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貫き通せ我が騎士道  作者: 神木ユウ
第1章 大地国ガイア
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第20話 迷宮探索

 迷宮内はレンガのようなもので組まれた四角い道になっていた。道の両サイドの壁に明かりはあるが、薄暗い。道幅は両手剣を充分に振り回せる程度。二人が横並びで戦うのは難しいか。いや、短剣使い二人とかならいけるか。長い武器を二人振り回せるほどの幅はない。


「流石に1階は人が多いな」


「そうッスね。3階までは結構混むッス。4~6階は人はいるッスけど少なめ、7階以降はほぼ人に会うことはないと思って良いッス」


「じゃあとりあえず4階まで最短で案内してもらって良いか?」


「了解ッス!」


 こんなに人がいちゃ何もできない。とりあえずモンスターと戦ってみたかったが、それも4階に行ってからだな。






 2時間くらいかけて2階に降りた。最短でこれか。エイミーが嘘を吐いていなければ、1階層だけでかなり広いな。


「思ったより広いんだな」


「迷宮都市の迷宮ッスからね。他にも迷宮はあるのにここだけが都市になったのは相応の理由があるッス。人がたくさん来ても全員がちゃんと探索できるほどに広いから。それに合わせて宝物も浅い階層でもそこそこ手に入るッス」


「他の迷宮は浅い階層では宝物は手に入らないのか?」


「というかそもそもこんなにちゃんと探索できるのが珍しいらしいッス。あたしも他の迷宮に入ったことはないから聞いただけッスけど、他はただの洞窟だったり3階層までしかなかったり、迷宮とも呼べない物が多いらしいッスね」


「なるほどな」


 俺が聞いたのは迷宮都市の迷宮についてだけだったからな。流石、ずっと迷宮都市にいるような子は、いろいろ聞いたことがあるらしい。





 更に2時間ほどかけて3階まで来た。もう昼が過ぎているか。人が多くて安全な3階にいるうちに昼飯を済ませておくか。


「ここで昼飯にしようか」


「わかったッス」


 早速上で買った缶詰を試してみよう。パンを2個、野菜スープを2個、果物を1個詰めてきた。野菜スープは小さい鍋に出して温めなおすのが良いだろうな。

 缶詰を開けてみる。どうやら問題ないようだ。とはいえこれは昨日買ったばかりのものだからな。この缶詰の真価を見るにはもっと長期間保存しなければならないだろう。


「おお、豪勢ッスね」


「エイミーは何を食べるんだ?」


「あたしは昼は食べないッス」


「え、そうなのか?」


「はいッス。そんなに余裕ないッスからね……」


 普段あまり雇ってもらえないんだろうか。昼飯を食べる余裕がないのは辛いな。んー、仕方ない。


「半分食って良いぞ」


「え?」


「パンと野菜スープ。缶詰1個ずつやるよ」


「でもそれじゃお兄さんのお昼ごはんが足りなく……」


「干し肉とかの保存食も持ってるから大丈夫だ。1人だけ目の前で食って腹すかせた子を放置なんてできる訳ないだろ……」


「ふふふ、腹すかせた子って……。あたしはこれでも15ッスよ?」


「マジで!?」


 今日一番の驚きだ。絶対12くらいだと思ってた。


「お兄さんは22くらいッスかね」


「俺は17だ」


「うええ!? それもビックリッスよ! めっちゃ鍛えられてるからもっと上だと思ってたッス!」


「ああ? 老けてるってか? 飯やらんぞ、貴様」


「そんなこと言ってないッス! ああ、ホントに持ってかないで欲しいッス! 謝るッスからぁ!!」


「冗談冗談。ほれ、好きなだけ食べろ」


「むぅ。ありがとうッス……」


 食べ始める。ずいぶん勢い良く食べるな。よほど腹が減っていたのだろうか。


「うま、うまいッス。うまいッス」


「いいから。感想言わなくて良いから落ち着いて食べろ」


「ああ、もうなくなっちゃったッス……」


「早いな……」


 こちらをじっと見つめている。俺がかじっている干し肉を見ているようだ。よく食べるな、まったく。

 袋から追加で干し肉を取り出す。目が輝きだした。もらえると思っているのだろう。

 口を開けてかじろうとしてみる。


「あー」


「ああ……」


「欲しいか「欲しいッス!!」早い早い……」


 からかうのもこれくらいにしておこう。何か泣き出しそうだ。


「これも好きなだけ食って良いぞ」


「やったーーー!!」


 何か楽しくなってきたな。こんなに美味しそうに食べてもらえるなら、食料も本望だろう。いくつか干し肉を取り出し皿に載せて渡してやる。

 同時に乾燥野菜でスープを作る。いつもの飯だ。食べたいだけ食べさせてやろう。






 さて飯も食い終わって出発だ。ここはまだ人も多い3階。さっさと次の階層へ向かおう。


「お、見てくださいッス! あれ、宝物ッスよ!」


 進む途中で何気なく横道を覗いたエイミーが、箱を発見した。

 あれが宝物が入っているという箱か。近づいて見てみる。ふたが上に開く箱だな。鍵穴のようなものがあるが……。


「これ、鍵は必要ないのか?」


「鍵開けの技能が必要になる箱もあるッス。でもこれはそのまま開けることができるッスよ。開けてみてくださいッス」


「ん? 俺が開けて良いのか? 見つけたのはエイミーだろ?」


「へ? そんなこと聞かれたの初めてッスよ。もちろんッス。あの宝物の所有権はお兄さんにあるッス」


「所有権は最初に箱に触れた者にあるって聞いたが」


「あたしは荷物持ちでついてきてるだけッスよ。この先モンスターが出ても戦えないッス。それなのに先に見つけたからって宝物の所有権を主張したりしたら、雇ってもらえなくなっちゃうッスよ」


 そういうもんか。それならこの辺りの安全な階層に自分で潜った方が儲かりそうだが……。まあこの辺もモンスターが出ないとは限らないし、1人で潜るのは危険なのかもな。


「じゃあ開けてみるか」


 パカっと簡単に開いた。中にあるのは……何だこれ? 石?


「これは魔法が込められている石ッスね。何の魔法かは鑑定してもらわないとわからないッスけど、魔法が使えない人でも込められた魔法が使えるんス。回数制限はあるッスけどね。だいたいは1回ッス」


「へぇ、便利なもんだな」


 俺は魔法が使えないからな。良い魔法が入っていたら、いざというとき使えそうだ。


「お兄さんは魔法は使えないんスか?」


「ああ、俺は魔力がからっきしだからな」


「……へぇ、そうなんスか」


 大きさは手よりも小さいただの石だし、これは荷物持ちに渡すまでもないだろう。自分の袋に入れておこう。

 便利そうな宝物も手に入れたし、思ったより楽しいかもな、迷宮ってのも。





 4階へ来た。ここからは人も少なくなってくるらしいし、リィンを抜いて警戒しておくか。


『……マスター』


(ああ、わかってる。今は良い)


『……気をつけてね』


 リィンの能力で周辺を把握。この階層も3階ほどではないにしても、人はいるようだな。


「あれ、もう武器を抜くんスか?」


「ああ、短剣だけなら抜いておいてもそんなに負担にならないからな。いざというときのために、あらかじめ抜いておく」


「……そうッスか」


「とりあえず4階も最短ルートで案内頼むよ」


「ここからは前に行ってもらって良いッスか? 後ろから方向を指示するッス」


「ああ、人も少なくなってモンスターが出るかもしれないからな。わかった、先に行こう」


 前に出る。人もそこそこいるから、4階も最短で抜けてしまおう。道中でモンスターが出たら試しに戦ってみれば良い。

 エイミーの指示でしばらく進む。今更だが、良くこんなにルートを覚えていられるもんだ。一本道とかならともかく、そこそこ分かれ道がある。それを全く迷わず進むには、いったいどれだけ潜れば良いんだろうな。


「エイミーは何年くらい迷宮に潜ってるんだ?」


「へ? んーと、1年くらいだったッスかねぇ」


「1年!? それだけでこんなに道を覚えられるのか。すごいな」


「へへ、そうッスか? 記憶力良いのかもしれないッスね」


 1年か。1年だと、俺なら2階層分くらい覚えるのが限界だろうか。最短ルートだけならともかく、フロア全体となると2階層分でもキツイかもしれん。それを7階までは完璧、8階もある程度覚えているときたもんだ。迷宮で仕事をしようと考えるだけはある。


「それだけ記憶力があるなら他の仕事もできそうなもんだが」


「……そうッスかね。まああたしには迷宮が合ってるッスからね!」


「もう8階分も道を覚えてるんだもんなぁ。確かに合ってるかもな」


 さて、そろそろか。


「あ! モンスターッス! 針トカゲッス! 針を飛ばしてくる上に、近づくと針山の背中を向けて突進してくるモンスターッス!」


 感知していたモンスターが見えた。針トカゲね。とりあえず試しに戦ってみよう。

 フィーも抜いて走り出す。

 前情報通り、針を飛ばしてきた。回避する程度のスペースはある。最小限の動きでかわしてそのまま突っ込む。

 それに合わせるかのようにトカゲも背中から突っ込んできた。バカが。戦闘中に背中を見せるやつがあるか。すれ違い様に両断。問題なく真っ二つだ。


「よし、大丈夫そうだな」


「おおー! スゴイッスね! 針トカゲの背中は結構硬いんスよ! それを簡単に真っ二つなんて」


「ま、これくらいはな。奥に行くともっと強いモンスターが湧いてくるんだろ? この辺で苦戦はしてられない」


「奥を目指すなら確かにそうッスね。4~6階をメインにしてる人たちからすれば、針トカゲは硬い方ッスけど、それでも斬れない訳じゃないッス。もっと奥に行くならなおさら苦戦してられないッスね」


 砂漠のサソリよりよっぽど柔らかかった。このレベルならまだまだ奥を目指せるな。今のところ、悪性魔力の影響もほぼ感じない程度だ。

 まだ4階に入ったばかり。さっさと進もう。フィーを鞘に戻して、歩き出す。リィンは抜いたままだ。




 戦闘中、懐のナイフに手を伸ばそうとして止めたエイミーのことをリィンで感知しながら、俺はエイミーの前を歩く。

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