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貫き通せ我が騎士道  作者: 神木ユウ
第1章 大地国ガイア
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第37話 百花繚乱、花吹雪

 やると決めると、策が思い浮かぶものだ。その策でやりきれなければ負けが決まりかねない博打的作戦。だが、賭けに出ずして、勝利などあり得ない!

 射程の確認は済んでいる。まずはギリギリの距離を走り回る。

 そうすると、


「うっとおしいって、言ってるど!!」


 踏み込んでくる。それを、


「鏡花水月!!」


 距離を取って回避。そして、


「鏡花水月!!!」


「ぬおっ!?」


 正面から突っ込む。そして斬る。もちろん片手での斬撃はほとんど効かない。それでも良い。まずはこの動きを繰り返す。


「チクチクうざいど!」


 腕で叩き潰そうとしてくるのを避け、もう一撃。


「あああああぁぁぁぁ!!!」


 イラついた奴が炎を噴き出す。その寸前、


「鏡花水月」


 距離を取る。そしてまた回りだす。

 奴が踏み込み、それを回避。その後正面から突撃し、一撃。

 今度は腕による攻撃ではなく、最初から炎を噴き出そうとしたので、すぐに退避。

 そしてまた回りだす。


「ああああぁぁぁ!!? うっざいんだど!! そんな攻撃効かねぇど!! いい加減諦めるど!!」


「何言ってやがる。炎を噴き出すしか能がないお前ごときに俺が負けるか」


「ああ!!?」


 煽る。ひたすら相手を煽り続ける。

 奴が踏み込んでくるので、また下がる。そして突っ込む。


「そんなの読めてるど!!」


「お互いにな」


 突っ込むのに合わせて腕を叩きつけてくるので、体勢を低くして回避。下から突き上げてやる。

 これも浅い。それでも血が出る程度には傷がつく。それがまた、奴をイラつかせる。


「こっのおおおぉぉぉ!!!」


 炎が噴き出すので下がる。そしてまた回る。


「フンヌっ!!」


「くっ!?」


 奴の腹の穴から、炎の玉が砲弾のように飛び出してきた。リィンのお陰で何とか目で追うことができるそれを、跳び退き回避する。

 この局面で新しい技を使ってきやがって。だが、そろそろ良いだろう。仕留めに行くぞ。


 奴が踏み込んで距離を詰めてくる、今まで同様下がって回避。そして正面から突撃。



 と、奴はそう思い込んでいるだろう。



「鏡花水月!」


「なんっ!?」


 幻を残すほどの速度で、奴の背後に回りこむ。奴には俺が消えたように見えているはず。

 一瞬でも早く攻撃に移るため、手に持ったリィンをそのまま体内に格納、フィーを両手に持ち直す。




 時が止まる。そう錯覚するほどの集中。




 奴の背の一点。目に映る世界がそれだけになる。




 圧縮した時間の中で、剣だけが鋭くきらめく。




「生花・一輪刺し!!!」




 閃く一瞬、全てを貫く神速の一。




 それは狙い違わず、奴の背を貫いた。




 生花・一輪刺し

 極限まで集中し放つ、最速の突き。間違いなく俺の技の中で最も貫通力がある。

 その集中のせいで、技を使っている最中は、貫こうとしている一点しか見えなくなってしまう。横から攻撃されたりすると、無反応で受けてしまう欠点がある技だ。

 



「がはっ!!?」


 ついに奴に致命的な一撃を与えた。これで、



「ぐううう、がああああぁぁぁぁ!!!!」



「ぐっ!? が……あ……」


 奴から炎が噴き出す。直撃。体中が焼け、熱さよりも痛みが来る。

 だが、


「たお、れろぉぉぉ!!!」


 踏み込む。ここで仕留めきらなければ、もう奴の油断は誘えない。

 剣を振るう。焼ける体が重く、剣に勢いが乗らない。



「ユーリ様!!」



 回復魔法が飛んでくる。奴は炎を噴き出し続けている。体が燃える。燃えた端から回復していく。地獄のような痛み。

 だが、





 構え、踏み込む。





「花吹雪・満開!!!」





 体は動く。剣を振るうことができる。





「繚乱落花あああぁぁぁっ!!!」





 一瞬に10度斬る、その速度で斬り続ける。

 何秒でも、何十秒でも、斬り続ける。奴が倒れるその時まで。

 熱い、痛い、今にも意識が飛びそうだ。

 だが、そんなことはどうでも良い。ここで仕留めなければ確実に負け。その時、姫様は殺される。


 この後どうなっても構わない。今、ただ剣を振り続けろ!


「ぐ、ぐう、ぐうううぅぅぅ!!」


 苦し紛れに腕も振るってくるが、その腕ごと斬りつけ弾く。


「く……そぉ…………」


 奴が倒れた。それを確認してから、剣を止める。


「勝った……のか……」


『はい、お疲れ様でした、マスター』


『……勝ち』


「ユーリ様あぁぁ!!」


 姫様の涙声が聞こえてくる。

 駆け寄ってきて、抱きしめられた。


 ああ、良かった。この人を守ることができた。


 回復魔法の光に包まれながら、ただ立ち尽くしていた。










「大丈夫ですか? ユーリ様」


「はい、姫様のお陰でもう怪我もありません。万全の状態ですよ」


「嘘はいけませんよ。怪我がなくなっても疲労は取れていないはずです」


「……バレましたか」


 その通りだ。全く腕が上がらない。繚乱落花は一度使えばしばらくは全く剣を振れなくなってしまう。この後は何時間か休憩しないと戦えないだろうな。


「ユーリ、で良いか?」


「え? あ、はい。わたしはユーリと申します、陛下」


「良くやってくれた。あの強大な敵を打ち破り、我らを守ってくれたこと、礼を言おう」


「はっ! ありがたき幸せ」


「何か褒美を取らせる。が、今はしばし待て。王都に安寧を取り戻した後、必ずそなたの奉公に報いよう」


「勿体なきお言葉です。わたしもただちに王都へ舞い戻り、この力を役立て……」


「ダメです! 疲労は取れていないと言っているでしょう!?」


「ユーリよ、そなたは充分働いてくれた。今は休みなさい」


 イカン。実際に今王都に戻っても何もできないのに、様式として戦おうとしてしまった。

 もしそれで、行け、と陛下に命令されていたらどうするつもりなんだ、俺……。


「……わたしからも礼を言おう。ありがとう、ユーリ」


 複雑そうな顔のカイン王子に礼を言われた。どうしたのだろうか。


「何か気に障ることをしてしまったでしょうか?」


「いや、個人的なことだ。君は気にしなくて良い」


 ふむ、考えてもわからないし仕方ない。ここはお言葉に甘えるとしよう。


「陛下、安全も確保できたことですし、予定通り森へ身を隠しましょうぞ」


 宰相がそう提案してくる。まだ王都にはモンスターがあふれているはずだし、確かにしばらくは身を隠してもらった方が良いかもしれない。


「うむ、そうだな。では……」




 その時、王城の方から膨大な魔力が放たれるのを感知した。

 そして更に大きく感じるようになったその存在感。これはまさか……


「大地剣ガイグランデ……?」


「っ! この魔力! 間違いない! 大地剣ガイグランデ! そしてこの襲撃は魔王軍によるもの……! まずい、すぐに戻らねば!!」


「陛下!? 何を仰るのです!? 確かにガイグランデが魔王軍に奪われるのは大変なことですが、陛下が向かわれる必要は……」


「馬鹿者が!! ガイグランデが魔王軍に奪われるということは、王都に留まらず国の、世界の危機なのだ! 危険だなどと言っていられる状況ではない!!」


 そう言って陛下は王都の方向へ走り出す。腕が動かないとはいえ、流石に放ってはおけない。追いかけよう。


「姫様、わたしは陛下を追いかけます。あなた方は森へ……」


「私も行きます!」


「しかし……」


「お父様が言っていたではないですか。世界の危機なのでしょう? どこにいても危険であるなら、私は少しでも良くなる可能性がある方向へ進みます!」


「……わかりました。共に行きましょう」


「はい!」


 姫様も行くと言うと、王子や宰相、騎士たちもついてきた。結局全員城へ向かうことになったな。

 この重い腕でどうやって守れば良いのか、それを考えながら、走り出す。

 目指すは膨大な魔力を放出し続けている、大地剣ガイグランデ。

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