第33話 黒幕の目的
今回から第1章第3部の開始です。
エイミーの社会奉仕活動も終わり、俺の怪我もだいぶ良くなった。いよいよ旅の再開の日だ。
「準備は良いか?」
「はいッス! いよいよッスねー。楽しみッス!」
エイミーはウキウキ気分を隠す気もないようで、楽しげに笑っている。
「まずは王都に戻るぞ。姫様にこの都市でのことを報告したいし、モンスター活発化の調査結果も知りたい」
「たしか人通りの多い道にモンスターの群れが出てきたんでしたね」
「ああ、騎士団が調査隊を編成して調査してくれているはずだ。そろそろ結果が出たかと思ってな」
迷宮都市ラピスを出発した。
王都からラピスへは15日で着いたが、王都への帰りは17日かかった。
流石にエイミーに俺と同じペースで歩かせる訳にはいかないからな。エイミーはこう見えて鍛えているので、なかなか体力があるようだが、俺ほどじゃない。休憩は多めにとる。
『多めって言ってもマスター的には、ですけどねー』
『……エイミーもスゴイ』
「おおー!! あれが王都ッスかー!! 大きくてキレイな街ッスねー!」
「ああ、俺も最初来たときは驚いたもんだ」
主にこの存在感に、だが。相変わらず大地剣ガイグランデの存在感は圧倒的だ。王城のどこにあるのかはっきり感じ取れるからな。
「さて、まずはクレイドさんに調査の経過を聞きに行こう」
「クレイド・サードニクス様ッスね……。あたしが行っても大丈夫ッスかね…?」
「クレイドさんは身分の違いを気にするような人じゃない。大丈夫だ」
サードニクス邸を訪ねる。クレイドさんはいるだろうか。本来はこんな風に突発的に会いに来れるような人じゃないんだろうな。
門番の人に名前を告げる。どうやら呼んでくれるようだ。
「貴族の屋敷に名前を言えば入れるのは相当ヤバイッスよ……」
「確かに。よく考えたら異常だよな……」
しばらく待っていると、クレイドさんが出てきた。わざわざ本人が出迎えてくれるとは。
「よく来たね、ユーリ君。おや? そちらのお嬢さんは?」
「妹のエイミーです」
「は、初めましてッス」
「ほう、妹さんかい。ということはユーリ君は故郷に帰っていたのかな?」
「いえ、いろいろと事情がありまして。この子の兄として共に旅をすることになりました」
「ふむ、まあ根掘り葉掘り聞かずとも良いか。ああ、すまないね、こんな門前で。どうぞ、入りなさい」
敷地の中へ通される。クレイドさんは現在、本邸ではなくこの敷地内に建っている別邸に住んでいる。本邸は当主である息子さんが管理しているからな。なので当然だが、俺は本邸には入ったことがない。今回も別邸に通される。
「お茶を用意してくれ」
「かしこまりました」
メイドに指示を出している。普段は貴族とは思えないほどフレンドリーに話してくれるが、やはり貴族なんだと実感するな。
「さて、今日はどういった用件で来てくれたのかな?」
「調査隊が派遣されてそれなりの時間が経ちましたので、調査の進捗を伺いに」
自分の前に出されたお茶を飲む。美味しいな。お茶の違いなんてわからないけど……。
エイミーもお茶やお菓子に夢中になっている。食べかすをこぼさないように気をつけろよ……?
「ああ、その件かい。一度調査隊が帰ってきたよ。確か15、6日前だったと思うけど」
「一度、とは?」
「何でもワイバーンが発見されたらしくてね。討伐隊を編成しないといけないということで、戻ってきたようなんだ。今は騎士団長自ら討伐に向かっているよ」
「ワイバーン! なるほど、そのような強大なモンスターが暴れていれば、道までモンスターが出てくるのもうなずけますね……」
ワイバーンは竜種ではないが、竜種に次ぐ強大なモンスターだ。並みの人間では何人いても意味がない。とは言っても、
「騎士団長が向かっているなら討伐も時間の問題ですね」
「そうだね。ただこれで解決、とはいかないのが嫌なところだ」
「そのワイバーンや以前わたしが討伐した狼を活性化させた何者かを捕らえないことには、解決ではありませんからね……」
「それらが同一人物とは限らないけれどね。同一人物であってくれと祈るばかりだよ」
「その何者かっていうのは何が目的なんスかね?」
と、今まで菓子に夢中だったエイミーが口を挟んできた。
「目的? そんなの……何が目的なんだ……?」
「モンスターを活性化させて人々を襲わせる。それが何の利益になるのか、ということだね」
「そうッス。例えば兄さんとクレイド様が最初に出会ったとき、モンスターに負けてしまったとして、そしたらどうなるッスか?」
「俺が死んだとしても、特に何かに影響は出ないはずだが」
「ワシもそうだね。悲しんでくれる人はいるだろうが、それが何かになるのかと言えば、恐らく何にもならない」
「そもそも俺たちが襲われたのは偶然だと思うが……。いや、そこじゃなくて……」
「狼の群れが討伐されていなかったら。恐らく被害が拡大し、騎士団から討伐隊が編成されるだろう。群れの規模から考えて、民間に協力依頼もでるかもしれない」
「今回のワイバーンもそうですよね。現に騎士団長が向かっている」
「犯人の目的は……戦力を王都から出すこと……?」
「王都に襲撃でもかけてくる気ですか!?」
「そんな馬鹿な……。いや、しかし現に騎士団は団長を含めたそれなりの人数が出てしまっている……」
「陛下にご報告した方が良いのでは……!?」
「ああ! ワシはすぐ城へ向かう! すまないが、今日は帰ってくれるかい?」
言われるまでもない。俺たちは屋敷をあとにした。
「襲撃の可能性くらいは知り合いに伝えておきたいな……」
「そうッスね。どこに行くッスか?」
「とりあえず協会に行くか。いざというときに頼りになる人がいるかもしれない」
協会の扉を開ける。お、良かった、いてくれた。
「皆さん、お久しぶりです」
声をかけたのはバルドさんたちのパーティだ。仕事を探すには遅い時間だったのでいないかと思ったが、運よくいてくれたようだ。
「おお! ユーリじゃねぇか! どこ行ってたんだ?」
「ちょっと迷宮都市まで」
「へぇ、迷宮探索してきたの? 何か良いもの見つけた?」
「いえ、特には。あ、何でも缶詰にできる缶詰作成キットなんてものがありましたよ」
「へぇ、便利そうだね」
「ユーリ、その子は誰だい?」
「この子は妹のエイミーです」
「エイミーッス。よろしくッス」
「お前妹なんていたのか」
「可愛い子ね」
「いえ、ちょっと事情があって、迷宮都市でこの子の兄になったんですよ」
「なかなか大変だったようだね……。もしかして更に強くなったのかい?あたしと一勝負……」
「やめなよマリー……」
おっと、こんな話に花を咲かせている場合じゃない。
「皆さんに伝えておきたいことがありまして……」
ざっと事情を説明する。その根拠を示すためワイバーンについても話してしまったが、どうやら団長が討伐に向かっていることは知っていたようだ。
「王都襲撃の可能性、か……。にわかには信じがたいが……」
「でも話を聞く限りだとありえそうじゃない? 俺たちもあの狼を見てるんだし、結構信憑性はありそうだと思うけど」
「ああ」
「ん……? 王都から戦力を削ぐのが目的なら……!」
「どうした、サリア」
「昨日、王都から1日くらいの場所で新たに迷宮が発見されたって。それで今日は普段戦闘系の仕事をしてる連中が結構な数行ってるじゃない?」
「あたしたちは今日仕事から帰ってきたばかりだから諦めたやつだね」
「まさか……」
「今のユーリの話と合わせて考えると……。襲撃があるとするなら……」
ドゴオオオオオォォォン!!
「今日よ!!」
王都中に爆発音が響き渡った。
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