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DEAR MILLENIA~ディア・ミレニア~  作者: 風雲 香月
~神聖ザカルデウィス帝国 旅禍篇~
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~神聖ザカルデウィス帝国後編~ 極光

次話更新、お待たせいたしました!ディア・ミレニア、お楽しみください!

 戦争は終わった。この戦争は後に、第一次インペリウス開戦と呼ばれる事になる。その開戦で参加した皇国レミアムの旅禍は、英雄として伝えられて、後世に語り継がれる事になるのであった。ゼイフォゾン・ディア・ミレニア、アルティス・ジ・オードの名は、これを契機に世界に名を轟かせるものになった。そのゼイフォゾンは、ルシファーを認めると、目の前に立った。ルシファーはなんだかバツが悪そうな顔をしていた。言いつけを守らなかった不忠に対して、怒っているのではないか。それだけではない、無断でこの戦争に加担した事について怒っているのではないか。ルシファーはかなり緊張していた。しかし、ゼイフォゾンは怒っているどころか、ルシファーを褒めたたえた。この戦争には、ルシファーという影がいなければ、こうして終結する事はなかったと。だが、肝心なところをまだ訊いていなかった。



「何故来たのだ?ルシファー……お前の活躍は素晴らしいが、このミカエラに潜んでいたという事は、それなりの理由があるのだろうな?」


「理由など……ありません。私はゼイフォゾン様の心配を勝手にして、ここまでやってきたのです。すみません……私は副官として失格です」


「いや、私は子守りが必要か……とは思ったが、まぁいいだろう。お前は副官として失格ではない、ルシファー。お前は素晴らしい仕事を果たしてくれた。お前の活躍を認めよう」


「ありがとうございます。このルシファー、いつまでもゼイフォゾン様の傍で仕えます。それでよろしいでしょうか。できれば、このミカエラの守護に専念したいと思います」


「それでいい。私の副官ならば、このミカエラを任せたい。いざという時に切り札として動いてもらう」



 ルシファーを見たゲンドラシルが不審に思っていた。ゼイフォゾンと面識があるのは分かるが、そのゼイフォゾンが切り札と明言したあの魔族はいったいどういった存在なのであろうか。ゲンドラシルは、ゼイフォゾンに言葉を投げかけた。



「この魔族は何だ?」


「私の副官のルシファーだ。力の程度は……そうだな。七英雄と同等以上だ。魔界の皇帝でもある」


「そんな化け物を副官にしているのか。ゼイフォゾンが化け物なのは分かるが、ここまでとはな。ある意味、尊敬するよ」


「化け物とは不遜な物言いだな。余はゼイフォゾン様に最も近しい魔神であり、魔界にて最強の存在であるぞ。今すぐ言った事を取り消してしまわないと殺す……」


「ルシファー、ゲンドラシルは私の友だ。お前こそあまり不遜な物言いは止すのだな」


「は……申し訳ありません」


「魔界の皇帝を副官に据えるとはな。皇国レミアムの帝王は何を考えているのか、分からんな。だが、このルシファーってのは、あの神話伝承にしか登場しない、あのルシファーだろう?魔界で至高、究極、最強の三文字を欲しいままにして、百年戦争でも猛威を振るった……」


「その通りだ。余は百年戦争末期に全ての魔神を率いて数々の敵を蹂躙していった。そして、七英雄に数えられるか否かのところで、その座を帝王ゴーデリウス様に譲った。余はその七英雄の器ではない。しかし、選ばれるのなら、そう在りたかったのも事実だ。叶わぬのが運命であるが、それは仕方ない事。余はもっと大きな存在に引っ張られていくのが良かったのかも知れない」


「エクスマギアクレアに勝てるのか?」


「互角以上に渡り合えるとは思う。しかし、決定打はなく、膠着状態に陥る事だろう」


「そ、そうか……」


「ルシファー殿、この度は世話になったな。この戦艦はルシファー殿に守られて、今ここに在ると言ってもよい。ありがとう」


「オメガ殿、この戦艦の指揮、見事であった。この戦争を我らの勝利に導いたのはお前だったのかも知れない」


「大袈裟だ。しかし、終わったな……あぁ、これが神聖ザカルデウィス帝国の、インペリウス大陸の夜明けか」



 この後、ゼイフォゾンとアルティス、カオウスとゲンドラシルはミカエラに搭乗し、格納庫まで行った。そして、ギルバートとアイゼン、エアラルテはしばらく独房に入っていたが、解放された。ギルバートはそのまま元帥という地位のまま、アイゼンとエアラルテも将軍という地位のまま置かれた。国民はこの第一次インペリウス開戦の情報を得る事はなく、普段通り生活していた。それで良かったのかも知れない。知らないままでいい情報は、きっとあるのだ。帝国の情報を握る軍部も、そういった戦争があった事を隠すようにした。早い話が隠蔽だが、超大国ならではの動きとも言えた。ソーンは誰に何かを言わずに姿を消してしまった。また、狩りにでも出掛けたのかも知れない。何をとは言わないが、多分、人間を。悪しき人間を片っ端から消していくのが生き甲斐なのかも知れない。これからは話し合いと、合意による執政を行う事が決まった。将軍級の会合、そして元帥をトップとする評議会で、血による粛清ではなく、より良くするための話し合いをする事が決められ、それに則った法律を作る事が求められた。その法律は下院と上院で可決が取れなければ施行しない事も決められ、重鎮の横行を防ぐ手立ても充分に行われた。軍部である五大竜騎士団はそのままに、極めて落ち着いた話し合いによって、国家の危機に瀕しなければ動かさない事を決めていた。あくまでも軍部は自衛の手段と位置付ける事によって、問題はそうしないための外交努力をする方針になった。そう、鎖国が解除されたのである。長い鎖国の歴史は覆された。元帥ギルバートは、敗北を教訓として、自分の国だけが特別なのだという思想を捨てた。ゲンドラシルは国の相談役になり、カオウスは名門の貴族を総括し、アイゼンは元帥ギルバートの右腕として動き、エアラルテは引き続き帝国の頭脳として活躍した。


 そして、ゼイフォゾンとアルティス、ルシファーは神聖ザカルデウィス帝国の英雄として讃えられる事になっていたが、それはまた別の話である。とにかく、ゼイフォゾンたちはミカエラの艦内で各々、ゆったりとした時間を過ごしていた。その時間は束の間の休憩であった。ゼイフォゾンは本を読み、アルティスは鍛練に励み、ルシファーはミカエラのシステムの把握に努めた。その時間で、神聖ザカルデウィス帝国の改革は目まぐるしく進んでいた。将軍たちの休息はなく、政治家も同じであった。国民はそれを知らなかったが、それでも時間は歩み続け、ある日、ゲンドラシルとカオウスがミカエラにやってきた。それを見たアルティスが、ふたりを艦内へ入れたが、その顔は疲れ切っていた。しかし、どうしても伝えておかなければいけないといった表情で、言葉を発したのはゲンドラシルであった。ゲンドラシルは、最後の言葉を投げかけるというよりは、これからまたどこかへ出発する意思を示すかのように、ゼイフォゾンに言葉を発した。



「俺たちもお前たちと旅がしたい」


「僕たちで決めた事なんだ」


「お前たち、国は、ザカルデウィスはどうする?お前たちがいなくなったら、この国の執政はどうする?それに、また元帥ギルバートがどう動くか分からぬぞ」


「心配したような事は起きないさ。俺たちは至って正気だ。この国は一人に集中した権力よりも、分散して国家の安全保障を行うシステム構築が出来上がっている。それに、もう誰かに心配されるようなお守りの必要な国じゃないって事ぐらいは理解してくれ。神聖ザカルデウィス帝国はこの光都エリュシオンだけじゃない、このインペリウス大陸の全てが、帝国なんだ。それは変わらない。この判断は後の歴史家が評価してくれるさ」


「そこまで言うのなら止めはしないが、本当にいいんだな。俺たちはこれから皇国レミアムに一旦帰るぞ。神聖ザカルデウィス帝国の人間が入ってきたら、それはそれで問題になるとは思うが……」


「あの将軍アイゼンがやった事は、彼らと混同してはいけない。今は人類全てが成長する時期なのだ。許し合う事もまた、成長なのだ。私もガトランの悲劇は忘れてはいない。しかし、乗り越えなければいけないのだ。皆が理解する時はきっとやってくる」



 全ての生命体の精神的成長のためには、それぞれの遺恨の清算として許し合う事が肝要だと説いたゼイフォゾンにとって、神聖ザカルデウィス帝国は一番許せない国であったが、それでもゲンドラシルとカオウスを受け入れたのには理由があった。神聖ザカルデウィス帝国の人間は全てが悪であると決めつけるのは早いと皇国レミアムの皆に、ドグマ大陸の皆に知ってもらいたい。人が変われば、国も変わる。第一次インペリウス開戦で死人は出なかったが、その消耗は激しく、とても世界統一などできる状況ではなかった。国を立て直すほうが忙しかった。それに、今の政治改革で、世界統一は政策の中には含まれていない。つまり、他国を攻める事はしないという事である。それに神聖ザカルデウィス帝国は鎖国を解除した。これからは橋渡しが必要になるであろう。その役割として、ゲンドラシルとカオウスは適任かも知れない。


 とにかくミカエラに荷物を積んでいった。その中には、エクスマギアクレアの外皮と大鱗が含まれていた。それで何をやろうという訳でもないのだが、ゼイフォゾンには考えがあるようであった。エクスマギアクレアの外皮は柔軟性に富み、その硬度はガドラムのそれを遥かに上回っていた。大鱗も柔軟性に富み、硬度は外皮のそれとは段違いであった。外皮には神の魔力…神力を循環させる神経伝達組織が網目状に張り巡らされており、大鱗はそれをダイレクトに外に流す事ができる機能が組み込まれていた。そして特筆すべきなのは、それを完全にシンクロさせると、全てのエネルギーを最小限かつ最大の効果を得られるように全て自動化されるという事である。そう、エクスマギアクレアは神力を大鱗と外皮に纏い、その硬度と柔軟性で防御するので、人類が傷をつける事は不可能だったのだ。七英雄の力の一端をどうしようが、それはどうでも良かったが、ゲンドラシルとカオウスは少し怪訝な顔をしていた。まさかどこかに売る気ではないだろうか。だが、ゼイフォゾンはそんな気は毛頭なかった。


 ゲンドラシルとカオウスも旅支度をした。ふたりは家族に別れを告げたばかりであるという。しばしの間、帰らないという事である。ミカエラに残っていたエクスキューショナーの人間はどこかへと消えてしまった。その代わり、カオウスの副官であるオメガが残っていた。そして、黒竜騎士団の人間はミカエラに集結していた。ゲンドラシルは自分の部隊を副官に任せ、国に置いていくという決断をした。そして出発の時が来た。その船出は穏やかであった。皇国レミアムに帰るのである。ゲンドラシルは緊張していた。カオウスも緊張していた。ミカエラの隣を、邪竜王グラムと灼竜王ダーインスレイヴが飛んでいた。邪竜王グラムの瘴気は全ての物質を廃棄物にしてしまうので、専用の鎧を着用していた。それで限定的ではあるが、瘴気の事は気にしないでいられた。ゼイフォゾンはブリッジで海の景色を捉えていた。太陽が海を照らし、ミカエラにも光を注いでいた。一言で言うと、綺麗である。こんな夜明けの綺麗な朝は初めてである。神聖ザカルデウィス帝国の人間の心の、精神の、誇り高さはこの広大過ぎる大陸の影響だろうか。それともこの大海原の影響によって育まれたものだろうか。ゼイフォゾンは清々しい気持ちになった。しかし、その清々しい気持ちを邪魔する者が現れた。ミカエラの航路を邪魔してくるように、おびただしい艦隊が姿を現したのだ。



「レーダーに反応あり!神聖ザカルデウィス帝国の艦隊です!数は三十、距離五千!」


「残党か……それも旗艦型が五、これはまずいな。しかし、ルシファーに頼むわけにもいかない。ここは対艦戦を受けて立つしかない。オメガ、頼めるかな?」


「お任せください、ゼイフォゾン様。対艦戦用意!ブリッジは狙うな、両翼だけを落とせばいい!」


「各砲座、各個に攻撃開始!対空防御忘れるな!」


「識別確認できた!ギルバートの艦隊とエアラルテの艦隊の混合!」


「なるほど……押し通れ。この戦艦に手を出した事を後悔させてやれ。グラムとダーインスレイヴにブレスを撃たせるなよ。やればただの虐殺になる」


「カオウス、このスクランブルは……」


「来たね、残党が。貴族たちも言っていたんだ、この後、行き場を失った者たちが賊になって国を引っ掻き回す可能性があるって。ゲンドラシル、黒竜騎士団を動かすよ。君はブリッジに行って状況を見極めてくれ。僕はまだやる事があるから。こういう時、ルシファーがいてくれればいいんだけど」


「ルシファーはゼイフォゾンとやる事があるようだ。残党が何をしようが、このミカエラの相手ではないと思う。オメガの指揮に任せるしかないな。黒竜騎士団を動かすならいいが、殺して勝利を掴むなよ」


「分かってるよ。このミカエラは落とさせない。この戦艦がいかに丈夫でも残党の数はかなりいると思うから」



 カオウスは、黒竜騎士団を率いて戦艦から出撃した。邪竜王グラムに跨ったカオウスは、自身の得物、テトラグラマトンを持って残党の艦隊に攻撃を仕掛けた。残党の艦隊からもドラゴンナイトが出撃し、混戦になっていった。しかし、ミカエラの対空砲火は密度が濃く、他のドラゴンナイトが近付けるものではなかった。そして、ミカエラは副砲を発射しつつ前進していた。残党の艦隊の指揮系統は最初からまとまっていなかった。なので、突破するにはあまり難しい事ではなかった。そして、殿は黒竜騎士団に任せた。カオウスはその役割を見事に果たしていった。五隻の旗艦型がミカエラに集中砲火を浴びせる。その威力は原理の力のシールドを破る事はできなかった。だが、その艦隊を放っておくわけにもいかなかった。皇国レミアムに侵入でもされたら、面倒な事になる。追いかけてきて、ドグマ大陸にインペリウス大陸のいざこざを持ち込むわけにはいかない。その時、海面から飛翔してくる存在があった。ユグル・デノムである。ユグル・デノムの熱線が残党の艦隊を襲う。五隻の旗艦型の両翼が集中的に攻撃され、ダメージを蓄積させていく。大量のユグル・デノムが海面から顔を出し、その空の様子をじっと眺めていた。その様子は神聖ザカルデウィス帝国の海の地獄のようなものであった。しばらくして、残党の艦隊のほとんどが戦闘能力を失い、追ってくる事もなくなった。ユグル・デノムはミカエラを見送ると、海へと帰っていった。黒竜騎士団もミカエラに帰り、また穏やかな航海が始まった。


 そして、ようやくドグマ大陸が見えた。時刻はもう夜になって、皇国レミアムの灯が見えた。その景色は満天の星空と相まって絶景であった。ゼイフォゾンとルシファー、そしてアルティスは久々の皇国レミアムの光を見て、感動していた。また帰ってきた、それも神聖ザカルデウィス帝国の窮地を救ってから、またこうやって帰ってこれたのだ。あの、第一次インペリウス開戦の戦争から生きて帰ってこれただけで、胸が熱くなる。ミカエラの進行はゆっくりだった。風も凪いでいる。追手も、もういない。ゲンドラシルはこれが皇国レミアムの景色かと驚いていた。光都エリュシオンは眠らない、光に包まれているから星空など見えない。しかし、ドグマ大陸は違う。ここまで自然が保全されている大陸はそうないであろう。カオウスはドグマ大陸の灯を見て驚いていた。こんなに素晴らしい国を、大陸を火の海にしようとしたギルバートは愚かだと思った。とにかく、神聖ザカルデウィス帝国の人間は、ドグマ大陸の景色を見て息を飲んでいた。錬金術によって栄えた国、皇国レミアム…その技術は神の領域に達し、絢爛豪華な歴史を歩んできた国。三大国のうちのひとつ、支配するのは、七英雄最強を誇る帝王ゴーデリウス一世。ゼイフォゾンは、この大地にまた足を踏めるのを楽しみにしていた。


 夜の時間に上陸するのは躊躇われた。いかにも旗艦型のミカエラがドグマ大陸の端っこで夜に上陸したら、流石に常識外れであろうという意見からそうなっていた。実際、そうなのかも知れなかった。皆が眠っている時間に、そういった大事を起こすのは、世界的に見ても皆無である。なので、滞空待機しながら、ゼイフォゾンたちは夜が明けるのを待った。ゼイフォゾンはクルーや将軍たちが寝た後に、ルシファーと共に甲板に出て、夜明けまで待つことにした。横にいるグラムとダーインスレイヴは翼をはためかせながら睡眠を取っているように見えた。



「ゼイフォゾン様、この皇国レミアムが夢見る都と呼ばれていた事を知っていますか?」


「この皇国レミアムが、必ず救世主を生み出す国であるという信仰を、そのまま夢として語られた話の事か?」


「その通りです。この地上の平和は、魔界、冥界、覇界、真界、地獄、天界の平和に繫がると信じた伝承から生み出された物語、救世主の出現の預言では、それが生まれるのはこの皇国レミアムであるという信仰から出た言葉が、夢見る都です。これは皆が諦めずに信仰してきたのです。そしてあなたは現れた。この世に降臨なされたのです。御身が降臨された時の記憶はありますか?」


「ある……私は何も知らず、何もできないただの邪魔者だった事、そんな私を見捨てないで、私に生き物の温もりと心を教えてくれた唯一無二の友がいた事、忘れてはいない。悔しくもあったが、それでも私をここまで引っ張ってきたのはその記憶があったからだと思っている。それは間違いないだろう」


「この皇国レミアムのみならず、全ての国が夢見る都だとしたら?」


「そうなのかもしれないな。全ての国は、平和という目的のために夢を見ている。それは正しいと思う。私はその道が、違える事無く、交わって欲しいと考えている。私は皇国レミアムのソード・オブ・オーダーだ。救世主という目的までもらった。私はこの世界を背負い、皆の想いを背負って立っている。神聖ザカルデウィス帝国は、臆病な国だったと思う。それも世界統一という目的を平和と混同して、鎖国し、戦争に狂っていた。しかし、それは一旦鎖国さえ解除してしまえば、いくらでも自由のきく国になるという証拠だ。今を見たら分かるだろう」


「その通りです。このルシファー、あなたについていって良かったと思います。夢見る都、皇国レミアムの救世主、ソード・オブ・オーダーはこの世に必ず必要な力です。そして先見の明もある。あぁ……夜が明けますね」


「あぁ……綺麗な陽だな」



 夜明けを迎えた。ゼイフォゾンが待ちに待った皇国レミアムの朝日である。そう、力ない頃の自分も、この太陽に照らされて、絶望を重ねていった。しかし、今は希望に溢れている。この世界を照らす、この太陽だけは唯一不変なものだ。それは誰しもが分かっていた。この美しさは、何にも代えがたい。太陽がゼイフォゾンとルシファーの顔を照らした。その表情は涙を流しているようにも見えた。ふたりの長いブロンドの髪がなびく。風も丁度良かった。素晴らしい朝だった。この景色は眠らない者のために必要なものだったのかも知れない。護るべき者を護るために、眠らない者のために…。



ディア・ミレニア~神聖ザカルデウィス帝国・旅禍篇~



~完~

次の更新をお楽しみに!ありがとうございました!

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