第31話 閑話:迷宮探索・改
閑話3話連続投稿の2話目です。迷宮探索をやり直します。物凄い駆け足で行けるところまで行くので、迷宮ってこんな場所なんだなってことがわかってもらえればOKです。
「なー、迷宮行っちゃダメか?」
『まだ言ってるんですか……。まだ5日しか経ってないですよ……』
「でももう痛くないし……」
『……それは固定してるから』
『一発でも受けたらアウトのサドンデス状態で迷宮なんて恐ろしすぎます!』
「でも20階まで行こうと思ったら多分行きだけで5日くらいかかるだろ? 帰りは3日で帰ってこれると計算しても、そろそろ行かないとエイミーの奉仕活動が終わるまでに探索し終わらないし……」
『それはそうですけど……』
『……じゃあ行く?』
『ちょっと!? 何許可しようとしてるんですか!』
『……だって迷宮も面白そうだし』
『危険だって言ってるでしょお!!』
「危なそうなら途中で帰るからさ。頼むよ、フィー」
『むむむむ、エイミーちゃんにも頼まれているのに……』
「よし! 行くぞ!」
『ああもう! 危なくなったら帰るんですよ!』
『……行くぞ』
部屋にエイミーへの書置きを残して出発した。
迷宮にやってきた。とりあえず今日中に8階までは行っておきたい。さっさと進もう。
実は今までの数日の間に、エイミーから迷宮の地図をもらっている。自分用に作っていたらしい物を貸してくれたのだ。
もちろん怪我が治ってから迷宮に潜るときのために、と言って貸してもらっているので、実際に行ったと知ったエイミーは怒るだろうが……。
4階までは何事もなくたどり着いた。その4階の最短を進む途中、
「お、箱発見」
宝物が入っている箱を見つけたので、開けてみる。
「これは……。何だ? 錠剤……?」
何か薬のようなものがビンに入っていた。何物かわからないので、迷宮から出たら鑑定してもらおう。
7階まで来た。ギャング共のアジトがあった階層だ。アジトはギャング共が取っ払っているので、今は他の階層と変わらない。
モンスターも普通に出てくるので、軽くあしらいながら進む。
「まだザグルドが強化したモンスターが残っていたりしないだろうな……」
『流石に大丈夫だと思いますけどね。操れる魔力量はそんなに多くないみたいでしたし』
リィンはここまでもずっと抜いているが、何となく握りなおして先に進む。
「お、また箱発見だ」
7階はきっと今までギャング共が取り尽くして、箱が出ない階層みたいに思われていたんじゃないだろうか。
今はそんなことはないので、ちゃんと箱が見つかる。早速開けてみよう。
「これは斧だな。どんな効果があるかは全くわからんが」
まあどんな効果があろうと自分で使うことはないので良いだろう。これも迷宮から出たら鑑定してもらおう。
8階に降りたところでテントを張る。フィーをテントに立てかけて、何か来たら教えてもらえるようにする。
ずっと抜きっぱなしだったリィンは体内に格納しておく。
『明日起きたらわたしも格納してくださいね!』
「ああ、わかってる」
8階。モンスターが多くなってきたな。これ以降はあまり狩られていないはずだし、気を引き締めよう。
早速モンスター。狸みたいな奴が出てきた。
「ふっ!」
素早く近づき一閃。問題なく一撃だ。
「よし、まだ大丈夫だな。先に進もう」
『油断しないでくださいよ? 一撃もらったらヤバイんですから』
「ああ、リィンで常に周囲は確認してる。大丈夫だ」
『……任せて』
ここはまだ地図がある。次の階層からが本番だな。
9階。完全に未知の階層なので、ここからは降りるのに時間がかかる。
モンスターの強さが跳ね上がったりはしないはずなので、そこは大丈夫なはずだ。
モンスター、今度はコウモリだな。初めて迷宮に潜った日も大量に出てきてたな。今も少し先の天井に10匹くらいぶら下がっている。
以前も戦っているし、大丈夫だろう。近づいていく。そこで、
キイイイイィィィィィン!
耳鳴りのような音が聞こえる。コウモリから発せられているようだが……。
「うっ……」
何か気持ち悪くなってきた。さっさと片づけよう。
コウモリに向かって駆け出す。近づくと数匹で足止めしながら、他は逃げていく。こいつら……!
「音を聞かせ続ける気か……」
近づいてきた数匹を瞬殺、残りを追いかける。
その後も数匹ずつ片付け、やっと殲滅した。
「うあ……。少し休憩だ……」
『厄介ですね……。あのコウモリと強力なモンスターが組んできたら逃げた方が良いかもしれません』
「次出てきたら、技を使っても良いから一気に近づこう。あの音を聞き続ける方がよほど疲れる」
よし、不快感も治まった。先に進もう。
10階。やっと半分か。デカイ迷宮だ。
ウサギが出てきた。ただのウサギに見える、可愛らしいウサギだ。だが、
「あれ、囮だな」
『……近くに大きい植物がある』
「大口開けて待ってやがる。あのウサギについていくと、気づいたらパクリって訳だ」
『でもそれ人間には効かなくないですか?』
「どうかな? こんなところに可愛らしいウサギがいたら、気になって追いかける奴もいるんじゃないか?」
『……わかっていれば怖くない』
「ああ、無視して先に進もう」
11階に入った瞬間、顔をしかめた。
「何だこれは……。モンスターが山ほどいるぞ」
一体一体は大したことなさそうだが、数が尋常じゃない。全て相手にしていたら一生ここから出られなくなりそうだ。
幸いモンスターが少ない道を感知できる。そこを通って進もう。
12階に降りたところで今日はここまでにする。
翌日、再び迷宮を進み始める。12階はどうやら11階と似ている。多少モンスターの種類が変わったようだが、大したことない相手であることに変わりはない。さっさと進もう。
13階。ここも同様に山ほどのモンスター。比較的モンスターが少ない道もある。
「はぁっ!!」
通路に現れたイタチを両断、その隙を突いて跳びかかってくるカエルも、
「ふっ!」
両断。だが、
ゲコゲコゲコゲコゲコ
「うぁ……」
『マスター!!』
「っ! せあっ!!」
このカエル、鳴き声に何か幻惑効果でもあるのか、たくさん集まって一斉に鳴かれると、一瞬意識が飛ぶ。そしてその隙を突いてイタチが素早く跳びかかってきたり、風の刃を飛ばしてきたりする。
どちらも少数なら大した敵じゃない。この階層のように、山ほど集まられると大変になる。
「ふぅ……。ここからずっとこんなに敵がいるんじゃないだろうな……」
『流石に危険になってきました。この後もこれが続くようなら帰りましょう』
「ああ、全部避けきらないといけないからな。単純に数が多いと厄介だ」
14階、急にモンスターの数が減った。恐らく1体が強力になったと考えられる。一度戦ってみるべきだな。
モンスターの気配がする方向へ向かう。そこにいたのは、熊だ。威嚇するように両手を広げ立ち上がると、見上げるほど大きい。
熊に向かって駆け寄り、まずは一閃、
「はぁっ!」
爪で弾かれた。そして逆の爪を振り下ろしてくる。
「はっ!」
こちらも弾く。一度距離を取り、相手が向かってくるのに合わせて、
「花吹雪・三分裂き!」
一瞬で3度斬る。咄嗟に防御するように上げられた腕に2つ当たってしまったが、もう1つを頭に入れて倒す。問題なく倒すことができた。
『この階層はまだモンスターが少ないから大丈夫ですけど……』
『……このレベルがたくさん来たらツライね』
「ああ、連戦になったらそのうち腕が動かなくなりそうだ」
15階。未だモンスターは少ない。ただ、悪性魔力の影響か、少し体が重いような気がする。
一度戻って、14階でこの日は休むことにする。
15階から探索を再開する。探索を始めて少ししたところで、
「お、箱だ。ここまで来たんだから、何か良いものが欲しいな」
開けてみる。出てきたのは、
「デカイな……。何だこれは? 箱……かな……?」
俺の身長以上も高さがある箱のようなもの。扉がついているので開けてみると、中はひんやりしている。
「冷たいが……入れたものを冷やす箱か?」
物を冷やすのは通常、氷魔法使いが魔法を込めた道具を使う。氷魔法使いは貴重で、冷やす道具は小さい物でも結構な値段がする。この箱はかなり大きくて容量が多そうだ。
売ったらきっと良い値がつくだろう。俺にはフィーがあるので必要ない物だ。売ってしまおう。
熊と同程度に強力なカマキリのようなモンスターを狩りながら進む。
16階に降りた瞬間、違和感。何だか湿気が多い気がする。そして強化された耳に入る水の音。
「沼、か……? なかなか面倒そうな地形だな」
『奇襲型のモンスターがいそうですね。それなら相性は良いと思います!』
強化された感覚で奇襲は完全に無効化できる。
進んでいくと、やはり沼のように水が溜まっている。その中から、ワニがこちらを見つめているのを感じる。
恐らく近づいたら食らいついてきて、水中に引きずり込まれるのだろう。もしくはその場で食いちぎられるか。どの道、噛み付かれたら終わりだ。
水には近づかないようにして進んでいくが……。
「これ、もしかして水に入らないと進めないんじゃないか?」
『そうですね……。さっきから同じところにしか行けなくなってますし……』
「厄介な……」
仕方なく水に近づく。案の定、ワニが跳び出してくるが、わかっていれば来るところに剣を置いておくだけだ。さくっと処理。
水中には、ザリガニのようなモンスターがいることも感知できている。動きにくさで攻撃をもらわないようにしないとな。
17階。大分悪性魔力の影響を感じるようになってきた。本当に20階まで耐えられるんだろうな……。
『20階に入っても正気でいられるというだけで、まともに行動はできないんじゃないですか?』
「マジか……。まあこの辺りも既に前人未踏な訳だしなぁ」
この階層は、何故かモンスターの存在を感知できない。いないのか?まさか強化された感覚でも感じ取れないとか言わないだろうな……。
『……何もいない、と思う』
「それはそれで不気味なんだが……」
18階に降りる前に、今日はここまでにして休む。
18階に降りた瞬間、これ以上は無理だと確信できた。
「帰ろう。1人じゃこれは無理だ」
『そうですね……。怪我がなかったとしてもこれは流石に……』
『……残念』
18階、そこにいたのはドラゴンだ。1匹や2匹じゃない。それなりの数のドラゴン。
何匹も固まっていたりはしないが、それでもドラゴンと連戦の可能性があるのは流石にキツイ。
こいつらはドラゴンの中では弱い方なんだろうと予想はできるけどな。
全力で技を何度も使用し、やっと1匹狩れるだろうというレベルの相手だ。
「もしかしたらこれより先に名剣があるかもしれないと考えると悔しいけどな……」
『いやぁ流石にないんじゃないですか?ここまでもあまり武器は出てきませんでしたし』
剣の声も聞こえてこないし、確かにない可能性の方が高い気はする。
道中拾ったのは、錠剤、斧、冷やす箱、他にも魔法の石を3個、拡張袋、魔法の明かりなんかを入手している。
迷宮の道具は便利アイテムが多いようだ。基本的になくても困らないものばかりだな。
まあ良い金にはなるだろう。迷宮から出るために、来た道を戻り始めた。
迷宮に入って7日後、ようやく脱出した。帰りにも魔法の石や、缶詰作成キットを入手した。
迷宮から出たところの受付に提出。鑑定してもらって、全て売る。いや、缶詰は持っておくか。
魔法の石は簡単な明かりを出したり、小さなつむじ風を起こしたりするだけのものだったので、全て売却。
錠剤は睡眠薬らしい。俺には必要ないものなので、これも売却。
合計で、1年生活できる程度の金になった。まあこんなもんか。一度の探索で稼いだ分としては充分高いだろう。
冷やす箱だけで半年分くらいになった。やはり珍しい物は高くなるな。
よし、帰るか。
「お帰りなさいッス。に い さ ん ?」
「お、おう……。ただいま……」
『あわわわわ……』
『……怖い』
めっちゃ笑顔のエイミーに出迎えられた。やべぇ、尋常でないくらい怒ってらっしゃる……。
「あ、あのな、エイミー……」
「な ん で す か ?」
「いえ……。ナンデモナイデス」
この後、めっちゃ怒られた……。




