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貫き通せ我が騎士道  作者: 神木ユウ
第1章 大地国ガイア
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第27話 迷宮都市の騎士隊

 ザグルドを倒した部屋まで戻ってきた。残った連中はちゃんと待っていたようだ。


「幹部に聞きたいんだが、この命令書を知っているか?」


「なんだこれは……? 領主からの命令書!? 俺たちは領主の命令で動いてたってのか……。こんなことザグルドさんは一度も……」


「やはり知らない、か」


 そうだろうとは思っていた。わざわざ私室で管理していたくらいだし、部下のことなんて全く信頼していなかっただろうあの男のことだ。情報漏えいを恐れて、全て自分で管理していたのは予想できた。

 それにこの領主もだ。善人だと思われているということは、表では優秀な領主を演じつつ、裏で悪事を働き儲けていたことになる。相当狡猾な奴だ。情報漏えいには気を配っているだろう。

 ん? 情報漏えいに気を配っている……? それなのにザグルドに紋章入りの文書を渡したのか? 何か違和感があるな。だが、実際に文書はある。これ以上はゴーグ・ラピス本人に聞かないとわからないか。


「領主が俺らの悪事を主導していたとは……。ゴーグ・ラピスといえば、悪人の捕縛に自ら動いたり、スラムに定期的に調査を入れ環境を改善しようとしたり、かなりの善人としてこの都市じゃ有名だ。俺らから見ても意外な話だぜ」


 スラムの調査ってのが、こいつらの悪事を見逃すのに使ってた言い訳だろうな。定期的に言い訳する必要があったくらい、こいつらの活動は活発だった訳だ。

 悪人の捕縛はポーズだろうか。わたしはこんなに悪人を憎んでいます、悪事なんてする訳がありませんっていう。


「上に出てからの俺の行動をお前らにも伝えておく。協力しろ。少しでも罪を軽くしたいなら、協力した方が良いことくらいわかるな?」


「ああ。せっかく自首するなら、より罪が軽くなるようにしたいからな。黒幕の捕縛に協力すりゃあ、少しは印象も良くなるだろ」


 よし、これで俺がこいつらを見張りながら迷宮を出る必要もなくなる。領主にばれずに騎士に報告できるな。

 受付への報告もこいつらにやらせてしまおう。俺よりも遅く、騎士が領主の調査に向かってから出てこさせた方が良いだろう。

 受付への報告をこいつらに任せるなら、俺は王都へ向かうこともできるが……。流石に時間がかかりすぎるか。ここは騎士を信用することにしよう。少なくとも表面上この都市は平和なんだから、騎士もしっかり働いているはずだ。


「あたしはどうするッスか?」


「エイミーは俺についてきてくれ。お前の母親にも頼まれているしな」


「わかったッス」


 領主の悪事を暴くなんて大手柄だ。放っておけば都市自体の機能に関わってくるからな。それに協力させれば、きっと更なる減刑を願えるはず。こんな話をエイミーに伝えたりはしないがな。罪を償いたがっているエイミーに話しても、微妙な顔をされるだろう。


 5階まで上ってきた辺りで寝るくらいの時間になった。無いと信じているが、騎士から逃げなければならない可能性を考えると、しっかり休んでおきたい。迷宮内で一晩過ごして翌日、迷宮から出る。






 迷宮から出る前に、ギャングたちには離れてもらう。ぞろぞろ出て行ったら怪しいことこの上ない。まずは俺とエイミーだけで迷宮から出る。


「お疲れ様です。カードを確認します」


 探索者カードを見せる。俺とエイミーは1日潜っていただけだし、何の問題もない。


「はい、確認が終わりました。カードをお返しします。何か宝物は発見しましたか?」


 一応石を見つけたが、迷宮内で使ってしまったため、持ってきていない。何も見つからなかったのと同義だな。


「いえ、何も見つけられませんでした」


「そうですか。わかりました。念のため、拡張袋の確認をさせていただきます」


「どうぞ」


 例の命令書その他もろもろの証拠品は、迷宮から出る前に、誰にも見られていないことを確認してフィーに収納している。袋を確認されても問題はない。


「はい、確かに確認しました。お疲れ様でした」


 受付に見送られ、迷宮ドームから出る。エイミーは俺の次に確認されているから、少し待とう。


「お兄さん、お待たせしたッス」


「よし、行くか」


 騎士の詰め所に行こう。ギャングたちは、俺たちが迷宮を出てから5時間後に出てくるように言ってある。そんなに慌てなくても大丈夫だ。






 騎士の詰め所に着いた。道中で証拠品をフィーから拡張袋に移してある。エイミーにはフィーの能力がばれたが、別に良いだろう。


「すいません、少々大きな事件について報告がしたいのですが……」


「大きな事件?」


「はい。今詰めていらっしゃる騎士の責任者を呼んでいただけませんか?」


「ふむ……。とりあえず確認してくる。少し待っていなさい」


 さて、イタズラだと思われて出てきてくれないと、今対応してくれた騎士に報告せざるを得なくなる。できれば立場がある騎士に報告したいところだが……。


「会ってくださるそうだ。案内するからついてきなさい」


「はい、ありがとうございます」


 よし、まずは第一関門突破といったところだ。

 詰め所の奥に案内され、一室に通される。応接室みたいな感じかな。

 少し待っていると、さっき案内してくれた茶髪の若い騎士と共に、黄色髪の40代後半くらいの騎士が入室してきた。


「わたしが現在、ここの騎士隊の隊長を務めているガドル・クォーツだ」


「初めまして、ユーリと申します。こちらはエイミー」


「初めましてッス」


「さて、何やら大きい事件があったとのことだが?」


「はい。わたしは昨日、迷宮へ入ったのですが……」


 ギャングの悪事について、俺が知りうる限りを余さず報告する。エイミーの補足も入り、問題なく伝えられたはずだ。エイミー自身のことも含めて。


 さあ、どう出る……?


「なるほど……」


「ギャングのアジトにこれがありました」


 そう言って例の命令書を渡す。


「なに!? こ、これは、領主様の紋章……!?」


「領主様の!? 隊長、間違いないんですか!?」


「ああ……見てみろ……」


 この反応……。演技でなければ、この人たちは領主の悪事を知らないということになる。この場で捕らえられる心配はしなくて良さそうだ。


「領主様が、こんな……。何かの間違いでは? もしくはこの者たちの偽造ということも」


 なに? この流れはマズイか……?


「いや、この紋章は間違いなく魔力印で押したもの。偽造ということはあるまい」


「で、ではやはり何かの間違いで……」



「騎士が、自分の信じたいものだけを信じるな!!!」



「!!」


「領主様が悪事を働くなど信じがたいという気持ちはわかる。わたしも同じだ。あの方の指示で犯罪者の捕縛に動いたこともあるし、たびたび詰め所にやってきては労いの言葉をかけて下さる。騎士隊全体でお世話になってきた」


 領主の裏を知ってからだと、騎士への労いも打算にしか感じないな。こうして騎士にばれた際、逮捕をためらわせるための。


「だが! こうして証拠がある以上、少なくとも調査のために動かねばならないのは明白! それを信じがたいから、などと言って職務を放棄する気か!!!」


「はっ! 申し訳ありません!!」


「貴様の任務は何だ!!」


「この都市の平和を守り、民に安心を与えることであります!!!」


「そのために今できることは何だ!!」


「領主様の屋敷に向かい、事実関係を調査することであります!!」


「そうだ! 現在詰め所にいる全隊員に通達! これより2時間後、ラピス邸へ出発、この事件の調査を行う!」


「はっ! 承知しました!!」


 そう言って若い騎士は部屋を飛び出していった。どうやら心配はいらなかったようだ。


「すまない。我々は領主様にはお世話になっていてな。君のことを疑っている訳ではないのだ」


「いえ、こちらこそ謝らせてください。わたしはここに来る前、もし騎士隊も領主とつながっていたら王都へ逃げるしかない、などと考えていました。誇り高い騎士隊の皆様への侮辱、どうかお許しいただきたく」


「はっはっはっ! 素直な若者だな! 問題ない、その心配はしてしかるべきだ。調査結果は君にも伝えたい。どこに宿をとっているか聞いても構わないか?」


「はい、大丈夫です」


 泊まっている宿屋を伝える。街外れのやっとのことで見つけた宿だ。


「あの……」


 と、黙っていたエイミーが口を開いた。


「あたしの処分については……」


「ああ、そうだな。君は母親を人質にとられていたというし、そう重くはならない。安心してくれ。詳しくは調査が終わってから決定される。それまではこの街で待機していてくれ」


「は、はいッス。わかりました……」


 大丈夫そうだな。調査結果次第だが、一件落着と思って良いだろう。


「我々はこの後、迷宮でギャングの残党を捕縛する班とラピス邸を調査する班に分かれて行動する。迷宮に残してきたというギャングについても、詳しく教えてくれ」


「わかりました。でも連中、自首してくると思いますよ?」


「ああ、恐らくはな。だが往生際が悪い奴はいるものだ。逃げ出す奴がいないとも限らない。数人、向かわせるつもりだ」


 なるほどな。まあ問題はないだろう。詳細を伝える。


「ありがとう。では君たちは戻ってくれて大丈夫だ。ああ、念のため。エイミーさん。君は逃げ出した場合、罪が重くなる。大丈夫だとは思うが、間違いなくこの都市にいること」


「はい、大丈夫ッス」


「では、わたしたちはこれで」


「ああ、ご苦労様。気をつけて帰りなさい」


 今日は宿に帰ってゆっくりしよう。怪我もあるしな。流石に疲れた。

 俺たちは宿に向かって歩き始めた。

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