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貫き通せ我が騎士道  作者: 神木ユウ
第1章 大地国ガイア
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第24話 勝機の一閃

 リィンで敵を観察する。懐に石のようなものを持っているやつが5人。それぞれ2個持っている。恐らく魔法を放つ石だろう。何の魔法かはわからないが、10発は魔法が飛んでくると思った方が良いな。

 あとはリーダーが何か円盤のようなものを3個持っている。なんだあれは? あれも迷宮産の道具か?


「やれ」


 リーダーの号令で下っ端共が向かってくる。やや腰が引けているやつもいるな。俺が最初に見せた攻撃が全く見えなかったから、恐れているのだろう。

 石を持っている奴とリーダーは向かってこないようだ。部下だけ突っ込ませて自分は高みの見物ってか? 良い度胸だ。


「おらぁ!」


「死ねやぁ!」


 敵の中でも怖いもの知らずなのだろう3人が、安っぽい剣を構えて真っ先に突っ込んでくる。

 何のひねりもない振り下ろし。一歩下がるだけで避けられる。

 振り下ろして隙だらけになった姿を目の前で晒している。


「はぁっ!」


 フィーを横薙ぎに振るう。3人まとめてぶった斬った。

 その勢いのまま踏み込んでやれば、鏡花水月が印象に残っているこいつらは、ビビッて防御姿勢をとる。

 だが、


「そんな鈍らで……」


 防御しようと剣を立てている下っ端共が、きれいに5人横並びになってくれている。


「俺のフィーが止められるわけねぇだろっ!!!」


 剣の上から全員まとめて両断した。話にならない。腕もない、度胸もない、防具もない、武器も安物。こんな奴ら、傷があろうが何人でもやれる。

 突っ込んでくる敵の後方から、矢が飛んできた。計5本。なんともへろへろな矢だ。


「効かねぇ!」


 左手のリィンで全て叩き落す。弓も安物、腕も悪い。こんな矢は敵と切り結びながらだって落とせる。


「ザグルドさん! ヤバイですよ! こいつ強すぎます!」


「ああ、そうだなぁ。強えなぁ」


 下っ端共がいよいよ逃げ腰になってきたな。


「だがよぉ……」


「え……?」


 ザグルドと呼ばれていたリーダーが、傍らの下っ端の頭を鷲づかむ。

 そして、


「誰が手ぇ抜いて良いつったぁ!!!」


 そのまま頭を床に叩きつけた。


「てめぇらみてぇな雑魚共が束になったって勝てねぇことなんざわかってんだよ……。俺が攻撃するための隙を死に物狂いで作れやカス共がぁ!」


「そ、そんな……」


「ああ!!?」


「ひっ、了解しましたぁ!!」


 剣や槍をこちらに向けてくる奴が6人。後方で弓を持っている5人も矢をつがえている。


「お前らさ」


 あまりに哀れだ。こいつらはなぜここまで言われて戦うのだろうか。


「何で戦ってるんだ?」


「う、うるせぇ! てめぇみてぇな優秀な奴にはわかんねぇよ!」


 要するに落ちこぼれが行く当てもなく、行き着いた先がこのギャングってことだろうか。

 こいつらは今まで様々な悪事を働いてきたのだろう。落ちこぼれだから、なんて理由で。

 それは、あまりにも、


「くだらない」


「うるせぇぇぇぇ!!」


 激昂して襲い掛かってきた。リィンを鞘に収める。


「そんな意志のない攻撃、全く効かねぇんだよ……」



   花吹雪・七分裂き



 突き出される槍も、振り下ろされる剣も、飛んで来る矢も、全てまとめて叩き落す。

 武器がなくなって呆然としている目の前の6人を斬ろうとした、そのとき、

 ザグルドが大きく振りかぶって、円盤を投げた。


「チッ」


 飛んできた円盤をリィンを抜きながら弾く。弾かれた円盤はそのまま落ちる、はずだった


 ひとりでに旋回して再び飛んでくる。


「なにっ!?」


 また弾く。が、やはり戻ってくる。何だこれは!?


「あーあ、明確な隙もねぇのに使っちまったよ……。使うなら確実に仕留めに行きてぇのによぉ」


 そう言いながら更に2つ、円盤を全力で投げつけてくる。俺に向かってひたすら飛んでくる円盤。何度弾いても無駄だと言わんばかり。


「そいつは迷宮で出た道具でよぉ。指定した目標に向かって初速を維持したまま飛び続けるって代物だ」


 確かに、全く速度が落ちない。やけに全力で投げると思ったらそんな効果があるのか……。


「1回使うと壊れるまで目標に向かい続けるもんだから、使い捨てなんだ。できれば使いたくなかったんだがよぉ」


 そう言いながら武器を失い立ち尽くしている部下たちをギロリと睨む。


「こいつらが全く使えねぇせいで、トドメに1個、どころか全部使っちまった」


「さっきから部下に使えねぇ使えねぇ言ってるばかりだな。自分で向かってきたらどうだ? 部下の気持ちがわかるかもしれないぞ」


「ああ、言われなくてもやってやる」


 奴が袋から取り出したのは剣だ。2本、フィーと同じくらいの長さの直剣。だがその意匠は全く違う。目玉のような物が付いた、闇のような不快感を感じる黒い剣。

 その剣から妙な魔力を感じる。これは……悪性魔力、か?


「迷宮にずっと篭ってるとよぉ。髪がこんなんになるんだ」


 自分の半分くらい紫が混じった髪を見せてくる。


「でこうなると、だ。悪性魔力が少しずつ操れるようになってくんだ」


 悪性魔力を操れる!? まさかこいつらが、


「お前らが狼を急成長させて、群れを作ったのか!?」


「ああ? 狼? 何の話だ?」


 違う? 嘘かもしれないが……。そういえばこいつらはずっと迷宮に潜ったままなんだったか。


「ま、操れるっつっても、ほんの少しだ。この剣に纏ってるくらい」


 やはりあれは悪性魔力。あんなもので斬られたら、気持ち悪くなるじゃすまない……!


「迷宮に潜ってから今までの1年で、かなり部下も減っちまった。悪性魔力に耐えられなくなってなぁ。そういう意味じゃあ今残ってるこいつらはまだ優秀ではあったんだぜ?」


「その優秀な部下に対しても当たりが強いようだが」


「優秀っつっても雑魚共の中では、だ。所詮は雑魚さ」


 残っている部下たちが悔しそうに俯いている。が、同情の余地はない。結局はただの悪人だ。


「……つーかよぉ。てめぇはどうなってんだ? これだけ長々と話してる間ずっと円盤3つ弾き続けてんのに、息切れすらしやがらねぇ」


「お前みたいな悪党とは鍛え方が違うんだ」


「……そーかい。このまま時間稼ぎしても良いが……」


 ニヤリと嫌な笑みを浮かべてこちらを見てくる。


「奥に向かったあのガキは無事かねぇ?」


「……なんだと?」


「この奥にはよぉ。俺が操れるようになった悪性魔力で強化してやったモンスターがいる。アジトを守るように周辺をうろつかせてるんだが……」


 アジト周辺ということは、母親を助けに向かったエイミーが危ない!


「貴様……!」


「ククク、やっと良い顔になったなぁ。ほれ、急がねぇとあのガキくたばってるかもなぁ?」


 ザグルドに向かって駆け出す。奴だって俺の初撃で傷を負っているんだ。本調子じゃないはず!


「はぁっ!」


「おらぁっ!」


 フィーを振り下ろす。が、奴の剣に止められた。そのままリィンも振るうが、


「ふっ!」


 やはり止められる。普段ならここから奴の剣を滑らせ、隙を作り斬ってやれば良い。だが、


「チィッ!」


 今は両手を止めていられない。後ろから追いついてきた円盤が突撃してくるのを横に跳びながら弾く。


「おらおらぁ! 休んでんじゃねぇぞ!」


 円盤を弾くと既にザグルドが剣を振るっている。クソッ!


「っ!!」


 間一髪リィンを引き戻すのが間に合った。ギリギリで奴の剣を弾くと、すぐさま跳び退く。

 目の前を円盤が通り過ぎる。更に、


「くぅっ!?」


 魔法の火の玉が飛んできた。これを体勢を崩しながら更に跳ぶことで何とか回避。

 幹部の1人が石を使ったようだ。1回しか使えないのか、使い終わった石を捨てる。


(クソッ! 休む暇もない! 動く度に背中が痛むってのに……!)


「休む暇なんかねぇって言ってんだろぉ!」


「うるせぇ!」


 ザグルドの剣とフィーで切り結ぶ。体勢が悪い!


「おらぁ!!」


「ぐっ!」


 フィーを弾かれる。奴がもう片方の剣を振るう。更に円盤も迫っている。


「花吹雪・三分裂き!」


 無理矢理リィンで弾く。そこへ風弾、氷針が飛んでくる。

 だが何とか体勢を整えるのが間に合った。ここは一度退く!


「徒花・鏡花水月!」


 魔法を回避しつつ、一瞬でザグルドや円盤を引き離す。

 やっと一息つける……。円盤やザグルドは迫ってきているが、体勢を整えられたことが重要だ。


『マスター! これです!』


(どうした?)


『この回避方法なら時間が作れます! そうすれば……!』


(! 良い考えだ! それならやれる!)


 迫ってきた円盤を弾く。そしてザグルドの剣も、


「いい加減、落ちろぉ!!」


「断るっ!!」


 弾く。軽くバックステップ。目の前を石つぶてが飛んでいく。

 円盤が来る。弾く。同時にザグルドが剣を振るってくる。


(ここだっ)


「鏡花水月!」


 大きく距離を取る。そしてリィンを鞘に収めた。


 力を溜める。そんなに時間はない。既に円盤が迫っている。

 2秒か。これで、


「開花・大輪牡丹!」


 円盤を1つ破壊した。よし、2秒しかなかったが、円盤は壊せる!


「なにぃ!?」


 残りの円盤とザグルドが来ている。リィンを抜きなおす。


「クソッ! てめぇどうなってやがる!」


「言っただろ? お前みたいな悪党とは鍛え方が違う」


「クソガキがぁ!!」


「はぁっ!」


 リィンで円盤を、フィーでザグルドの剣を弾く。

 間髪いれずにザグルドがもう一方の剣を振ってくる。同時に炎の玉が飛来。

 だが、


「鏡花水月!」


「クソがぁ!!」


 距離を取る。そして、


「大輪牡丹!」


 もう1つ。


「クソクソクソッ! おい! てめぇら何見てやがる! 手伝いやがれ!!」


 周りの部下に助けを求め始めた。だが、そいつらには武器すらない。来た瞬間真っ二つだ。弓使いもあの腕だと、誤射が怖くて射ることができないだろう。部下たちは顔を見合わせるばかりでかかって来ない。


「使えねぇゴミどもがあああぁぁぁ!!!」


 そんなことをしている間に、


「大輪牡丹」


 最後の1つを破壊する。


「形勢逆転だな?」


「黙れぇ! そんな道具がなくてもてめぇみてぇなガキ、ぶっ殺せるんだよぉ!!」


 激昂したザグルドが突っ込んでくる。同時に残り5つの魔法が飛んでくる。


「お前らに大切なものを奪われた人たちの痛みを知れ」


 こちらから体勢を低くし突っ込むことで魔法を回避。ザグルドの目の前に跳び出す。そのときには既にリィンを鞘に収めている。


「死に晒せええぇぇぇ!!!」


「花吹雪・七分裂き!!!」


 奴の手から剣が吹き飛び、奴の血が花弁のように宙を舞う。


 ザグルドはもう、二度と起き上がらない。

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