……」
弾かれて空へ上がっていたワシがまた急降下してくる。が、
「さっきより速いっ!?」
条件反射的に飛びのく。こいつまさか…。
『風魔法です! 追い風で速度を上げています!』
「魔法まで使ってきやがるのか……」
今までとは桁が違う強敵。どうするか……。
『マスター! 出し惜しみできる相手じゃないです!』
「だよな。よし、やるぞフィー!」
相手がまた急降下しようとしている。一つ覚えの攻撃だが有効だ。なぜなら俺に空への攻撃手段なんてないのだから。恐らく理解してやっているのだろう。本当に頭の良いやつだ。
奴が急降下してくる
「花吹雪」
さあ、見せてやろう
「三分裂き!!」
すれ違う一瞬で3度斬る
奴は俺の後ろで地に落ちた
奴の血が花弁のように舞っていた
花吹雪・三分裂き
修行中に編み出したいわゆる必殺技だ。
一瞬のうちに三度斬る技だが、そうほいほいと連発できるものでもない。腕が疲れるからだ。
俺は一日中走りまわれるくらい体力があるが、腕の疲労はそれとは別問題。筋肉が疲れてくればいずれは物理的に腕が動かなくなってしまう。
とはいっても三分裂きくらいならそこそこ連発しても大丈夫だ。もっと上の技を使うと腕の疲労が無視できなくなってくるが。
『やりましたねマスター! ほらほら、必殺技作っておいて良かったでしょ?』
「ああ、そうだな。助かったよ」
修行中、いきなり何年もかけて必殺技を作るなんて言い出したときには呆れたもんだが、こうして実際に戦闘で使ってみるとその強さがよくわかる。
恐らくあの修行で無意味なことなんて一つもなかった。収納剣としての能力も含めて、フィーには助けられっぱなしだな。
『ふふーん、わかれば良いのです! さぁ行きましょう!』
「ああ!」
気合を入れなおして歩を進める。目の前には一面の砂漠。まだまだ先は長そうだ。
技名をつけているのは、この先使いやすくするためです。技名を言うだけでどんな攻撃をしたのか伝われば、いちいち描写しなくて良いですからね。
まあ単純にカッコイイかな、と思ったのもありますが……。
必殺技は花吹雪以外にもいくつかありますが、どれも明確なデメリットをつけています。ゲームで例えると、SPみたいなポイントを消費して放つ感じですね。
そこまで出し惜しみする感じではないです。これから結構バンバン使っていきます。




