第16話 閑話:パーティ結成
閑話3話の内の1話目です。この次の話を早く投稿したいので、閑話3話は一気に投稿します。
バルドたちのパーティ結成の話です。メンバー加入のところだけ書いたのでかなり駆け足ですが、こんな経緯があってこいつらは集まったんだな、と理解していただければ。
俺はバルド。15歳。今日まで親友のバンドスと一緒に鍛えてきた。いよいよ協会の会員になってモンスターを討伐する。
なぜ鍛えてきたのか。そんなのは決まっている。7歳の頃、親父がモンスターに殺された時のことは、今でもはっきり覚えている。
俺、親父、お袋、バンドスとバンドスの父親とで、街の外へ出かけた。王都へ旅行に行くためだ。
バンドスの家とは、バンドスの母親が病気で亡くなる前からずっと仲が良い。こうして家族合同で旅行に行くことも初めてじゃない。
馬車に乗ってのんびりと王都へ向かっていた道中、モンスターに襲われた。護衛は雇っていたが、どうもハズレを掴んだらしく、逃げ出しやがった。
俺の親父とバンドスの親父が時間を稼いでくれている間に、お袋が俺とバンドスを連れて逃げた。
親父たちは特別鍛えているという訳じゃない。時間を稼ぐのが精一杯で、とてもモンスターを倒すことなんてできる人たちじゃなかった。
馬車は襲われたときにはもうそれなりに王都の近くまで来ていて、なんとか逃げ切ることができた。モンスターは門番の騎士が討伐してくれた。
それから、お袋が1人で俺とバンドスを育ててくれた。仕事が忙しいのだろう、日に日に疲れていくお袋を見て、俺はモンスターへの憎悪を抱き続けていた。
だから鍛えた。バンドスも俺の意見に賛同してくれた。二人でモンスターを狩ることができるように鍛え続けた。
そして今日、協会の会員になりに来た訳だが、
「うーん……」
建物の前でうろちょろしてる子供がいた。明るい茶髪の女の子。協会に入りたいが踏ん切りがつかない、といったところか。
「おい、入らねぇならどきな」
「え……?」
小さいな。俺の腹くらいまでしか身長がねぇ。こんな子供に仕事ができるのか?
「お前、何で協会に入りてぇんだ?」
思わず聞いていた。心配だったのもあるし、こんな子供が1人で仕事を探しに来るなんて、きっと事情があると思った。
「捨てられたから……」
それはありふれてはいるが、酷い話だった。この子供は貴族の6女らしい。下級貴族で金がねぇくせに、子供ばかりいっちょまえにこさえやがるもんだから、養いきれなくなって捨てやがったそうだ。その捨てられた子供がこいつだった。
ふざけた話だ。勝手に子供を作って、勝手にパンクして。なのにそのしわ寄せは子供に来るってんだから。
その理不尽さに、俺は思わず、
「お前、俺らと組まねぇか?」
そう声をかけていた。
「お前、俺らと組まねぇか?」
目の前の大男にそう言われて、わたしは思わず頷いていた。
この男が純粋に心配しているように見えたのもある。わたし1人で仕事をすることに不安があったこともある。ただ単に寂しくて仲間が欲しかったというのもある。
理由はいろいろあるけれど、何はともあれわたしはこの男と組んでみることにした。別に気に入らなければ離れれば良いだけだ。
「俺らはモンスター討伐をしてぇんだが、大丈夫か?」
「問題ないわ」
「本当に?」
「わたしは魔法が使えるのよ。モンスター討伐くらいできる」
「ほう、流石は貴族ってところか」
「元、よ。家名も捨てたわ。わたしのことはサリアと呼んで」
「おう。俺ぁバルド。こっちはバンドスだ。よろしく嬢ちゃん」
「誰が嬢ちゃんよ。わたしは15よ」
「なに? 同い年じゃねぇか」
「はぁ? あんたたちも15だって言うの? 冗談でしょ?」
これがわたしたちのパーティの始まり。長い付き合いになる大男どもとの出会いだった。
パーティ結成から2年が経った。俺たちは順調に仕事をこなしていた。
そもそも協会の会員に魔法使いなんてほとんどいねぇ。サリアがいるというだけでも他の連中より有利だった。もちろん俺らの強さもあるがな。
今日は仕事は休みってことにした。流石に毎日モンスター討伐なんてやってられねぇからな。
たまにはのんびり買い物でも、と思って三人で街に繰り出した訳だが、
「待ちなさい! わたしのお財布返せーー!!」
見事にスられた。俺たちの意識の隙間を突く鮮やかな手並みだ。あのボロボロの服装からしてスラムのガキだろうが、この逃げ足といい厄介この上ないぜ。
「はぁ……はぁ……。やっと捕まえたわよ……!」
夕方まで走り回って魔法まで駆使してやっと捕まえた。
「くそっ……離してよ……!」
「嫌よ、そのまま風に押しつぶされてなさい」
「まあまてよ、サリア。まだガキじゃねぇか」
「はぁ? ガキって。どう見ても同年代でしょ」
「あ? マジか。こんなチビがか?」
「あんたがデカイのよ! いい加減わかりなさいよ!」
「まあ同年代でもだ。生きるために仕方なくってやつだぜ。財布は取り返したんだから良いじゃねぇか」
「良くないわよ! 甘くしたら絶対また狙われるんだから!」
まあいちいち狙われると面倒ではある。だったら、
「だったらこいつを俺らのパーティに入れちまえば良い」
「はぁ!? あんた正気なの!?」
「仕事させて金稼ぎさえすりゃスリなんてしねぇだろ?」
「仕事をくれるの……?」
「ああ、俺が代わりに入会届けを書いてやる。協会の会員になって俺らと組んで仕事すんぞ!」
「ちょっと! 勝手に決めるんじゃないわよ! バンドスも何か言いなさいよ!」
「問題ない」
「何が問題ないのよ! ああもう勝手にしなさいよ!!」
ジーンが加わった。結果的にこの判断は大正解だったな。サリアはしばらく納得してくれなかったが、ジーンが真面目に働くこと、その能力が高いこともあり、なんだかんだ認めてくれた。
ジーンが加わって5年、今ではすっかり4人パーティが板についてきた。
「来るよ! 数は5!」
「おう! バンドスと俺で抑える! サリア、後ろから一掃しろ! ジーンは遊撃!」
今日は王都近くの山に来た。山頂の鳥の巣から卵を採ってくるためだ。いつでもあるめんどくせぇ常設依頼だが、仕事がねぇときはありがてぇな。
「ん?」
「どうした、ジーン」
「いや、何か人っぽい気配を感じるんだけど……」
「あ? 山登りか? 酔狂な奴もいたもんだな」
「いや、なんか全然動かない。倒れてないかなこれ」
「ああ?」
倒れてる? 確かにここは山だが、王都から半日もかからねぇ場所だぞ? そんなところで行き倒れって、何があったらそんなことになんだ?
「まあ確かめてみるか。案内してくれ」
ジーンに先導されて人が倒れているところへ向かう。
そこにいたのは槍を持った長身の女だった。傷がある訳じゃなさそうだが……。
「おお、人だ……。食べ物をくれないか……」
「食べ物って……。え? こんな場所で飢えてるっていうの? 何でそんなことになったのよ?」
「とりあえず、ほれ。干し肉くらいしかねぇが、食えよ」
「ありがたい……」
ガツガツと俺らの非常食を食い漁る女。ったく、これが王都近くじゃなかったら俺らの飯がなくなるところだ。
「ふぅ、ごちそうさま。助かったよ」
「で? なんで倒れてたのよ」
「いやぁ、修行に夢中になってたら食事を忘れててね」
「はぁ?」
「じゃ、あたしはこれで。ありがとう。また会ったら何かお礼をさせてもらうよ」
そう言って去っていこうとする。いやいや、
「バンドス、捕まえろ」
「ああ」
「え? ちょっとなんだい?」
「いや、修行に夢中で行き倒れなんて奴、1人で行かせられる訳ねぇだろ…」
「いやいや、今回はたまたまだよ。普段はちゃんと2日に1回は思い出すから……」
「なおさら行かせられなくなったわ! 何だそれ! 普段から2日に1回しか飯食ってねぇってのか!?」
「え? だって修行したり、修行のおさらいしたり、新しい修行を考えたりしてたら、時間なんてあっという間に過ぎるだろ?」
「そんなわけあるか!! おいあんた名前は?」
「マリーだけど……」
「よし、マリー。お前今日から俺らのパーティに入れ」
「え? いやいや修行したい……」
「黙れ! 食い物恵んでやったお返しだと思って入れ!」
「ええ……」
無理やり俺らの仲間に加えた。放っておいたら絶対その辺で野垂れ死ぬ。無理やりにでもまともな生活をさせなくては。
そんなこんなで仲間に入ったマリーだったが、戦力としては申し分なかった。俺とバンドスの二人がかりで互角ってところだ。修行修行言ってるのはだてじゃねぇってこったな。
俺らは基本モンスター討伐で金を稼いでる。ひたすら実戦だから反復練習とかはできねぇが、修行にもなる。修行しながら金を稼げる天職なのでは? とか言って、マリーも満足しているようだ。
妙な縁があって集まった俺ら5人だが、うまくやれてる方だと思う。
どいつもこいつも居場所がないような奴ばかりだ。そんな奴らが集まって居場所を作れるなら、それはそれで良いことなんだろう。
きっとずっと、楽しくやっていける。そう思う。




