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DEAR MILLENIA~ディア・ミレニア~  作者: 風雲 香月
~神聖ザカルデウィス帝国 旅禍篇~
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~神聖ザカルデウィス帝国前編~ 狼煙

新章スタートです。これからもディア・ミレニアをよろしくお願いいたします!

 神聖ザカルデウィス帝国…インペリウス大陸全土を支配する世界最古・最大・最強の超大国。そして、ガトランを殺し、ドグマ大陸に深い悲しみと絶望と爪痕を残した国。鎖国していて、その強大極まる技術力を外に出さないように徹底されている。この神聖ザカルデウィス帝国が、このコル・カロリの世界では最も古い伝統を持つ国とされ、暦である神聖暦とは、この国から取られている事でも有名である。通称、竜騎士の国。覇界と深い関りを持ち、その覇界を故郷とする竜族と親交があり、世界でも人間と竜族が共存する唯一無二の国である。その戦力は、騎士団のひとつが動けば大陸を焼却する事も可能なほどで、現にドグマ大陸は危機に瀕し、退却まで持ち込んだが、犠牲は大きかった。もしくはそうせざる得なかった。アトランティスの港を抜けると、グランダールの平原、その隣には世界最高峰の山脈、ダイレーデンがそびえ立つ。至る所で開発が進んでおり、車が走っていない土地などどこにもなかった。ゼイフォゾンは、アルティスと共にミカエラを動かし、神聖ザカルデウィス帝国の本国、光都エリュシオンまで行く最中であった。スピードはとても穏やかに、風は凪いでいた。あの時の海のように。しかし、それを黙って見ている空でもなかった。海にしか生息していないはずのユグル・デノムが、空にもいたのだ。そういえば、ユグル・デノムには翼が生えていた。この怪物は侵入者を海だけでなく空からも監視しているのだ。しかし、ゼイフォゾンはユグル・デノムを相手にしていなかった。原理の力の防壁は、ユグル・デノムの熱線を簡単にはね返し、倒す必要もなかった。ミカエラの周囲でユグル・デノムは暴れていたが、ゼイフォゾンとアルティスはあくまでのんびりとしていた。ミカエラの真紅の装甲には皇国レミアムの錬金学の粋を結集した黄金の装飾が施されており、それを形作るのは世界最強の金属であるガドラムであった。全長は千メートル。性能と出力は、現行する神聖ザカルデウィス帝国の旗艦型の戦艦の性能を遠く突き放し、ゼイフォゾンが旅をするにはこれ以上ないほどの箱舟となっていた。インペリウス大陸の領土に入っていったミカエラはユグル・デノムの群れを振り切り、グランダールの平原に上陸した。車が止まっていき、ミカエラが珍しいのか人々がそれを凝視していた。あんな戦艦は見た事がないという目線で、その中には神聖ザカルデウィス帝国の正規軍の人間も混じっていた。しかし、ゼイフォゾンとアルティスは降りなかった。単純にミカエラの動力炉が過熱していたので、それを休ませるために上陸させたのだった。そして、ミカエラの真上を通り過ぎていく戦艦が、警告してきた。


 どのような目的でこのインペリウス大陸に上陸してきたのか、所属と名前を言えという内容の警告である。ゼイフォゾンとアルティスは何も言葉を発しなかった。そればかりか、ゼイフォゾンは神聖ザカルデウィス帝国の地図を見ていた。アルティスは寝ていた。このミカエラは、アルティスしか開閉できない事になっていた。錬金術による暗号を入力しないといけないのである。その暗号はゼイフォゾンは知らなかった。それは、ゼイフォゾンの単独行動を未然に防ぐためのものであった。ゼイフォゾンが単独で動くと、確実に騒ぎになるのが目に見えていた。それは仕方のないことであった。神聖ザカルデウィス帝国の正規軍が銃を向けてきていた。警告を無視した兵は、一斉に発砲してきた。だがそれは原理の力の防壁によって無効化されていった。神聖ザカルデウィス帝国の正規軍は、この戦艦には自分たちの知らない技術で完成されていると考えた。このミカエラには神聖ザカルデウィス帝国の技術とは別次元のもので完成されている。それはその通りかも知れなかった。神聖ザカルデウィス帝国の最新技術と皇国レミアムの大規模な錬金術が奇跡的に融合した戦艦がミカエラなのだ。それの動力源は原理の力、無限に限りなく近いエネルギーで動いている。半永久機関といったところか。ミカエラは神聖ザカルデウィス帝国の数万年先の未来をいく技術が霞むような力を秘めている戦艦である。けたたましい銃声でアルティスが起きてきた。アルティスは不機嫌そうであった、起こされたのである。しかしどうでも良かったのはゼイフォゾンである。いちいち相手にしている暇などない、いや暇なのではあるが。ミカエラの真上を通過していった戦艦が旋回して、主砲を撃ってきた。当然、ミカエラには届かなかったが。警告を無視し続けているものにしびれを切らした神聖ザカルデウィス帝国は白兵戦も視野に入れていた。戦艦の内部に突入してくる気がいやでも分かった。車が多くなってきていた。国民は、神聖ザカルデウィス帝国の正規軍の苛立ちに疑問を覚えていた。こんなに躍起にならなくてもいいのではないか、向こうには争う気がまるでないのだから。話し合いで決着をつければよいではないか…そう考える者がほとんどであった。


 光都エリュシオンでは、ミカエラの上陸を聞いた将軍のひとりが、小型の戦艦に乗り込んでいた。赤竜騎士団団長、神聖ザカルデウィス帝国の将軍、ゲンドラシル・ジェノーバ。通称、閻魔王。実力ならばドグマ大陸侵攻を実行したザーバッハ・ミシェル・アイゼンの上をいく。ゲンドラシルは、この異邦人の戦艦はきっと皇国レミアムの戦艦ではないかと思っていた。将軍アイゼンを打ち破った正体不明の戦艦が、皇国レミアムにあると考えていた。将軍アイゼンが軍議で言っていた。その力は凄まじく、攻防共に尋常ではなく、どのような戦艦も寄せ付けない旗艦型の戦艦…神聖ザカルデウィス帝国のグランダールの平原に上陸した戦艦はそれではないか。だとしたら、皇国レミアムの者がそれに搭乗しているのは確かであろう。何も恐れる事はない、ただ話をすれば、きっと応じてくれるかも知れない。ゲンドラシルはそう考えていた。アイゼンが出向いていたら、きっとインペリウス大陸の領内で戦ってしまうかも知れない。鎖国しているが、冒険者には寛容であるべきだ。だが、今ミカエラを攻撃してしまっているので、もしかしたら反撃してくるかも知れない。きっと皇国レミアムは復讐をしにやってきたのではなく、神聖ザカルデウィス帝国の対応について問題があるのであれば、相応の返礼は覚悟しなくてはいけない。だが、むやみに事を大きくしてしまったら、またドグマ大陸との戦争になる。元帥ギルバートはそれを了承するだろうが、それはゲンドラシルの望みとはかけ離れたものであった。ドグマ大陸の侵攻についても、ゲンドラシルは反対していた。戦うのはいいが、侵略行為は必ず侵略されるという覚悟を持たなければいけない。復讐されるという認識を持たなければいけない。それを分かっていなかったアイゼンには残念な気持ちで見ておかなければいけない。それもその侵略行為は失敗に終わった。一国の将軍の命を奪って帰ってきただけである。これを残念と言わずして、何と呼ぶのであろう。ゲンドラシルは元帥ギルバートに進言していた。今後こういう事が立て続けに起こるようであれば、ドグマ大陸だけでなく、ライナス大陸のエギュレイェル公国も黙っていないだろうと。鎖国しているが、外交は一応しているのだから、こんな真似は二度としないで欲しい。ゲンドラシルは、根っからの平和主義者であった。だから、今回も平和に行きたかった。


 ゼイフォゾンとアルティスは反撃するべきかを悩んでいた。明らかに神聖ザカルデウィス帝国は興奮している。このまま反撃して、一旦浮上して撤退して、また旅の計画を立てて行動すればいいが、反撃せずに神聖ザカルデウィス帝国の将軍でもやってきて話でもできれば御の字である。全く落ち着かない、このままだと袋叩きに遭ってしまう。それだけではない、神聖ザカルデウィス帝国がこのまま興奮したままで攻撃を続けて、こっちが反撃してしまうと逆に侵略者扱いである。アルティスはモニターを監視していた。すると、ここに近づく小型の戦艦が見えた。その戦艦は攻撃する事はなく、ただミカエラの目の前に上陸して、そこから降りてきたのは、ゲンドラシルであった。ゲンドラシルの風貌はいかにも神聖ザカルデウィス帝国の将軍らしく、そして赤竜騎士団の団長らしく真紅の鎧を身に纏い、大柄で、強者の証である外套が風でなびいていた。一見するとゼハートに似ていた。しかし、ゲンドラシルのほうが明らかに年上なのは見ていて分かった。それを見たゼイフォゾンは、ミカエラから降りる事を決断した。この将軍と思われる男は信頼に値すると踏んだのだ。それを証拠に、ゲンドラシルが手をかざすと周りの兵が攻撃を止めた。この統率力は本物である、この男を怒らせでもしたら危険だと兵が知っているからである。この恐怖の統率力は将軍独特のものと見て間違いはなかった。



「攻撃の手を止めよ!この戦艦に乗っている者は恐らくは皇国レミアムの者であろう。だが復讐しなければならぬ理由はあるにしても、今まで攻撃する素振りは見せていない。それも見た事のない旗艦型だ、皇国レミアムの錬金術は神の領域に達しているとは聞いたが、まさかそれで規格外の性能を手にした旗艦型ならば、きっとお前たちの攻撃は届かないであろう。前に旗艦型を強奪された事件があったな、もしかしたらこれを創造するために強奪されたのだとしたら……応答を願いたい!お前たちはいったいこのザカルデウィスに何をしに来たのだ!我々は争う気は全くないぞ!」


「良かろう。私の名はゼイフォゾン・ディア・ミレニア、皇国レミアムではソード・オブ・オーダーだ!争う気はないのにこの攻撃の嵐は何と説明する!我々はただの旅人だ!」


「ソード・オブ・オーダー……その姿、まさか一振りの剣か。旅人と言ったが、何故このザカルデウィスを目的地とした!誰の命令でこの鎖国を破った!それにこの戦艦はもともとこのザカルデウィスの旗艦型だ!何をしてこの戦艦を自分たちの物とした!」


「今そっちに行く。待っててくれないか!」


「待とう!……この一振りの剣はゼイフォゾンと言ったな。アイゼンの言う通りだ、ただの戦士ではない。むしろ皇帝陛下に近い気を持っている。まさかこのゼイフォゾンという者は神に匹敵しているのだとしたら、むしろそれ以上なのだとしたら、この戦力では話にならないだろう。俺を含めても……もしも復讐に来たのだとしたら、勝ち目はこちらにはないだろう。さて、どう出るか。このゼイフォゾンという男はどう出てくる?今まで反撃してこなかった理由はなんだ?ただの旅人なら、この戦艦を移動手段に使っていたのか、贅沢な話だな。さて……」


「改めて、自己紹介しよう。私はゼイフォゾン・ディア・ミレニア、一応、皇国レミアムでは将軍よりも特権がある。しかし、今の私は旅人だ。あともう一人、将軍が相棒となってくれている。その者は私の友だ。私は先のそちらの侵攻で私は親友を失った、ゲイオス王国の将軍ガトランだ。しかし我々は復讐を遂げに来たわけではない。それだけは分かって欲しい。私の目的は、あてどない旅を続けたいだけ。それだけなのだ。争いは求めない」


「さしずめ、このザカルデウィスには自分探しの旅で来たと……そう言いたいのだな。分かった、この戦艦に俺を乗せてくれないか。格納庫まで案内する、この平原に上陸されたままだと、いささか都合が悪い。旗艦型の戦艦にしてはこれは中型だな。なに心配するな、アイゼンには何も言わないでおく」


「アイゼン?」


「アイゼンってのは、俺と同じ将軍だ。ドグマ大陸に侵攻した張本人……その顔を見たら、お前さんは間違いなく復讐してしまうだろう?」


「殺してしまうかも知れないな。だが、この神聖ザカルデウィス帝国には争いをしに来たわけではない。何なら、用事が済んだらどこかへ行こう。それで良いか?」


「あぁ、それでいい。ブリッジへと案内してくれ」


「あぁ、戦闘に使う席の事か。それをブリッジと呼ぶのだな。分かった、だが内部は変わっている。魔術的要素を含んだものになっている。それと、私の相棒は気が荒い方だ。気を付けてくれ……」


「分かった。俺も気が長い方ではないが、争いのないようにしよう。努力する」



 ゲンドラシルがミカエラのブリッジに案内され、ゼイフォゾンはアルティスの様子が気になった。アルティスはそこまで怒る事無く、穏やかに対応していた。モニターで話している様子を見ていたようで、ゲンドラシルという将軍は悪人ではないと判断したためであった。ゲンドラシルはミカエラのブリッジを見ると驚いた様子であった。いつもなら無機物なブリッジなのだが、錬金術によって生まれ変わった旗艦型はどこか有機的で、まるで意思があるように動いていた。全ての機能は自動で制御され、搭乗した人間の生理機能は守ってくれるので、いつどんな時に、何があっても動けるように戦艦から保護してくれるのである。そこまでの機能は、神聖ザカルデウィス帝国の旗艦型にはない。ゲンドラシルの座乗艦がまるで旧世代の物なのではないかと思うほどには、ミカエラの性能は頭抜けていた。元帥ギルバートの座乗艦はおよそ五千メートルあるが、その旗艦型の火力と同レベルという。たった千メートルの旗艦型の火力のそれではない。ゼイフォゾンは、これは自分の座乗艦であると説明した。そして動力源は原理の力であると。ゲンドラシルはまたも驚いた。原理の力の理論は神聖ザカルデウィス帝国でも提唱されていたが実在しているものではないとされていた。それが動力源として贅沢に使用している…ゲンドラシルはある意味羨ましいと思っていた。この戦艦は神聖ザカルデウィス帝国の技術の更に数千年先を行く性能を保有している。それだけでない、火力はミカエラの数倍はある旗艦型のそれと遜色ない。装甲はガドラム、原理の力の防壁を張る事であらゆる攻撃を無力化する。皇国レミアムの錬金術は確かに神の領域に達している。ゲンドラシルはドグマ大陸に自分たちの技術を渡さなくて正解だったと改めて思った。もし貿易をしていたら、技術力だけでなく、戦力的にも皇国レミアムが上を行ったであろう。それだけではない、ドグマ大陸がコル・カロリの世界を席巻していたかも知れない。自分たちがそうしたように、そうやって侵略する可能性もある。ゲンドラシルはアイゼンの侵攻がどれだけ愚かだったかを再確認していた。



「そういえば、ザカルデウィスの将軍さんよ。あんたの名前を聞いていなかったな」


「ゲンドラシル・ジェノーバ。もともとはドグマ大陸の人間だったが、神聖ザカルデウィス帝国に渡っていつの間にか将軍になっていた。お前は若いな、皇国レミアムの将軍」


「俺の名はアルティス・ジ・オード。武の道に入った人間なら一度は聞いたことがある名前だと思うんだがな。どうだ」


「まさか、数千年前に死んだはずのアルティス・ジ・オードか?なら、武神太極を世界で初めて修得した人間とはまさか……」


「そう、俺だ。皇国レミアムが復活してから、俺も全盛期のまま復活を遂げた。復活してから数年経ったが、今まで俺は負けを知らねぇ。まあ、仲良くしてくれや。将軍ゲンドラシル。そう言えば、ドグマ大陸のどこの出身だ?」


「ハーティー共和国の母とゲイオス王国の父がいた。俺はハーティー共和国の出身だ」


「お前がドグマ大陸に来ていたら、きっとガトランは死なずに済んだんだろうな……」


「アルティス、私の目の前でそれを言うな。過ぎた事をしつこく言うのは、私は好まない」


「悪かった。ゼイフォゾン」


「ガトランとは?」


「私の唯一無二の親友、ゲイオス王国の将軍だった。ハーティー共和国の出身でな。強く誇り高い男であったよ」


「悪い事を聞いたな。あそこが光都エリュシオンだ、中に入ってくれ、格納庫までは時間はかからない」


「ありがとさん、ゲンドラシル。あんたとは仲良くできそうだぜ」


「俺もだよ。将軍アルティス」



 こういうやり取りができるのだ。神聖ザカルデウィス帝国の人間であったとしても。決して神聖ザカルデウィス帝国の人間が悪に染まっているわけではなく、そこに住まう人間がコル・カロリの世界を統一したいかと言われればそうではない。何なら戦争など起こさず、インペリウス大陸で平穏に暮らしたいと思っている人間の方が多いだろう。神聖ザカルデウィス帝国の竜族だって、戦争行為には懐疑的な者もいるだろう。インペリウス大陸は確かに神聖ザカルデウィス帝国が統一しているが、一枚岩ではないと感じさせられる。ゲンドラシルを見ていれば分かる。将軍同士で揉め事があるのかも知れない。戦争によって領土を拡大したい者と、ゲンドラシルのように和平による解決を進めたい人間といるのかも知れない。きっとどこかでクーデターを起こそうとする者もいるのかも知れないし、内乱を計画している地方領主も存在しているのかも知れない。ゲンドラシルは元帥ギルバートの政治の執行についてあまりいい顔をしていなかった。思想の違いで衝突してしまう事が多いらしい。神聖ザカルデウィス帝国の最高戦力である五大竜騎士団は、歯車が噛み合っていないとも話していた。元帥ギルバートと将軍アイゼンはタカ派で、暴力と恐怖によって統治する事について罪悪感は一切抱いていないという。それに異を唱えている将軍は自分を含めて三人、もう一人はどうやら影で暗躍するのが好きなタイプで、アイゼンは元帥ギルバートの言いなりである。これで国が一応まとまっているのだから、救われないなと愚痴をこぼしていた。超大国ならではの権力闘争のようなものである。これに巻き込まれる国民も救われない。ゲンドラシルは、神聖ザカルデウィス帝国は大きくなり過ぎてしまったのではないかと言っていた。実際、その通りなのかも知れなかった。皇国レミアムとエギュレイェル公国は民主主義で成り立つ政治で、大きくなっていった。だが神聖ザカルデウィス帝国は社会主義である。この思想の違いが侵略行為に走らせるかも知れない。ガトランの死を無駄なものではなかったと証明できるように、神聖ザカルデウィス帝国でひとつの世界を見なければいけない。必ず、この国にも救済できる余地が残っているはずである。


 ゼイフォゾンは心で誓っていた。どんな国にも、国民にも、将軍にも、軍人にも、平和を願う心はあるのだ。だからガトランの死はその道標となってくれるだろう、恥じぬ行いをしなければ、何がソード・オブ・オーダーだと。コル・カロリの世界で、自分はどれだけの事が成しえるのか、不安もあったが、自分で決めた道に言い訳でもしたら、自分でなくなってしまう。嘘はない、ただ進み、成し遂げ、帰る。大切な者のために、守るべき世界のためにもっと強くならねばならない。ガトランが言った気がした。お前ならきっと大丈夫さ…と。


 ミカエラが格納庫に入った。とうとう、神聖ザカルデウィス帝国に正式に入国できた瞬間である。少し強引ではあったが。ゼイフォゾンとアルティスは、これからどのような道を歩むのか…もう帝王ゴーデリウス一世は予見してくれる環境になかったので、誰も事の顛末は見通せなかった。

最後まで読んで下さり、ありがとうございます。感想とレビュー、いつでもお待ちしております!

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