第14話 勝利の宴
やっと牙が取り終わった。流石に150もあると大変だな。
「よし、今度こそ帰るぞ!」
「やっと帰れる……。歩いて帰るの考えるだけで疲れるわね」
でもこれが大金になる訳だ。そう考えると少しわくわくするな。
帰りは何事もなく王都まで戻ることができた。まずは依頼達成の報告をしに協会かな。門を通ると2日ぶりの王都の街並みが見える。故郷という訳でもないのに帰ってきたって感じがするな。
「門に詰めている騎士に報告してきた。城の方にも伝えておいてくれるってよ」
「じゃあ次は協会ね。依頼達成と依頼の不備について報告しなきゃ」
全員で協会へ向かう。途中で飴が売ってたからいくつか買った。舐めながら行こう。甘みが体に染み渡る。
「あ、良いわね。わたしも買ってこよ」
「あげますよ?」
「良いの? ありがとう!」
「あたしにもくれないか?」
「お、俺にもー」
やはり甘いものは良い。故郷にいたころはほとんど食べられなかったからな。しばらくのんびりと王都生活を満喫しても良いかもしれない。
飴を舐めている内に協会に着いた。
「じゃあ俺は受付に報告してくるから、お前らは好きにしてろ」
椅子に座って周りを見てみる。もう昼頃だからか、人が少ない。受付カウンターもいくつか空きがある。人が少ない時は受付も交代で休憩でもしているのだろう。
「改めて、今回はありがとう、ユーリ。わたしたちだけだったら間違いなく帰ってこれなかった」
「うん、そうだね。間違いない。ありがとう。誰一人欠けることなく帰ってこられたのはユーリのおかげだ」
「あたしも礼を言うよ。修行し直さないとね」
「感謝する」
口々にお礼を言われてしまった。自分の力が人を助けたと思えば誇らしくもあるが、ここまで言われると何だか恥ずかしくなってくるな。
「いやいや、そんなに言われる程のことじゃないですって! 皆さん無事で良かったです」
「わたしたちはさ。お気楽に見えるかもしれないけど、実は皆それぞれ何かしら理由があってこのパーティにいるんだ。だから普段はあんまり表に出さないけど、このパーティを大切に想っているのよ」
「それを守ってくれたユーリには、感謝してもしきれないんだ。俺だけじゃなくて、皆ね。バルドだって同じ気持ちのはずだよ」
「ああ、もちろんだぜ! だからよ、ユーリ。ものは相談なんだが……」
いつの間にか戻ってきていたバルドさんが話に参加してくる。相談?
「俺らのパーティに入らねぇか?」
勧誘、か。確かにこの人たちはとても良い人たちだ。一緒にいて楽しいし、背中を預けても良いと思えるくらいには信頼もある。だが、
「すいません。パーティに入ることはできません」
「ダメか……。理由を聞いても良いか?」
「世界を回りたいんです。この国だけじゃない。他の国も全部回って、もっと強くなりたい」
「世界か。大きいね。やっぱ若者は大きい目標をもってなんぼだよね!」
「ああ」
「あたしも修行の旅してたからね。気持ちはわかる」
「あと……」
「あと?」
強くなりたい。が、それだけじゃない。
「剣を探したいんですよね」
「剣? ていうとお前が持ってるような?」
「ええ。この2本は両方遺跡に収められていたものなんですよ。いろんなところを回ればもっと見つかるかなって」
「ほぉ。てぇと俺らは剣に負けた訳だ」
「あ、いや、えっとそういうわけじゃ……」
俺からすれば剣たちは大切な相棒だが、他の人からすればただの武器だ。比べられて気分良くはないだろう。しまったな。どう言えば良いだろうか。
何と言えば良いか迷っていると、突然バルドさんが大声で笑い始めた。
「くっははははは! いや、良い! お前は自分の好きなようにすれば良い! こんなとこにくすぶってるような器じゃねぇわな!」
そう言ってバルドさんは、ドンッ!! っとやけに重そうな袋をテーブルに置いた。
「こいつは今回の依頼の報酬だ。全員で山分けしても1年は生活できるほどの大金だぜ」
「おおー! スゲー!」
「こんなに!? 命かけたかいがあるわね!」
「こいつを半分! お前にやる!」
「半分!? いやいや、均等に分けましょうよ!」
「いや、妥当なところじゃないか? ユーリ1人では勝てなかっただろうから半分はこちらがもらうが、逆にユーリがいなければあたしたちは勝てなかっただろう」
「そういうことだ。戦力として見たとき半々くらいだろうってな。もしかしたらユーリ6俺ら4くらいの戦力かもしれんが、まあそこは大目に見てくれや」
「受け取れませんよ! 皆さんだって楽な生活じゃないんでしょう?」
「俺らは結構稼いでるから大丈夫だ。ユーリほどじゃねぇが俺らだって強い方なんだぜ?」
「旅をしてるんでしょ? わたしたちからの餞別だと思ってもらっておいて」
「問題ない」
餞別か。そう言われると返すのも失礼だな。ありがたいのは確かだしもらっちゃうか。
「えっと、じゃあいただきます。後悔しても遅いですよ?」
「しねぇっての。その代わり今晩の打ち上げはお前持ちな!」
「ゴチになりまーす!」
「いっぱい食べちゃうわよー!」
「楽しみにしてるよ、ユーリ」
「ふっ」
「えー、仕方ないですねぇ」
その日の晩、皆で食べて飲んで盛り上がった。
こんなに盛り上がる食事はしたことがない。宴会なんて俺には縁がなかった。
良いものだ、本当に。仲間という存在は。
こんな人たちを守るために、俺は強くなったのだろう。
まだまだ弱い。あの狼が万全の状態だったら勝てたかどうか。
それじゃあ駄目なんだ。大切な人たちを、どんな脅威からでも守れるように。
もっと、強く
「おや、狼の群れが倒されてしまいましたか」
あの群れはいずれ倒される予定だったとはいえ、それはもっと後。多数の被害を出してから、大人数を動員してやっと、という予定だった。
それをこんなに早く。明らかな計算外の事象。
「単体で脅威になるのは騎士団長のみだと思っていたのですがね」
あの黒髪の青年。脅威となり得る新たなる敵。これを見出すことができたのだから狼共も無駄死にではなかった。
が、それでも
「計画の修正は必要ですか。私もまだまだ、ということですかね」
知略のレッジ、などと呼ばれているが、計算外の出来事がある度にいちいち修正を加えねばならない内は、とても「知略の」などと自称はできない。
更なる研鑽が必要だ。
「全ては魔王様のために」
今は、与えられた任務を早急に達成しなければ。
今更ですが、この作品の舞台となっている大陸について。
ドーナツをイメージしてください。穴部分が封印の地、魔王の住む領域です。封印の地はドーム状に覆われていて、中がどうなっているのか確認できません。
ドーナツを×印に切って、西側が大地国ガイア、北が流水国アクア、東が清風国ウィンド、南が火炎国バーンになります。
ガイアとバーンの間が砂漠です。四属性で調べてみると、なぜそこに砂漠があるのか、他の国の間には何があるのかがわかるかもしれません。




