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無理ゲーの世界へ 〜不可能を超える英雄譚〜  作者: 夏樹
第2章 英雄の成長
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二刀流



次にギルバートのメインになる武器。オリハルコンライフルだ。両手銃で攻撃力はかなり高い。なぜ鍛冶屋のダインが銃を作れるのかという疑問はあるが、そこはゲーム仕様、ご愛嬌だ。



LOLはRPGなので、銃も使用者の攻撃力と武器攻撃力の合計でダメージが計算される。今のギルバートなら、防御特化の敵じゃない限り、魔王城でも多少のダメージは与えられるだろう。



空きスロットが1つあるので、ここには俺のアイデアであるスキルを入れておいた。きっと魔王城で活躍してくれるはずだ。



そして、アランの武器、オリハルコンハルパーだ。盗賊らしく曲刀を作ってもらった。アランはステータスが高いので、単純に攻撃力が高いだけの武器だ。これはここまで付き合ってくれたお礼の意味もある。



最後は俺の武器。当然、刀だ。日本刀の二刀流ほどそそられるものはない。



LOLで最も攻撃力が高い刀は正宗だ。これはゲンリュウが現役時代に使っていた刀で、凄まじい攻撃力を誇る。



二番目に高いのは、真打村正だ。これは呪われた装備、妖刀村正を浄化することで手に入る。



しかし、LOLでは単純に攻撃力が高いものが強いとは限らない。武器に付随するスキルで価値はだいぶ変わる。



例えば、俺が今装備している斬鉄剣は、攻撃力的には刀の中で中の上あたりだ。しかし、『貫通攻撃』のスキルが強力すぎる。



後半の敵は防御力もかなり高く、そもそもダメージを与えることに苦労する敵も多い。そんな中、斬鉄剣は無類の強さを誇る。



話を戻すが、妖刀村正は使い物にならない刀だ。攻撃力はかなり高いが、呪われており、法外な値段を教会に払うことで装備を外すことができる。



もちろん外せない以上、大きなデメリットが存在する。



ユニークスキル『主人殺し』と『力の代償』。使用者を殺すために妖刀村正はその呪いとも呼べるスキルを発揮する。



『主人殺し』は攻撃を与えたとき、与ダメージが一定確率で10倍になる。代わりに一定確率で物理ダメージを受けたとき、被ダメージが100倍になる。



メリットもあるが、どんな攻撃でも一撃死するリスクがある。はっきり言って被ダメージ100倍は間違いなく一撃死だ。しかも確率が結構高い。大体10回に1回は発生する。連打系の攻撃を受ければ、即死間違いなしという具合だ。



更に『力の代償』により、攻撃するたびに一定確率でランダムで状態異常にかかる。麻痺や石化、即死などもあるため、もはや使い物にならない。



まさに妖刀だ。持ち主を常に死に誘う。だから、妖刀村正は真打村正に浄化してから、使用するのが一般的だ。



妖刀村正は作るための材料も貴重なため苦労する。任意の希少金属、ダマスカス、アルテマ合金、オリハルコン、ヒヒイロカネ、アダマンタイトなどに、アンデット系高レベルボスのドロップ不死王の灰と、悪夢の結晶というレアドロップアイテムで作成できる。使われた金属によって初期攻撃力に差が出る。



そして、真打村正は妖刀村正を浄化する必要があり、この条件が厳しい。天界に生息するモンスターのレアドロップが必要だからだ。



天界はラスダンの魔王城より行くことが難しい。行かなくても物語を進行できる隠し要素的なものだ。



天界ではミカエル、ラファエル、ガブリエル、ウリエルの4大天使の誰か一人を仲間に出来る。全員がかなりの強さを誇る。



俺はことあるごとに、回復役のラファエルが欲しいと思うが、どうしてもいざ選ぶとなるとミカエルを選んでしまう。



ゲームが現実になった今では、天界に行くことはないだろう。そもそも、一度しかない命であの場所にたどり着ける気がしない。



「ほら、これがレンの刀だ」



俺は刀を受け取る。鞘から刀身を抜き、その美しい刃を見つめる。



光沢が走り、俺の顔も映り込む。まるで人を吸い込むように、不思議な魅力を持っていた。



俺は満足して、鞘にしまう。二本目はこの刀しかないと思っていた。



「なあ……打った俺が言うのもなんだが……、本当にその刀でいいのか?」



ダインが心配そうに言う。俺は満足そうに頷いた。



「ああ、この刀じゃないとダメだ」



ダインはまだ納得行かないように、躊躇いがちに忠告してくる。



「けどよ……それ、絶対やばい代物だぜ」



さすがダイン。よく分かっている。しかし、俺はこの刀が欲しかった。



持ち主を死に至らしめる呪われた刀、妖刀村正だ。



「大丈夫だよ、こいつを俺は使いこなせるから」



妖刀村正の材料を揃えられたのは僥倖だった。オリハルコンはブラッドアーマーからのドロップ。そして、悪夢の結晶はナイトメアからのドロップだ。



悪夢の結晶はドロップ率が非常に低く、入手に苦労するが、俺にはモンスターハウスレベリングがあり、ナイトメアを乱獲しまくったから、簡単に手に入れられた。そうは言っても、あれだけナイトメアを狩って、3個しか手に入らなかったのだから、かなりシビアな確率だが。



そして、最後に不死王の灰。これは確定ドロップだから苦労はしない。デュアキンスと共にノーライフキングを倒した時に手に入れた。



しかし、不死王の灰は他にも使用用途があるため、何に使用するかはプレイヤーの中でも意見が分かれた。



俺は妖刀村正に使用すると初めから決めていた。妖刀村正は本来であれば、浄化して真打村正にしなければ使い物にならない、いわゆるネタ装備の1つだ。



それが俺には丁度良い。まず俺には神兵の腕輪がある。これにより、状態異常が無効なので、『力の代償』によるデメリットを打ち消せる。



そして、今の俺は300レベル以上あり、素早さは十分に高い。英雄として、ほとんどの攻撃は回避できる。だから、物理ダメージによる被ダメージが一定確率で100倍になる『主人殺し』も大したデメリットにならない。



むしろ、こちらの攻撃が一定確率で10倍になる方がはるかに大きいメリットだ。『ドッペル』で、ソードマスターのスキル『閃光連撃』を発動すれば、大ダメージが期待できる。



二刀流で『閃光連撃』を発動すれば、モーションの関係で本来10連撃なのが、12連撃になる。『ドッペル』と合わせて24連撃。確率的に2回ほど10倍ダメージがある。



ちなみにLOLでの二刀流は、効果が統一される。つまり、斬鉄剣の『貫通攻撃』が妖刀村正での攻撃にも適応される。どちらの手で攻撃したかを反映させるのは面倒だったのだろう。



もちろん、回避不可能な攻撃をされれば俺が死ぬ確率は一気に高まる。しかし、あくまで『主人殺し』が発動するのは、物理ダメージのみだ。今の俺が回避できないのは、広範囲の攻撃のみ。物理攻撃で回避不能な攻撃をしてくる敵はそんなに多くない。ほとんどは魔法だ。



いざとなれば、ポケットロザリオを使用して、装備を外せば良い。ポチの『ワンデーパス』を使えば、無料で呪いを解除できる。



以上の理由から、俺にとって浄化しなくても妖刀村正は十分に使える刀となる。斬鉄剣と妖刀村正、俺の二刀流が完成した。



「よし、じゃあ出発しよう、まずは最果ての村に行く」



魔王城に一番近い村、最果ての村。この後、超高難度フィールド、死の谷を抜ければすぐだ。



最果ての村に行きつく方法は死の谷を通る方法と迂回して、ドラン雪原を通る方法がある。



ドラン雪原の奥地には、宗教都市ゼーラがある。宗教都市イベントの中には、こなしておかないと世界が滅ぶイベントがあるので、いつかは行かないとならないが、今はリンの救出が優先だ。



死の谷は魔王城へのショートカットを狙うプレイヤーを嘲笑うような悪質な超高難度フィールドだが、今の俺なら越えられる。



俺たちはダインとモヒカン達に見送られる。



「気をつけて行ってこいよ、俺の自慢の武器を上手く使ってくれ」



「お頭! 無事を祈ってます!」



アランは冗談っぽく笑って、モヒカンの部下を脅した。



「てめぇら俺が帰るまでに、カジノで資金2倍にしてないとお仕置きだからな」



「ひっ! が、がんばります!」



こうして、俺たちはエルドラドを旅立った。向かうは数々のプレイヤーを嘲笑ってきた高難度フィールド、死の谷だ。





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