第29話 調査報告
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やはり客観的に見て面白いと感じてくださる方がいる、と目に見える形で示されると自信になりますし、大変嬉しく思います。
翌日、昨日の今日で騎士隊からの連絡が来た。
調査結果の報告がしたいから、詰め所まで来てくれとのことだ。
「エイミー、準備は良いか?」
「はいッス。覚悟はできてますから」
詰め所に向かう。どうなったか。領主が素直に罪を認めたとは思えないが……。
『エイミーちゃんの刑も気になりますね』
『……軽いと良い』
(ああ、何年も拘束されるような刑だったら俺の旅もしばらく中断だな。そうならないと良いが……)
『ふふ、償い終わるまでこの都市にいるのは決定なんですね』
(何を当たり前のことを言ってんだ)
『そうですね。当たり前のことでした』
たとえ10年だろうと待つつもりだ。まあそんな刑にはならないはずだが。
「もしかして剣と話してるッスか?」
「ん? ああ。良くわかったな」
「いや、そんな黙り込んでればわかるッスよ。何を話してるッスか?」
「お前の刑が終わるまで何年でも待ってるって話だ」
「え……? 待っててくれるッスか?長くなったら旅を再開してもらっても……」
「何言ってんだ。お前の償いが終わるまで俺はこの都市を出んぞ。妹ほったらかしで旅なんかできるか」
エイミーはこっちに向いていた顔を前に向けなおして、言った。
「……なら、早く旅を再開できるようにしないとッスね」
「ああ、頑張れよ。自由は目の前だ」
「はいッス……!」
エイミーは上を見ている。やけに空の色が気になるようだ。今日は快晴だが、急に雨が降ることもあるからな。だがたとえ降ってきたとしても、きっと悪い雨ではないはずだ。
騎士隊の詰め所に着いた。昨日と同じ騎士が出迎えてくれる。
「来たか。隊長がお待ちだ。ついてきなさい」
そして昨日と同じ部屋へ通される。隊長は既に待っていたようだ。
「よく来た。椅子にかけてくれ。悪い報告じゃない。落ち着いて話そう」
「はい、失礼します」
「失礼するッス」
悪い報告じゃない、か。ということは領主は罪を認めたのか? この早さで? 裏で狡猾に立ち回っていたと思っていたが、案外素直なんだな。
「順を追って話そう。我々は昨日、ラピス邸へ向かった」
「ラピス様。あなたにギャングを操って犯罪を行っていた疑惑がかけられています。事実関係の調査のため、屋敷の捜査をさせていただきたい」
門前でそう告げるわたしに対し、最初は許可できないとの返答だった。だが、
「ラピス家の紋章入りの命令書をギャングが持っていました。捜査に応じていただけない場合、これを証拠品として陛下にご報告するつもりです。もしこの疑惑が嘘であるのなら、屋敷の捜査をさせていただければ、疑惑を晴らすこともできます」
そう告げると、屋敷へ入る許可が出た。
正面玄関から屋敷へ入った我々を、ゴーグ・ラピス自らが出迎えてくれた。
「ようこそ、騎士隊諸君。早速で申し訳ないが、命令書とやらを見せてくれるかね?」
「こちらです」
「なるほど、確かに我が家の紋章入りの命令書だ」
ふむふむ、と何度かうなずき、
「道連れにする気だったか。やはり一筋縄では行かん男だったようだ」
と、観念したようにつぶやいた。
「その後、屋敷を捜査し、明らかに異常な金の入った金庫を発見。本人が認めたこともあり、逮捕となった」
「やけに素直ですね?」
「ああ、それが気になって少し考えてみたのだがな。紋章入りの命令書が出てきた以上、捜査は不可避だ。そして捜査の手が入れば、あの金は隠し通せるものではない。だから自首の意味もこめて素直に認めたのだと予想している」
「道連れ、というのは?」
「それも考えたのだがな……。こちらは本当に想像でしかないのだが、あの命令書、実はゴーグ本人が紋章を押したのではない可能性を考えている」
「え……? それって命令書が偽造ってことッスか? そんなことありえるんスかね?」
「いや、あの紋章は紛れもなくラピス家のものだし、魔力印は屋敷にある1つだけだ。そこで一筋縄では行かない男、という言から予想を立てた」
ザグルドは用心深く、誰も信用せず、そして単純に強い。恐らくラピス家とつながりを持つにあたり、屋敷にも何度か入っているはず。
その際、自身が捕まったときに、罪を擦り付ける、もしくは自身の罪を軽くするために、隙を見て魔力印を勝手に押したのではないか。
荒唐無稽な話だ。ゴーグとて用心深い男。魔力印を一瞬とはいえ取られるだろうか。
だが、筋が通った話でもある。ゴーグの屋敷にはそれほど戦力として強い者はいなかったという話だ。ザグルドの力なら可能なのかもしれない。
「ギャング側としては、ゴーグとは対等な取引関係のつもりだったと想像できる。だが、命令書の内容を見るに、ゴーグは自分が上だと思っていたはず。その辺りの食い違いが、ザグルドという男には不満だったのかもしれんな」
「命令書の内容といえば。なぜギャングを迷宮に閉じ込めたのでしょうか」
「それか……。気になってしまうよな、やはり」
「何か問題が?」
「あまり伝えたくはなかったが……。簡単に言えば、人体実験だ」
「人体実験……!?」
「そうだ。どうやらゴーグは悪性魔力を使って儲けられないか、研究していたようだ。ギャングを使って、長期間迷宮に篭って悪性魔力に晒され続けたらどうなるのか、実験していた。実験の経過をまとめた資料が屋敷から出てきたよ」
「ザグルドはそれを了承したんでしょうか」
「いや、恐らく真意は隠されていたのではないか。迷宮の方が自由にしやすいから、とでも言って潜らせたのだろう。詳細は今後、ゴーグ本人から聞き取り調査を行う。今日は取り急ぎ、ゴーグが罪を認めた報告がしたかったため呼んだのだ。あとは、」
そう言ってエイミーの方を見た。
「君に課す刑罰についてだ」
「は、はいッス……」
「君はこれまで、盗みを働いてきた。だが、それは生きるため仕方がなかった。ギャングに捕まった後は、母親が人質にされていたため、これも仕方がなかったとする。だが、君によって死に導かれた被害者も少ないとは言いがたい人数存在している。よって無罪とはできない」
「はい……」
「今回の事件、君の活躍なくして解決はなかった。ユーリ君からそう聞いている。間違いないな?」
「はい。わたしが生きていられるのも彼女の助力のおかげです」
「うむ。それも踏まえて……。エイミーさん。君には2週間の社会奉仕活動を行ってもらう」
「え……? それだけッスか……?」
「ああ。本人の反省もある。これからは事件を起こさないと予想もできる。最低限の罰だけ与えれば充分だと考えられる」
「は、はいッス! ありがとうございます!!」
「早速今日から、清掃活動を行ってもらう。道具はこちらで用意しているから、しっかり励むように」
「はいッス!!」
「エイミー、俺はその間、この街の探索とか迷宮に潜ったりとかしてるから。宿屋は変えないからちゃんと戻って来いよ」
「はいッス、兄さん。……ん? いや、何さらっと迷宮に潜るとか言ってるんスか! 安静にしてなきゃ駄目ッス!!」
「いや、大丈夫だって……」
「大丈夫な訳ないッス! 骨が折れてるんスよ!!」
「……流石に骨が折れた状態で迷宮に行くのは推奨できないぞ」
『わたしも、今は休むべきだと思います……』
『……同意』
う、隊長や剣たちにまで止められてしまった。迷宮探索ちゃんとできなかったから、また行きたいのに……。
「じゃあ迷宮は諦める……」
「めっっっちゃ不満そうッス!?」
エイミーの罰はとても軽いものだった。2週間なんてあっという間だ。
それが終わったら王都に戻ろう。今回の話を姫様にしたいし、モンスターが主要路に出てきた件の調査結果が聞けるかもしれない。
騒ぎながらもなんだかんだ楽しそうなエイミーを見ていると、本当に助けられて良かったと思う。
これからはエイミーも加えて、更に賑やかな旅になる。楽しみだ。つくづく、そう思う。
これにて第1章第2部完結となります。明日3話分一気に閑話を投稿して、明後日から、いよいよ第1章大地国ガイア編のクライマックスに入っていきます。




