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無理ゲーの世界へ 〜不可能を超える英雄譚〜  作者: 夏樹
第2章 英雄の成長
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最果ての村



俺は一気に距離を詰める。素早さは俺の方がかなり高い。



オバケ大木は巨大な枝で攻撃するため、回避がしづらい。しかし、俺は予備動作だけで、どの攻撃が来るかを予想できる。だから、攻撃範囲を割り出し、すぐに回避行動を取ることができる。



オバケ大木の僅かな動きから、攻撃パターンを予測。一瞬で行動を起こし、すぐに範囲外に逃れる。先程、俺がいたところに轟音と共に枝が振り下ろされる。



あえてギリギリの場所に位置を取り、衝撃で多少のダメージを受けておく。ポチの『ワンナイトカーニバル』を使えないので、HPを多少減らさないと、『狂戦士の怒り』の恩恵がない。



渡る前に『ワンナイトカーニバル』を使っておくことも考えたが、狂乱状態では魔法が使えなくなるので、【セイントレイ】が使えない時点でこの方法は取れなかった。



しかし、今は素の攻撃力も十分に高いので大丈夫だろう。ソードマスターの『剣の極み』により、片手剣装備時の攻撃力が大幅に補正されている。オバケ大木は防御力が高いタイプのボスだが、斬鉄剣でそれを無視出来るので、攻撃は通る。



時折り【グラビティ】で攻撃してくるか、避けるのは容易い。



俺は効果範囲内に入ったことを確認し、スキル『ドッペル』で分身する。そして、ソードマスターのスキル、俺の待つ技の中で最大火力の『閃光連撃』を発動する。



身体が青い残像を纏い、刀身が輝き始める。そして、超高速の連撃が始まる。



踊るように輝く刀身が光の線となって空中に切り裂く。身体を回転させ、残像を纏いながら瞬間移動のような高速のステップで刀を振るう。



光の筋がオバケ大木に触れると同時にダメージが与えられた。ほぼ同時と言っても良い刹那の時間で、俺の12連撃が決まる。ドッペルと合わせて24連撃だ。



妖刀村正の『主人殺し』の効果で、3回10倍ダメージが発生した。



俺の通常攻撃の51倍のダメージが一瞬で入った計算だ。そして、すぐに回避を優先する。近づき過ぎた俺にオバケ大木は『滅多撃ち』を放つが既に効果範囲内を出ている。



あとはただヒットアンドアウェイを繰り返せば良い。距離をとって『閃光連撃』のクールタイムが終わるのを待つ。



再度使えるるようになったら、再び接近して『閃光連撃』を浴びせる。



結局、4回目でオバケ大木は呆気なく倒せた。やはり今の俺は強い。



巨大な大木が地鳴りのような音を立てて傾き、巨大な橋が完成した。



俺はその橋を渡り、仲間たちを向かえに行った。



「おーい、橋作ったぞ」



俺が声をかけるが、仲間たちは微妙な表情をしていた。



「やっばりお前……何者だ? 訳が分からねぇ」



「レン……無事で良かったけど、訳がわからないわ」



「旦那……説明してくれ、何で落ちる瞬間に、光って消えて

、いつの間にか、この木を切り倒して橋を作ってるんだ?」



「くぁーん」



正直説明が面倒だ。この世界がゲームであることを伝えるわけにもいかない。取り敢えず誤魔化しておくことにした。



「俺の新しいスキルだ、まあ詳しいことは聞かないでくれ」



皆、納得していなかったが、俺が逃げるように橋を渡り始めたので、その後をついてきた。



死の谷の向こう側には墓地が広がっていた。少し離れた所に、大きな洋館がある。貴族の屋敷のように豪華だが、寂れていて不気味な様相を見せている。



まるで、某ゾンビゲームに出て来そうなホラーハウスだ。



あの屋敷では、中身空っぽの動く鎧、鋼鉄のガランや、動く西洋人形、闇人形アリス、そして、吸血鬼で屋敷の主人、真祖バレンタインが仲間に出来る。



今は時間がないので、スルー確定だ。いや、時間があっても俺はあの屋敷には行かない。別にどうしても必要な戦力でもないし、間違って無限隠れんぼにでも嵌ったら目も当てられない。



この無限隠れんぼは、LOLプレイヤーが名付けたイベントだ。闇人形アリスを仲間にするためのイベントだが、致命的にバグっている。



私を捕まえてみて、と告げるアリスと隠れんぼを開始する至ってよくありそうなイベントだが、このイベントが発生すると、屋敷の様子が変わり始める。



ドアを開いて、部屋に入り振り返ると、先程通ってきたドアがなくなって壁になっていたり、ドアを開けて閉じて、もう一度開けると違う部屋に繋がったり、とにかくマップがめちゃくちゃになり、かなり苦労をする。



そして、その中である順番で移動をしてしまうと、100%アリスがいる部屋にたどり着けなくなってしまうのだ。もちろん、イベントクリアまで外に出る道もない。



つまり永遠に屋敷から出られなくなるバグだ。だから、無限隠れんぼと呼ばれている。しかも、このパターンに陥るルートはいくつかあり、あえて避けるように移動しなければ、結構な確率で嵌ってしまう。



最初に俺がこの無限隠れんぼに嵌ったときは、50時間くらいかけて、脱出方法を探した。結局分からず、ネット情報に頼ったら、無限隠れんぼだと分かり、絶叫した記憶がある。



まあ正確には事前準備をしておけば、脱出する方法はある。しかし、あえて危険を犯す必要はないだろう。



仲間たちは皆、その洋館に興味を持っていたが、俺は全力でスルーして、先を急いだ。



死の谷から離れ、また緑豊かな植栽が戻ってくる。ただ現れる敵はかなり高レベルであり、油断はできなかった。



それでも俺やアランが前線に立ち、ギルバートが後衛から援護すれば、難無く進むことができた。



しばらく山間を進んでいき、太陽が沈み始めたころ、俺たちは最果ての村に到着した。



最果ての村は完全に田舎の村だ。ただ所々に魔法陣が書いた建造物や瓦礫がある。近くには遺跡もあり、どことなく神秘的な光景を見せてくれる。



古代魔法などを駆使しており、宙を浮く石畳があったり、噴水のように水が空中を舞っていたりする。



住人は全員髪が真っ白で、高い魔法適正を持つ。ネロや魔法協会総帥のレスターシアも髪が白く、この村の出身だ。



この村は盟約により、魔王軍と不可侵の取り決めをしている。これだけ魔王城に近いのに、平和に過ごせているのはそのおかげだ。



ついにここまで来た。今夜はここに泊まり、明日魔王城に乗り込む。



正直、よくここまでたどり着いたと自分でも思う。あとはプロメテウスを倒すだけだ。



最果ての村の宿屋を借りた俺たちは一旦自由行動をすることにした。



俺にはどうしても確かめておかなくてはならないことがあった。



最果ての村の一番奥にある家を俺は訪ねる。ノックをするが、返事はない。だから、俺はドアを開けて勝手に入った。



普通に違法侵入だし、鍵がかかってないのもおかしいが、ゲーム仕様だから仕方ない。ゲームにおいて、主人公は勝手に民家に入れる特権がある。



その家は小さく、変わった部屋だった。古びた本が散乱し、石板などが積み上がっている。チョークでいろいろな文字や数字が書いた石板もあった。



そう、ここがネロの家だ。俺は積み上がっている石板を順番に退かして、墨汁を溢したようなシミがある石板を手に取った。



俺はその石板を観察する。これはネロがユニークスキルを取得する為に必要なものだ。



『スキルコピー』見たスキルをコピーして使用出来る。しかし、常に1個しかコピー出来ず、上書きされてしまう。



本来は仲間キャラが使用出来ない敵のスキルもコピー出来る。何をコピーするかで、ネロの戦力は大きく変化する。



よく英雄たちの中では、ネロの最強コピーは何かで盛り上がったものだ。



俺はこの点をあまり心配していない。俺の戦力はモンスターハウスレベリングのおかげで異常な成長をしている。もはやネロが少し強くなった所で、ネロ自身が俺に勝つのは不可能だろう。



気にしているのは別のこと、ネロがここに戻って来ているかどうかだ。ネロはグランダル王立図書館で全ての書籍を読んだ。その中には、ネロが『スキルコピー』を覚えるイベントのヒントが書いてあった。



今、俺が持っている石板を裏の遺跡で使うと扉が開き、その奥で聖遺物を手に入れることで、ユニークスキルを覚えることが出来る。



もし、ここにネロが戻っているとしたら、次のネロの行動は予測出来る。



魔王城に再び向かうだろう。俺がウォルフガングを倒したのだから、そのレベルの試練を用意しなければ、俺の力を測れないと考える。



そして、魔王城に行けば、ネロが交渉できる相手は1人しかいない。



賢王プロメテウスだ。ネロが取り入るなら、あの男以外いない。アリアテーゼは警戒心が強いし、魔法に関して以外はそんなに頭も良くないので、ネロの苦手分野だろう。



プロメテウスに取り入ることはネロならば余裕だ。奴は分かりやすいメリットを提示すれば、必ず自分に有利な方を選択する。



そして、プロメテウスとネロがもし組んでいれば、最悪の結果になりかねない。



だから、俺はここにネロが訪れたかを確かめにきた。住人にも訊くつもりだが、ネロはこの村のみんなに愛されている。口止めされていれば、誰も言わないだろう。



少なくとも遺跡を開くための石板はここにあった。ネロはここには来ていない。























と思わせたかったのだろう。














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